5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (2)

2019年4月29日 16:49

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 博報堂時代、同僚から教わった企画術を紹介します。指名案件のプレゼンやクライアントとのミーティングにも役立ちます。広告クリエイターに限らず、どなたでも成果が出やすいメソッドです。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (1)

■(2) 企画は、3行、5秒で

 第三クリエイティブ局岩井チーム時代の話です。私の席の向かいに、Mちゃんというロンゲで同い年の物静かなCMプランナーが座っておりました。彼は、某プロバイダーの激ヤバTVCMを量産していた天才CMプランナーだったのです。

 ある日、「コバヤシくん…競合なんですけど…一緒にCMプレゼンやりませんか」と、仕事に誘ってくれました。新チームでしたし、楽しげな予感もして、有り難く受けました。クライアントはジュエリー買取専門店。デザイナーは隣人のK原くんにお願いしました。

 オリエンは、「オンエア中のCMの“強さ”を残したまま、社名認知度が上がる新CM提案を!」でした。その会社はすでに他社制作の残像感の強いCMを流していましたが、本編の圧が異常に強すぎて、社名が視聴者に残らなかったようです。

 翌々日から企画打ち合わせが始まりました。余談ですが、CMの企画打ち合わせとは、CMプランナーだけが企画出しするのではありません。コピーライターやデザイナーも企画を持ち寄ります。字コンテの人、4コマ漫画の人、演出コンテ並みにカット割りしてくる人、一枚画にコピーを着けてくる人、写真1枚だけ持ってくる人、ネットでバズっているガワ企画を持ってくる人、クチで説明する人。出し方はそれぞれです。

 私の発表が終わり、Mちゃんの番になりました。

 ドサッ! A4コピー紙の束がテーブルに乗っかりました。そして、1案およそ5秒の速さでガンガン企画を説明していくMちゃん。あー、どの案も濃厚。どれも狂っていて面白い。しっかり便益が塗されている。伝達スピードが速く、キレっぷりがハンパない…。

 紛れもなく、プロの仕事でした。この時、私はMちゃんの真のスゴサを知ったのでした。

 おぉぉ…と感心している私に、優しく諭すようにMちゃんが言いました。

 「企画は3行じゃないと、15秒に入らないんだよ…」

 そう、Mちゃんの企画案は「3行の文章」で構成された字コンテ。字数にして30字程度で15秒CMのアイデアを過不足なく表現し尽くしていました。決してコピーの部類ではなく、激しいコンテンツを想像させ、笑わせてくれる字コンテ。まさに、神コンテでした。

 この方法ならクライアントにも1案5秒でプレゼンできます。15~30秒でプレゼンする「エレベーターピッチ」よりも速い。関係ができているクライアントであれば、この方法でも十分話し合えます。

 私はCMだけでなく、イベント立案にも転用したところ、インパクトの強い企画が次々と立てられるようになったのです。

 コツは、長く書いてから削ぐのではありません。「初めから3行でわからせて笑わせる」と決心して書くのです。3行でわからせるのは、ただの説明。3行で笑わせられれば、コンテンツとして目があるということ。3行企画。皆さんもぜひ試してみてください。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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