AIによるトマト栽培の自動化目指す 後継者問題でも貢献期待 静岡大教授ら

2019年8月3日 11:57

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 フルーツトマトというやや小粒なトマトをご存知だろうか。これは非常に糖度の高いトマトで、非常に甘くまるでフルーツのようであることからそう名付けられている。フルーツトマトの糖度は8以上(普通のトマトの糖度は4~5)。最近はスーパーでも見かけるようになってきた。

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 よく誤解されるがフルーツトマトは、そのような品種があるわけではない。栽培方法の違いが味覚の違いを生んでいるのである。その栽培方法とは、枯れる一歩手前まで水を与えないなど、トマトにとって過酷な環境で育てなければならない。

 しかしこの点が、まさに栽培農家にとって頭の痛いところである。人間の目で、経験に基づいてかん水のタイミングを計らねばならず、一種の職人芸といっても良いかもしれない。

 静岡大学学術院情報学領域の峰野博史教授は、AIを使い、かん水のタイミングの判断に取り組んできた。以前は日射量を測定することでトマトへ自動かん水を行っていたが、最適なタイミングで最適な量のかん水を行っていたかというと、必ずしもそうではなかった。むしろ反対にトマトの品質を落とすことさえあったという。

 峰野教授たちは、熟練の農家が行うかん水に関してのデータを収集したところ、農家の人たちはかん水時期や量をトマトの葉のしおれ具合で判断していることがわかってきた。そこで、葉がしおれて上下する様子や温度・湿度などのデータを収集定量化し、AIを使ってかん水時期と量を予測することを考えた。

 峰野教授たちはハウスにカメラと環境センサーを設置し、画像データからしおれ具合を、環境センサーから温度・湿度・明るさなどのデータを収集した。そして、それらを統合しAIにより自動かん水する。システムは、全体の作業量を考えてなるべく少ないデータで正確な判断ができるように工夫されている。2018年には農業AIを扱うベンチャー、アグリエア(静岡県浜松市)も立ち上げられた。

 さらに、研究などで蓄積した技術や知識をもとに、人間では考えつかないような新たな栽培方法や、作物のための最適な生育環境等をAIにより特定できるのではないかとも考えられている。

 現在、日本の農業をささえる働き手たちが高齢化し、後継者不足が問題になりつつある。経験・知識とカンが大きくものをいった農業にAIを利用することで、こういった問題についても将来的に貢献できるのではないかと期待される。

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