世界初 失明の恐れがある網膜中心静脈閉塞症を網膜の広角画像だけで判定

2018年11月6日 11:13

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広角眼底画像(A:正常眼 B:Aのヒートマップ C: 網膜中心静脈閉塞症の眼 D:Cのヒートマップ)(画像: Ristの発表資料より)

広角眼底画像(A:正常眼 B:Aのヒートマップ C: 網膜中心静脈閉塞症の眼 D:Cのヒートマップ)(画像: Ristの発表資料より)[写真拡大]

 人工知能技術(AI)を生かしたシステム開発をしているRistはこのほど、AIを活用して網膜の広角画像だけから高い精度で網膜中心静脈閉塞症を判定することに成功した。これは世界初の取り組み。実用化されれば、健康診断や遠隔診療への利用が進むほか、外国からのメディカルツーリズムの対象となることも期待される。

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■広角眼底画像をAIで解析

 網膜中心静脈閉塞症は、網膜の根元部分が詰まって網膜への血流が途絶えることで視力低下や視野欠損が起こる病気で、出血やむくみ(浮腫)が黄斑に及ぶと視力が急激に低下する。診断の際には通常、眼底検査や蛍光眼底造影検査、光干渉断層計によって検査を行い、病変の範囲、部位、血管閉塞の程度を調べる。

 今回の研究では新たに画期的な網膜画像診断機器を使用。これにより、従来の眼底カメラの4倍以上の画角で眼底の約80%のエリアを撮影することができるようになった。この広角眼底画像をAI(Deep Learning)によって解析し判定することによって、検査の性能指針であるAUC(ROC曲線下面積;100%に近いほど高精度)で99%という高い精度にて網膜中心静脈閉塞症を判定することができたのだ。

■Ristとツカザキ病院が連携

 今回の研究は、AIを用いて製造業や医療、建設業などの分野でシステム開発を行っているRistが、国内最大規模の眼科部門を持つツカザキ病院と連携して取り組み、成果を挙げた。

 Ristでは「私達が進めている広角眼底画像へのAIアルゴリズムは、国内外の人間ドックをはじめとした健診、眼科医のいない医療過疎地での遠隔診療などへの組み込みを可能とし、ひいては日本の眼科医療メディカルツーリズムの端緒となる可能性がある」と今後の展開を説明している。

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