【どう見るこの相場】G20大阪サミットは仮に「針ほど」でも海洋プラスチックごみ関連株に「棒ほど」を期待してアプローチ余地

2019年6月17日 09:27

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 「棒ほど望んで針ほど叶う」という諺がある。兜町流に解釈すると、高望み、皮算用は往々にして期待外れ、失望に終わることを教えてくれていることになる。投資家の大化け必至として仕込んだ時の高揚感と手仕舞った時の苦笑いとの相反する表情が目に浮かぶ。もちろん「相場の一寸先は闇」だから、逆に「針ほど望んで棒ほど叶う」こともないとは言い切れない。まさにサプライズであり、イソップ寓話が教えるように、鉄の斧を選んだ正直者の投資家が、相場の神様から銀の斧も金の斧もプレゼントされる僥倖に恵まれることになる。

 では6月28日、29日と日本で初めて開催される20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の際に予想される米国と中国との首脳会談は「棒」になるのか「針」に終わるのか?すでに米国のトランプ大統領は、米中首脳会談が実現しなければ中国からの全輸入品に制裁関税を課す第4弾を発動するとブラフをかけている。対して中国側は、首脳会談に応じるか、応じた場合にどのような用意しているかについても一切、コメントがない。このためマーケットではトランプ大統領は、中国側が首脳会談に応じただけで制裁関税の発動を先送りし、時間稼ぎをするとのうがった見方も出ている。となれが相場は一難去って「リスク・オフ」が「リスク・オン」に変わることになる。諺とは逆の「針ほど望んで釘ほど、あるいはあわよくば棒ほど叶う」とする期待の裏返しともいえないこともない。

 いずれ転ぶにしろ、これでは鳴り物入りで初開催されるG20大阪サミットは、「ウィンブルドン現象」に終わる可能性がある。テニスの4大トーナメントの全英オープン大会は、地元のロンドンで開催されるのに自国の選手の優勝はほとんどなく、他国の選手の活躍ばかり目立つ現象である。G20は、地元の大阪市で開催されるのに、トランプ大統領と習近平国家主席の動静ばかりに関心が集まり、初の議長国を務めるわが安倍晋三首相が、米国とイランの仲介役を買って出た中東情勢を含めも、どのような役回りとなるかなかなか見え難い。

 ただリーダーシップを発揮すると期待される場面も、ないことはない。いわば「針ほど望む」議題のアピールである。IT大手へのデジタル課税と海洋プラスチックごみの規制なら、先行開催の関係閣僚会議でも共同声明に盛り込まれ、存在感を発揮するのは間違いない。とくに海洋プラスチックごみの削減対策は、この週末に先行開催された20カ国・地域(G20)エネルギー・環境大臣会合で国際的な枠組みを創設することを盛り込んだ共同声明を採択し、新聞、テレビのトップニュースとして持ち切りであり、首脳会議そのものが目立たなかった場合に備えて成果を強調する伏線として政治的な忖度が働いたと勘繰れないこともない。すでに日本は、今年5月末に関係閣僚会議でアクションプランを策定し、各国に同様の行動計画を呼び掛けアピールしてきただけに、世界的な映画監督の北野武がかつて看破した「赤信号 みんなで渡れば恐くない」ように証券市場からもサポート、株価的にも「針ほど望んで棒ほど叶う」ことを期待して関連銘柄へのアプローチも有効になりそうだ。

■昨年夏以来の関連相場の再現はまずミダック、エフピコなどの軽量株から地ならし

 海洋プラスチックごみ関連相場は、昨年5月にEU(欧州連合)の欧州委員会が、使い捨てプラスチック製品の大規模使用に禁止法案を提出し、6月のG7(先進7カ国・地域)首脳会議で海洋プラスチック憲章が採択され、さらに大手コーヒー・チェーンなどの外食産業が、次々とプラスチックストローの使用禁止を表明したことなどから、昨年夏以来、何度も演じられてきた。そのため足元では、主力関連株よりは関連の出遅れ株、軽量株へのアプローチが目立っていた。6月入り後の足元で年初来高値まで買われた銘柄には、発電用廃プラ固形化燃料開発のタケエイ<2151>(東1)、廃プラスチックなどの産業廃棄物の収集・処分のミダック<6564>(東2)、食品容器の中央化学<7895>(JQS)、食品トレーのエフピコ<7947>(東1)などが上げられる。このうちミダックは、東証第1部への指定替え承認も申請しており、側面サポート材料となっている。

 G20以降もこうした傾向が続くとしたら先行3銘柄に続く候補株は数多い。100%プラスチック代替の新素材「マプカ」製造の合弁会社を設立した中越パルプ工業<3877>(東1)、三重大学大学院と木製ストローの「ウッドストロー」を共同開発のザ・パック<3950>(東1)、再生樹脂の製造販売事業を展開のリファインバース<6531>(東マ)、廃プラスチックの破砕・圧縮を手掛ける要興業<6566>(東2)、世耕弘成経済産業大臣が、6月15日に全国のスーパー、コンビニなどで使用するプラスチックレジ袋の有料化を早ければ来年4月から義務付けると表明したことから紙袋のスーパーバッグ<3945>(東2)、野崎印刷紙業<7919>(東2)、昨年10月にイタリアのノバモント社と題店契約を締結し生分解性プラスチック「マタービー」の輸入販売を開始したGSIクレオス<8101>(東1)、大手ストローメーカーの日本ストロー(東京都品川区)を傘下企業とする三井松島ホールディングス<1518>(東1)、「マイボトル」の象印マホービン<7965>(東1)などが浮上する。

■「アクションプラン」の政策支援を受け生分解性新素材開発の主力株にも再出番

 もちろん「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」は、ポイ捨て・不法投棄の防止、流出したプラスチックの回収、流出しても影響の少ない素材を開発するイノベーション、廃棄物の適正処理など幅広い取組に政策支援を打ち出しているだけに出遅れ株、軽量株の地ならしのあと主力株の出番も巡ってくる。前日16日まで長野県軽井沢町でG20エネルギー相・環境大臣会合とともに開催された「G20イノベーション展」に関連新素材を出展した企業などが中心となる。生分解性ガスバリア素材「プランティック」を出展のクラレ<3405>(東1)、生分解性セルロースビーズのレンゴー<3941>(東1)、生分解性ポリマー「PHBH」のカネカ<4118>(東1)、バイオポリプロピレンの三井化学<4183>(東1)、生分解性プラスチック「BioPBS」の三菱ケミカルホールディングス<4188>(東1)、海底の環境調査ロボット「YOUZAN」のいであ<9768>(東1)などである。つれてバイオプラスチック「テラマック」のユニチカ<3103>(東1)、新素材「クレダックス」のクレハ<4023>(東1)などの活躍場面も増えそうだ。

 また海洋生分解性プラスチックとセルロースナノファイバー(CNF)の複合化も有望な技術分野であり、CNF開発の王子ホールディングス<3861>(東1)、日本製紙、中越パルプ工業、大王製紙<3880>(東1)、第一工業製薬<4461>(東1)、星光PMC<4963>(東1)、大阪ガス<9532>(東1)などへの人気波及も予想される。さらにかつて外務省から日本企業の先進事例として紹介されたごみ焼却発電プラントでは、JEFホールディングス<5411>(東1)と日立造船<7004>(東1)のシェアが高く、東南アジアで先行実績を上げており、途上国支援促進策として見直される展開も想定される。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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