「仮想通貨のブロックチェーン技術による産業革命は到来するのか?」

2018年10月2日 16:02

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記事提供元:フィスコ


*16:02JST 「仮想通貨のブロックチェーン技術による産業革命は到来するのか?」

2018年9月19日(水)18時30分から、東京・日本橋の野村コンファレンスプラザ日本橋5階の大ホールBで、中国金融研究会の9月度の勉強会が開催された。テーマは、「仮想通貨のブロックチェーン技術による産業革命は到来するのか?」である。いま、もっとも注目度が高いブロックチェーンに焦点をあて、ブロックチェーンに詳しい講師による、勉強会である。
中国金融研究会(愛称:三思会)が発足したのは2008年のことで、それから5年後の2013年にNPOに発展した組織である。中国と日本における金融や経済の分野で、定期的に勉強会を開催している。ちなみに、愛称の三思会は、「何度も考える、熟慮する」という意味が込められている。
勉強会は、副会長の張秋華さんの司会によって始まった。
張秋華副会長

最初は、この1年間の日中関連ニュースの紹介だった。紹介したのは、オークラホテル企画本部担当部長で、中国金融研究会の会長である佐々木芳邦氏。

佐々木会長は、「米で株式公開、中国勢急回復 今年、件数倍増の勢い IT中心に大型案件」「対中追加関税、輸入の半分 米、24日に第3弾 消費財に波及 中国、報復を決定 米国内インフレ圧力 部品・材料の価格上昇」など、主立ったニュースを読み上げて紹介した。途中、張副会長が、ニュースの補足説明を行い、自身が中国で見聞きした情報を披露した。
続いて、勉強会の本題である「ブロックチェーン」の解説にうつった。講師を務めたのは、中国出身のIT技術者で、ブロックチェーンに詳しい李晨(りー・しん)氏。李氏は、1988年に来日し、武蔵工業大学(現東京都市大学)で、ファジー、ニューロン、遺伝子工学を専攻し、修士号を取得した。卒業後はパイオニアに入社し、1997年にはANSを設立、2005年には米国の大手IT会社と資本提携を結び、2010年には蘇州市太倉にクラウドデータセンターを設立。2013年には、北京市長のクラウド技術顧問として、北京市のクラウド戦略、政策に参画。さらに、暗号通貨やブロックチェーンの最新情報を発信するメディア「デジタルジャーナル」を立ち上げ、ブロックチェーン技術関連の技術開発も手がけている。
李晨氏

李晨氏がブロックチェーン技術に出合い、勉強を始めたのが2017年からだった。しかし、それまではいろいろなニュースで知る限り、ブロックチェーンやビットコインは信頼できない、という先入観をもっていた。しかし、勉強を続けていくうちにその先入観が払拭され、「ブロックチェーンは凄い技術だ」と確信し、技術者として目覚めたという。
日本はビットコインの全体の取引量の57%を占め、合法的に取引ができるので、「ビットコイン天国」という人もいる、李氏はいう。そして、ブロックチェーンの話をする前に、ビットコインについての解説を始めた。
「ビットコインはどうやって誕生したのか?」といえば、2008年まで溯る。というのは、2008年にリーマンショックが起きて、人々は金融業界へ強い不信を抱くようになった。その時に、信頼できる分散型の金融の仕組みがつくれないか、というので、自称ナカモト・サトシと名乗る人物が、ビットコインのホワイトペーパーを発行した。多くの技術者がその主旨に賛同し、彼らによって開発されたのが、ビットコインである。
2010年5月22日、ある技術者が1万ビットコインでピザを2枚購入することができたことが、ビットコインが初めてものを購入できた行為だといわれている。この日が暗号通貨の誕生日となった。
ビットコインがなぜ信頼されているか、それは、発行枚数が2100万枚と制限されていることと、小数点以下18桁の単位まで購入できるからである。発行枚数が制限されているから、それだけで価値があがることになる。そして、日本では仮想通貨といっているが、英語ではcryptocurrencyといって、本当は、暗号化された信頼されている通貨といったほうが正しい。ビットコインの現在の資産価値は、約12兆円である。
ビットコインを理解するには、自分で実際に買ってみることだが、ビットコインを買うためには、暗号通貨の取引所に口座を開設する必要がある。日本で暗号通貨の取引所を開設するには、金融庁からライセンスを受けなければならない。中国は取引所は禁止されている。取引所の口座は銀行口座と連携していて、暗号通貨を購入するためには、銀行から日本円を取引所の口座に入金して、それで、ビットコインやほかの暗号通貨を購入する。

