仕事で完璧を求められる日本人のジレンマ

2019年7月16日 11:12

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 職場ではとにかく完璧を求められるもの。「お客様第一主義」のスローガンのもと、質の高いパフォーマンスを求められてきたのが日本の企業社会だが、完璧を追いすぎる風土は、個々人の心身の疲弊と、人間関係の軋轢を招きかねない。

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■完璧を目指し続けて浮上した社会問題

 「メイドインジャパン」が世界を席巻したのははるか昔のこととは言え、ハイクオリティの商品、サービスを提供し続けることが、日本経済発展の源泉になってきたことは間違いない。

 経済成長が望めた時代には、個人が集合し一致団結して完璧を目指すことが利益に結び付き、給与も上がり安定した生活を営めるという「夢」があった。だか、少子高齢化、人口減少が進み経済のパイが縮小した現在においては、もはやその理屈は通用しづらくなったと言えよう。

 顧客のニーズに過剰に答えてきたことで、長時間労働やモンスタークレーマーなどの社会問題を生んできたのは周知の通り。経営者の高い理念の実現のため、末端の従業員が苦役を強いられることが背景にあるブラック企業問題も、完璧主義が蔓延した成果至上主義を反映していると言える。

■日本人の労働観と脱完璧主義は両立するか

 行き過ぎた完璧主義からの脱却は可能なのか。「働き方改革」が盛んに叫ばれる今、労働者の心身に過度な負担をかけずいかに高水準のビジネスクオリティを維持するか、模索する時代に突入したと言えよう。日本人の高潔な労働観を維持したまま、現場の人間を追い詰めない新しい企業風土がはたして醸成されるのか、注目したい。

 真面目で高い勤勉性を誇る日本人にとっては、「仕事は完璧にこなすもの」であり、「仕事で手を抜く」ことは矜持に反する行為となり忌み嫌う。しかし一方で人間は不完全である。ミスをすることもあれば、疲労がたまればパフォーマンスは下がり、年齢による衰えも避けて通れない。そんなジレンマを抱えつつ私たちは今日もそれぞれの職場へ向かう。(記事:岡本崇・記事一覧を見る

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