免疫細胞が「カップ」状の装置作り異物取り組む仕組みを解明 奈良先端大など

2019年10月25日 08:40

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ファゴサイトーシスのイメージ図。(画像: 九州大学の発表資料より)

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  • GAS7での作用のイメージ図。(画像: 九州大学の発表資料より)

 生物の細胞膜はリン脂質が2重になった構造をしている。この脂質二重膜は自然な状態では球形になるが、実際の細胞は様々な異なる形状をしており、このような細胞膜をそれぞれの形に変形させるタンパク質が近年見出されてきている。本研究では、マクロファージなどの免疫細胞が、カップ状の装置を作り病原体や異物を取り込む仕組みについて解明した。今後免疫反応の抑制など医療への応用が期待できる。

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 この研究結果は奈良先端科学技術大学院大学の末次志郎教授、九州大学の嶋田睦准教授らの研究グループによるもので、18日のNature Communicationsオンライン版に掲載された。

 末次教授らは、これまでBARドメインというタンパク質ドメインの解析を行ってきた。BARドメインは脂質膜に対して鋳型として働き、生体膜の形状をコントロールする。免疫細胞が異物を取り込むときに形成する部位を、ファゴサイトーシスカップという。その形成に関与するものの候補を73種のBARドメインから探した。

 エンドサイトーシス(細胞外分子などの取り込み)と違い、ファゴサイトーシスカップは突出した形状をしていることから、同じく突出している形状として細胞が移動するときの仮足に局在し、構造が未確認のものを探した。その結果GAS7というタンパク質のF-BARドメインに注目した。

 このGAS7のF-BARの立体構造を調べたところ、それ自体は他のF-BARと似た構造をしていた。しかし、小さな物質を運ぶF-BARが100nmほどのらせん状の小さな構造を作るのに対して、GAS7のF-BARは平らで広い構造を作ることを発見した。これはファゴサイトーシスカップ形成のときにあらわれる形と同様だった。

 GAS7の働きをさらに調べるために、GAS7を持っていないHELA細胞に、GAS7とそのF-BARドメインを過剰発現した。するとHELA細胞は数μmのサイズのカップ状構造を作るようになった。

 しかし、膜結合部位を取り除いたGAS7や、他のGAS7と繋がって多量体を作れないよう変異を起こしたGAS7を発現した細胞は、カップ構造を作らなかった。つまり、GAS7が脂質膜に結合し、GAS7同志で集合体を作ることがカップ状の構造を作ために必要だということがわかった。

 今回、免疫細胞が異物を取り込むときに重要な働きをするタンパク質や、異物を取り込むためのファゴサイトーシスカップ形成の仕組みが明らかになった。このようにタンパク質の働きにより細胞の形を変化させる仕組みは、とても興味深い。

 今回の結果は免疫細胞やマクロファージの活性の制御などに活用できる可能性がある。例えば自己免疫疾患や、過剰な免疫細胞活性で生じる疾患の治療に役立てていけることが期待できる。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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