暗号通貨は送金に非常に便利だ。銀行の国際送金は手数料もバカ高いし、ネットワークが発達していない遠隔地だと、到着するまでに何日もかかったり、その分、手数料がよけいにかかるから、たとえば、10万円送金しても現地に届くのは、7万円から6万円ということも珍しくない。しかし、ビットコインなどの暗号通貨だと、手数料は安くてすむし、約10分程度で送金が終了する。ただ、送金先のアドレスを間違えると、お金は返ってこない。事実、毎月何千というビットコインが行方不明になっている。

次に、李氏は、ブロックチェーンの説明に入った。現在の銀行は個人の口座状況や取引関連など、すべての情報がデータセンターで一元的に管理されている。これを中央集権型管理といっているが、それが問題なのは、ハッキングにあったり、内部で不正な行為が行われた李、ネットワークが遮断されたり、いろいろなトラブルがあるが、そんな時に、一番迷惑を被るのが口座開設者だということだ。
ブロックチェーンの考え方は非中央集権で、つまり、サーバーとクライアントの間にはセンターの乖離がなくて、みんな平等という考え方である。暗号通貨の基盤技術がブロックチェーンであること、さらに、ブロックはチェーンによってつながっており、1ブロックに書き込める情報の量は決まっていること、そして、改竄するのは大変で、ルール上、50%以上の人が正しいと認めないと、改竄はできないこと、など、ブロックチェーン特徴を述べた。
そして、仮想通貨によって1ブロックに書き込める情報の量は違うが、ビットコインの場合は、一つのブロックの大きさは1メガである。そのブロックに取引の情報がかけなかったら新しいページ(ブロック)をつくって、そこに書き込むわけである。それを繋ぐのがチェーンなのだが、このチェーンを繋いでいるのが、ハッシュ関数である。ハッシュ関数は、ハッシュ値からもとのデータを計算することができない、という性格をもつ。

では、ビットコインハどうやってできているかといえば、そこで出てくるのがマイニングである。マイナーという人が台帳に記帳するだけではなく、ビットコインをどんどん採掘して、2100万枚に達するまでは、ビットコインを世の中に送り出している。マイニングを行う機械であるマイニングマシンをつくっているのが、世界では、中国で1社、アメリカの1社の2社のみで、彼らはNASDAQに上場し、大きな利潤をあげている。
さて、ブロックチェーンの特徴は、大きく分けると2つに絞られる。一つは、非中央集権型(非センター型)であること。中央で管理をするのではなく、接続しているユーザー全員が管理監視をしている。そのため、悪意のあるトランザクションでも、多勢に無勢である。もうひとつは、不可逆性。改竄できない、信頼できる、ということだ。過去に遡って改竄しようとすると、過去から現在までのすべてのトランザクションを書き換えなければならない。そんなことは不可能である。

そして、李氏は、マイニングやICO(InitialCoinOffering)について触れたあと、ブロックチェーンの問題点を次のように指摘した。
「ブロックチェーンの問題の一つは、処理速度が遅いということだ。たとえば、クレジットカードのVISAが1秒間に約4000から6000のトランザクションを処理できるが、ビットコインだと7つのトランザクションしか処理できない。ちなみに、イーサリアムだと15トランザクション、リップルだと1500、EOSだと3000である。
次に、スケーラビリティの問題がある。ビットコインの場合は、1ブロックの大きさは1メガだと述べたが、それは10分間ごとに1ブロック生成される。そうすると、1日で144メガのブロックが生成されることになる。1年間では、5万2560メガバイト=52ギガバイトのブロックが生成される。ユーザー数が増えると、取引量が増える、すると、処理速度が遅くなる。そうなると手数料が高くなり、マイニングマシンが増えると、処理速度が速くなるが、その分、消費される電力量は膨大なものになる。
ビットコインネットワークで現在、消費されている電力量は、約2.55ギガワットで、2018年末には、7.67ギガワットになると予想されている。これは、世界全体の0.5%にあたる。しかも、オーストラリアの電力量は、8.2ギガワットだから、それに匹敵する消費電力量である。これが環境に悪いと、問題視されている」
そして、李氏は、仮想通貨業界の事件と誤解、さらに、ブロックチェーン技術の応用について述べた。ブロックチェーンは何も暗号通貨の世界だけのものではなく、幅広い分野での活用がひろがっている。IoTやAIと結びつけた活用も増えてきているし、今後、さまざまな分野での活用が期待されている。また、中国の規制の現状と問題点について触れ、講演を終了した。


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