米国で発生の多剤耐性カンピロバクター感染症、子犬への抗生物質投与が原因

2018年9月24日 18:05

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記事提供元:スラド

米国で2016年~2018年に発生した多剤耐性のあるカンピロバクター感染症のアウトブレイクについて、子犬への抗生物質投与が原因とする調査結果を米疾病予防センター(CDC)が発表した(CDCの報告書The Vergeの記事Ars Technicaの記事)。

今回のアウトブレイクは当初、オハイオ州を本拠にする全米規模のペットショップチェーンA社と関連する症例として、2017年8月にフロリダ州保健省がCDCに6件の感染を報告したものだ。CDCでは全ゲノムシーケンシングを行い、フロリダでA社の子犬6匹から分離したカンピロバクターのサンプルとオハイオ州でA社の客1名から分離したサンプルに強い関係があることを特定する。

この結果を受けて複数の州で調査が行われ、2016年1月5日~2018年2月4日にペットショップ従業員29名を含む合計118名の感染者が出ていたことが18の州で確認された。A社以外にも5社のペットショップがアウトブレイクに関連することが判明し、分離されたサンプルはカンピロバクター感染症でよく使われる複数の抗生物質に耐性があることも判明した。
4州で20軒のペットショップから集めた子犬149匹の投薬記録によると、142匹がペットショップに届けられる以前に抗生物質の投与を1コース以上受けていたという。そのうち78匹に対する抗生物質の投与は予防的なもののみであり、54匹は予防と治療のため、2匹は治療のみで投与されていたとのこと。子犬の流通経路を追跡した結果、25のブリーダーと8の流通業者にたどり着いているが単一の感染源は特定できず、異なるブリーダーの子犬から流通経路で感染した可能性も考えられる。

犬がかかわるカンピロバクター感染症アウトブレイクは過去にも報告されているが、耐性菌は確認されていなかった。今回のアウトブレイクでは子犬に対する幅広い抗生物質の使用により、多剤耐性菌が広まっていることが判明した。そのため、CDCでは犬に触れた後の手洗い励行や、ケージなどを清掃するペットショップ従業員への保護手袋などの提供、衛生を向上させて必要以上に抗生物質を使用しないようにすることなどが必要だと述べている。

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