【小倉正男の経済コラム】自国ファースト=被害者意識のポピュリズム

2019年3月26日 16:04

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■演劇からイデオロギーは消滅した

 昨年~今年といまの演劇を連続してずっと観て廻っている。全国的にそうなのだろうが、首都圏にもよい劇場がどんどんできている。こんなところにこんなピカピカの劇場があるのかと驚かされる。

 ハードはいろいろあるにしても新しくて立派になっている。専門家ではないので何とも言えないが、若い役者などソフトはどうかといえばあまり育っていないな、という感がある。

 昔の演劇といえば、人民思想とか、反ファシズム、あるいは実存主義といったイデオロギーが色濃かった。  それが流行といえば流行で、私など「啓蒙」されたものだが、いまではイデオロギーは舞台から消えている。人民思想とか実存主義といった「添加物」は旧い流行として演劇からまったく消滅している。

 代わりに、いまの演劇のアジェンダになっているのが家族・ファミリー問題である。いまや家族・ファミリーがイデオロギーに化している。  昔のイデオロギーという添加物が一掃されて、いまの演劇はいわば「健康食品」のように装われている。

■自国ファーストで「水平分業」を否定

 戦後世界の資本主義、社会主義というイデオロギー対立はすでになくなっている。代わりに出てきているのは、自国ファーストというナショナリズムということになるのだろうか。

 演劇が、イデオロギー離れで、家族・ファミリーに走るのはたわいない。  しかし、国が自国ファーストに走ればいろいろ問題が生まれる。もともと国というものは自国ファーストなのだから、それを露骨に出せばどうしても亀裂が生じる。

 トランプ大統領のアメリカなど、アメリカ企業が海外で生産しているのを非難してやまない。

 例えば、アメリカ企業が中国の工場で生産すれば、中国がアメリカの生産=雇用、すなわち会社を盗んでいると評している。中国で生産しているアメリカ企業は、中国に生産=雇用など会社を盗まれていると。会社が盗まれているのだから、当然ながら技術も盗まれているという理屈になる。

 インテル、マイクロソフトなどアメリカ企業がつくり上げた「水平分業」を否定している。のみならず、国が民間企業経営に介入するような政策を平気で打ち出している。

■自国ファースト=自国は被害者という「添加物」

 韓国にいたっては、これも自国ファーストなのか、「反米反日」に走り、北朝鮮と「融合」するような動きを採っている。文在寅大統領は、北朝鮮という特殊なレジームの独裁国家と同じ民族ということだけで「融合」できると思っているようだ。北朝鮮の「仲介者」なのか、「擁護者」なのか。あるいは適当に使われているのか。

 イデオロギーという「添加物」が消えても、自国ファーストという「添加物」が加わり、それはそれでややこしいことになっている。

 自国ファーストというのは、自国は他国の被害者であり、他国に損害・損失を与えられているという「添加物」である。  アメリカはアメリカで、中国に生産=雇用や技術を盗まれているという発想になる。韓国なども慰安婦だ、徴用工だということで頭を下げろ、補償しろ、カネを出せ、ということになる。

 自国ファーストは、いつでも自国が被害者で、他国はいつも加害者だから、安易なポピュリズムに流れやすい。なにしろ反省する必要がないのだから。

 「添加物」としては、甘みがあり、使いやすいといったところか。日本のなかにもそういう傾向があるのだが、居心地がよいポピュリズムは長期で使えば有害であることは間違いない。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て現職。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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