さくらももこさんが逝去 漫画家としてのルーツを「ひとりずもう」で知る

2018年8月29日 08:50

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さくらももこ氏の「青春」が詰まった漫画だ(c)小学館/さくらももこ

さくらももこ氏の「青春」が詰まった漫画だ(c)小学館/さくらももこ[写真拡大]

■アニメ「ちびまる子ちゃん」ではなく漫画家としてのさくらももこ氏

 2018年8月28日、漫画家のさくらももこ氏が死去したとのニュースが全国に流れた。享年53歳、死因は乳がんとのことだ。「ちびまる子ちゃん」で慕われた人気漫画家の突然の死は、日本だけでなく世界中から悲しみの声が集まってきた。

 さくらももこ氏といえば国民的アニメとなっている「ちびまる子ちゃん」がまずあがるだろう。しかし、それらのニュースを見ていると、個人的に彼女が「アニメーター」のような紹介がされており、漫画家としてフィーチャーされていないのが目に付く。

 やはりさくらももこ氏はどこまでも「漫画家」であり続けた人であり、卓越した文才と独自の感性でエッセイストとして活躍し、多くの人の心を癒してきた。そんなももこ氏はデビューに至るまでの人生を「ひとりずもう」というエッセイストとしてまとめ、さらに漫画化も行っている。今回は、あまりニュースでも触れられていない「さくらももこ氏のデビューまでの話」を、「ひとりずもう」を借りながら少しだけ紹介したい。

■自身のデビューまでを赤裸々に描いた「ひとりずもう」

 小学生5年生のももこちゃん(筆者)はなにかと不安を感じる日々だった。身体がどんどん女性に変わろうとしているのに、自分は一向に「女」になんてなりたくないと、どこかジレンマにさいなまれる日々が続いていた。そんなももこちゃんは、どこか他の女の子よりも多感だったと言えるだろう。

 彼女が中学生になって少し髪を伸ばし始めた頃、自分と同じく身体に変化が起こっている男子に拒絶反応を示し始めた。身体が大きくなるだけでなくヒゲやニキビにも過敏に反応し、さらに態度が悪くなる彼らと距離を置きたくなってしまう。しかし、それは自分を含めて「思春期」を迎えているからこその反応だと悟ることになる。

 やっと自分や周りの変化に馴染めたと思い始めた矢先、ももこちゃんは女子高に進学することになる。この時期から徐々に漫画家になりたいと考え始めるが、周りとまったく違う進路にまた悩みばかりが膨らんでいく。しかし、なにもしなければ漫画家になることもできないと思い、ついに画材を買って漫画を描き始めるのだったー。

■さくらももこ氏の魅力は独自の視点の表現力

 「ひとりずもう」のエピソードを少しだけ拝借したが、さくらももこ氏がいかに悩みながらも挑戦を続けたのかがわかる。その道中でも、やはり「まるちゃん」らしい間の抜けた発想なども登場するのだが、そんな自分とどう折り合いをつけていったのかが本作品では色濃く描かれている。

 また、ももこ氏の作品を見てみると、独特な感性や言い回しが散りばめられている。実は、彼女の文才は抜きんでているものがあり、女子高時代に書いた小論文では「現代の清少納言」と称されるほどだった。その能力と可愛らしい絵が組み合わさることで「コジコジ」や「ちびまる子ちゃん」が生まれたのだ。

 あまりニュースなどでは触れられていないさくらももこ氏の原点が描かれた「ひとりずもう」。まだみたことが無い人はぜひ一度は触れてもらいたい作品である。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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