植物の花作りは緑藻の光防御と遺伝的に共通の仕組みと判明 基生研らの研究

2019年9月13日 17:55

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陸上植物の花形成と緑藻の光防御の仕組みの比較(写真:名大の発表資料より)

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 我々が身近に感じる自然現象のひとつである花の形成。花へと成長する芽(花芽)の形成は、生物の進化過程でどのように獲得されたかは謎だった。基礎生物学研究所、名古屋大学、高知大学の研究者から構成されるグループは、水生の藻類がもつ光から身を守る仕組みと、植物の花芽の形成が遺伝的に共通の仕組みであることを突き止めた。

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■花の形成と関連ある光防御

 地球上で光合成を行う生物は、強すぎる光から身を守る「光防御」という環境適応能力を有する。葉は強すぎる光を受け取ると、白化し枯れてしまう。そのため、草木や湖沼の藻類は繁茂するために光防御反応を駆使し、強光環境に適応している。

 ところが、光防御の全容は解明されていないという。青色光の受容体であるタンパク質の存在や、このタンパク質が光防御を引き起こす遺伝子の発現を調節していることが、これまで研究グループによって明らかにされてきたが、光の受容から光防御を担う遺伝子の発現までの細胞内シグナル伝達系については、多くの謎が残されているという。

■遺伝子組み換えで光防御に至る仕組みを特定

 研究グループは、遺伝子組み換えを実施した緑藻を多数作成し、光防御を引き起こす遺伝子に変異のある個体(変異体)の選定と、原因遺伝子の特定を進めてきた。その結果、強すぎる光のもとで死滅する4種類の変異体を取り出すことに成功した。

これらの変異体についてゲノム上の変異箇所の特定を試みた結果、各変異体で破壊された遺伝子は、花芽の形成を誘導する遺伝子の発現のスイッチとなるタンパク質(転写因子)であることが判明した。

 また研究グループは、光防御変異体の選定過程で得られた、紫外線の受容体を失った変異株に着目し、この紫外線受容体の役割を精査した。その結果、陸上植物が青色の光を受け取り花芽が形成されるまでの情報伝達の仕組みと、緑藻が紫外線を受け取り光防御を引き起こすまでの仕組みとが、同じであることが判明した。

2つの系統に属する光合成生物は、共通の祖先をもつと考えられることから、花作りのスイッチの仕組みは水に生息するする光合成藻類によって確立されたと、研究グループは推測する。

■花形成の仕組みから明かされる生物の普遍性

 今回着目した共通の仕組みは今後、植物において、どのように生物種を超えた普遍性を獲得し、生物多様性や進化をどう運命づけたかの解明につながることが期待されるという。

 研究の詳細は、Nature Communications誌にて10日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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