東北大が運転トレーニングアプリを開発 6週間で高齢者の技能と認知力向上

2019年5月21日 08:54

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開発されたトレーニングアプリの画面イメージ(図:東北大学の発表資料より)

開発されたトレーニングアプリの画面イメージ(図:東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 自宅のテレビで、運転向上のトレーニング―。東北大学は20日、同大加齢医学研究所の野内(のうち)類准教授らのグループが自動車を運転する際の判断力や集中力を高めるためのトレーニングアプリを開発したと発表した。自宅のテレビを使って行うことができ、高齢者を対象に効果を検証したところ、1日20分のトレーニングで運転技能や認知力、活力が向上。使っていないグループと比べ、大きな違いが見られたという。研究結果は7日発行のオンライン雑誌フロンティアズ・イン・エイジング・ニューロサイエンスに掲載された。

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 開発したトレーニング・アプリはテレビにセットアップボックスをつなぎ、WiFiに接続すれば利用できる。トレーニングは簡単な3つのゲームを通して行い、ゲームの操作はテレビのリモコンを使う。

 状況判断力を養うゲームでは、画面に現れる2つの標識に書かれた数字をみて、できるだけ早く数の大きな方を選択する。数字は簡単な足し算など数式のこともある。集中力を養うゲームでは画面中央を回っている音符マークが隠れた瞬間にボタンを押す一方で、道路に人かゴミ箱がでてくるので、人が出てきた場合にだけボタンを押す。

 3つめは物体の動きを予測するゲームで、左から移動してくる車両や人などがブロック塀から出てくる直前にボタンを押す。いずれのゲームもできるだけ早く回答することが求められ、成績によって難易度が変化する。

 効果を検証する実験は、健康な高齢者60人を対象に実施。運転向上アプリを行う30人と別のアプリゲームを行う30人に分かれ、1日20分週5日以上、6週間にわたってゲームをしてもらった。比較対象グループのゲームも数字などを使った判断力などが必要なゲームだったが、早く回答する必要はなく、難易度も変わらなかった。

 実験後、全員に対し運転技能や認知機能の検査、心理アンケートを実施。実験前の点数などと比べると、運転向上アプリをしたグループは運転技能や認知力、抑制能力の点数が大幅にアップ、活力も上向いていた。しかし、別のゲームをしていたグループは、点数があまり変わらなかったという。

 野内准教授は「6週間という短い期間でも、ゲームを使ったトレーニングで運動技能や認知機能などが向上することがわかった。高齢者の運転技能の維持・向上や交通事故の減少に向けた取り組みへの応用が期待できる」としている。

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