帝人、次の100年の飛躍に向け中期計画で成長・発展戦略を推進

2018年8月6日 07:34

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 帝人は7月30日、欧州を中心に自動車向け内装材の生産・販売を展開する独ジーグラー社を約162億円で買収すると発表した。

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 帝人は産業資材部門において自動車関連領域を中核事業の一つとして掲げ、高機能内装材やゴム補強材など様々な製品、ソリューションを提供しており、ジーグラー社が欧州・中国に幅広く展開している自動車向け吸音材などとのシナジー創出を目指している。

 帝人は1918年帝国人造絹糸株式会社として設立され、1927年には岩国工場でレーヨンの生産を開始した。

 第二次世界大戦後ナイロンの技術が盛んになりレーヨンが低迷して、帝人は倒産の危機に直面したが、大蔵大臣などを歴任した大家晋三が社長に就任し、ポリエステル技術を導入して立ち直った。

 1970年代に入ると大家社長が主導した未来事業部の50以上の新規事業の立ち上げが失敗し再び厳しい経営状況に追い込まれたが、不採算事業の整理と医療品事業や炭素繊維などの高機能繊維の成長により順調に回復軌道を歩んでいる。

 創業100周年を迎えて、高機能繊維・化成品・複合成形材料、医薬・在宅医療、ITといった多岐にわたる事業をグローバルに展開する帝人の動きを見ていこう。

■前期(2018年3月期)実績と今期(2019年3月期)見通し

 前期実績は売上高8,350億円(前年比113%)で、営業利益は前年よりも133億円増の698億円(同124%)であった。

 営業利益増加の主な要因としては、マテリアル部門がアラミド繊維の自動車向けに好調だったことと2017年1月に買収した米CSP社の連結子会社化などにより24億円、ヘルスケア部門が前年の米国在宅医療事業撤退損失110億円がなくなったことにより112億円の増益などによるものである。

 今期は売上高8,900億円(同107%)、営業利益700億円(同100%)を見込んでいる。

■中期経営計画(2018年~2020年)による推進戦略

 次の100年の飛躍に向けて「未来の社会を支える会社になる」ために、基礎収益力の強化を目指した成長戦略、新規コアビジネスの確立を目指した発展戦略を地域特性に合わせてグローバルに展開する。

【成長戦略】
 1.航空機: 軽くて強い高機能な炭素繊維とアラミド繊維の推進。
 2.自動車: タイヤ補強材としてのアラミド繊維と軽量で意匠性に優れた樹脂の強化。
 3.インフラ関連: 光ファイバー、ロープ、深海油田採掘用のパラアラミド繊維と防護衣料用のメタアラミド繊維の展開。
 4.医薬品: 痛風治療薬「フェブリスク」の販売と新薬開発
 5.在宅医療: 睡眠時無呼吸治療器CPAPと在宅酸素療法HOTの推進。

【発展戦略】
 1.自動車向け複合材料: 自動車の素材メーカーから部品供給業者、さらにデザイン、設計に協力する部品供給パートナーを目指す。
 2.セパレータとメンブレン: 電動化に対応する大型バッテリー用セパレータと膜(メンブレン)技術で半導体フィルターなどへ展開。
 3.ヘルスケア部門: 新規医療機器、ICTを活用した保険外の未病予防、人工関節などの整形インプラントデバイス、スーパー大麦などの機能性食品素材を組み合わせ、製品やサービスラインアップの多様化。

 創業100周年で次の100年を見据え、物質や素材だけの化学にとどまらず「未来の社会を支える会社」となることを目指す帝人の動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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