ツタンカーメンの墓、10年の修復を終え古代の輝きを取り戻す

2019年2月4日 09:31

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●エジプトの国情にも左右された修復

 2009年から始まったエジプトのツタンカーメンの墓所修復が終了した。エジプト学の象徴ともいうべき歴史的記念物が、よみがえったことになる。

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 1922年に、考古学者ハワード・カーターによって発見されたツタンカーメンの墓はその後、観光客が大挙したこともあり大きな被害を被ってきた。2009年から10年に及ぶ修復の間には、エジプトの国情から作業を中止することを余儀なくされたこともあった。作業を担当したゲッティ保存修復研究所では、交代で12人の修復士を墓の内部に送り、湿気やバクテリアから墓を守るための処置を施し、損傷部分を修復したという。まさに、未来に過去の遺産を伝えるための最大限の努力が、この10年になされたことになる。

●観光業と遺跡保存の共存というテーマ

 ナイル川左岸のルクソールにあるツタンカーメンの墓は、その知名度の高さと比例するように膨大な数の観光客が訪れる。観光客が持ち込む二酸化炭素だけを考えても、遺跡は必然的に被害を受けざるを得ない状況であった。

 このため、空調設備は最新技術を駆使したものが備えられ、壁画を守るための防護柵も設けられた。また、ツタンカーメンについて説明した解説や、よりよく鑑賞するための照明も新たに設置されたのである。

●二酸化炭素と埃の問題は今後も観察が必要

 遺跡を訪問する観光客とそれによって起る損傷から墓を守るために、プロジェクトでは持続的なシステムを設計する必要があった。修復に着手した当初、壁画の茶色の斑点が特に注目された。これはバクテリアによるもので、専門家の意見を取り入れ現在はすべて除去されたという。

 観光客がもたらすのは、二酸化炭素だけではない。粉塵もその一つであり、墓所に損傷を与える大きな要因となっていた。

 ゲッティ保存修復研究所のサラ・ラーディノイスとネヴィル・アグリュー両氏は、埃や二酸化炭素のもたらす問題は最善を尽くしたとはいえ、長期的な影響に関してはまだまだ脅威となりうるとも発言している。2011年に起こったエジプト革命により、2014年に行う予定であった作業が大幅に遅れたことにも言及している。

●将来的には入場者の制限も

 エジプトといえばツタンカーメンを思い起こす人が多いほど、その名は世界中で知られている。そのため、エジプトを訪れる観光客の多くが、ツタンカーメンの墓の見学を希望するという。

 しかし、保存の観点からいずれ入場者の制限が必要になる可能性もある。これは、ツタンカーメンの墓に限らず、世界中の遺跡や歴史的建造物が共有している重いテーマなのである。

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