東武鉄道、スカイツリーなど沿線開発との相乗効果でさらなる成長へ

2019年1月20日 20:51

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 東武鉄道は1月11日、JR北海道で活躍していた14系客車「ドリームカー」1両を、鬼怒川線で運行開始したSL大樹の客車に4月より連結すると発表した。

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 「ドリームカー」はJR北海道の夜間急行用車両として使用されていたため、グリーン車同等のゆったりとした座席間隔やラウンジが楽しめる。今後SLの年間運転日の内約40日が、「ドリームカー」を中間に連結したバラエティー豊かなSLの旅として楽しむことができる。

 東武鉄道は1897年に創業され、最初に現在の伊勢崎線となる北千住(東京都足立区)-久喜(埼玉県久喜市)間を開業し、その後合併・買収・開通を繰り返し、東京都・埼玉県・千葉県・栃木県・群馬県の一部などで総営業キロ数463kmに及ぶ営業距離では国内私鉄2位の大手となった。

 2018年3月で連結子会社81社、持分法適用会社5社を抱え、営業収益5,695億円のうち鉄道、バスなど運輸事業で37%、東武百貨店、東武ストアなど流通事業で33%、旅行、ホテル、遊園地などレジャー事業で14%、スカイツリータウン業など不動産事業で6%、東武建設、建材・熱供給などその他事業で10%を占める幅広い事業を展開する東武鉄道の動きを見ていこう。

■前期(2018年3月期)実績と今期見通し
 前期営業収益は5,695億円(前年比0%増)、営業利益は前年よりも17億円減の666億円(同2%減)であった。

 営業利益減少の要因としては、バス、タクシー、貨物の不振を鉄道でカバーした運輸事業で5億円、遊園地、観光が好調なレジャー事業で1億円、百貨店が牽引した流通事業で3億円計9億円の増益に対し、分譲の減少による不動産事業で18億円、資材高騰した建設業の影響があったその他事業ほかで8億円の減益によるものである。

 今期上半期営業収益2815億円(同0%減)、営業利益317億円(同8%減)の実績の中、今期見通しは営業収益が当初計画よりも344億円上方修正の6,227億円(同9%増)、営業利益は150億円下方修正の638億円(同4%減)を見込んでいる。

■中期計画(2018年3月期~2021年3月期)による推進戦略
 東京オリンピックの開催とその後を見据えて次の成長戦略を推進する。

 1.重点エリアへの集中投資による収益の最大化
 ・浅草、スカイツリーエリア: 東京スカイツリータウンでイベント開催し、国内海外向け集客強化と浅草を結んだ観光地としての一体化。
 ・日光、鬼怒川エリア: 東照宮、中禅寺湖、世界建築博物館東武ワールドスクエアを結び、SL復活運転と合わせた観光開発。
 ・池袋エリア: 東武東上線の屋上デッキ回遊路整備など池袋駅の再開発事業推進。
 ・銀座、八重洲、湾岸エリア: ホテル着工を計画し、オリンピックを契機に湾岸エリアを含めた事業拡大。

 2.沿線における事業の深耕による沿線価値の向上
 ・多様なライフスタイルにあった住宅開発事業: 新ブランド「ソラリエ」導入、リノベーションによる改築、駅チカで快適な物件などの多様な住宅賃貸事業と分譲マンション、戸建分譲を推進。
 ・輸送サービスのレベルアップ: 速達性、利便性、生産性、安全性の向上に積極投資。
 ・駅を中心とした拠点の開発: 駅ナカショップの充実と駅ビル大規模化による街の活性化。

 沿線外のホテル整備などインバウンドの取り込みを加速し、成長力強化を目指す東武鉄道の動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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