「火垂るの墓」は、なぜ泣けてしまうのか?

2018年3月8日 00:19

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「 火垂るの墓 」は、なぜ泣けてしまうのだろうか?

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 このアニメを観て泣かない人はいないとまで言われるジブリ作品「 火垂るの墓 」。アニメ映画として公開された本作品ですが、毎年終戦記念日近くになると何度も再放送されて、そのたびにお茶の間を涙で満たしてしまう、「涙作り名人」なアニメです。

 今回はそんな「 火垂るの墓 」をピックアップして、なぜ我々は「 火垂るの墓 」を見て泣けてしまうのか?を考察してみたいと思います。

Contents
1 「 火垂るの墓 」とはどんなアニメなのか?2 なぜ「 火垂るの墓 」はなぜ泣けてしまうのか?3 「 火垂るの墓 」が他の戦争アニメとは違うところ

■「 火垂るの墓 」とはどんなアニメなのか?


 まずは「火垂るの墓」のストーリの紹介です。太平洋戦争末期、兵庫県に住んでいた4歳の節子とその兄である14歳清太。

 神戸の大空襲で神戸市内は焼け野原となり、母と家を失ってしまう。父の従兄弟の嫁で未亡人である西宮市の親戚の家に身を寄せることになります。叔母との共同生活は、最初は順調だったが、戦争が進むにつれて二人の居候期間が長引き、だんだんと叔母は苛立ち始めます。二人を邪魔者扱いするようになります。耐えられなくなった清太は、節子を連れて家を出ます。

 二人だけで池の近くにある防空壕のなかで暮らし始めるが、孤立した二人を助ける者はおらず、なかなか食糧を得ることはできません。追い詰められた清太は、火事場泥棒などをします。ついに清太は農夫によって警察に突き出されてしまいます。その間に節子は、食糧不足で日に日に衰えており、栄養失調になっていました。

 なんとか工面し、節子に食糧を与えますが、節子は口にすることはできませんでした。そのまま息を引き取ってしまいます・・。

 両親と妹を失った清太は、戦争孤児となり、自らも衰弱し、やがて静かに息を引き取ります。清太が持っていたものは、節子の遺骨が入ったサクマドロップの缶だけでした・・。

 幼い兄妹が、終戦前後の混乱の中を必死に生き抜こうとするが、その思いも叶わず悲劇的な死を迎えていく姿を描いた作品です。

■なぜ「 火垂るの墓 」はなぜ泣けてしまうのか?


「 火垂るの墓 」は、なぜ泣けてしまうのだろうか?
 では、なぜ「 火垂るの墓 」は泣けるのでしょうか?「火垂るの墓」を観て泣かない人はいないとまで言われています。

 泣かない人はいないと言われるのは、やはり「戦争」によって、幼い兄妹が運命に抵抗しながらも、戦争という大きな波に流されてしまい、命を落とすところにある・・・というのは、ごくごく普通の論調です。

 もちろんこの不幸な運命を断ち切ることができない連鎖のストーリー自体が、多くの視聴者を涙させる理由なのは間違いありません。しかし、これだけでは、ただの不幸なストーリーであるというだけで、「誰でも」「何度も」というのとは少し違います。

 では、「 火垂るの墓 」は他のアニメとは一体何が違うのでしょうか?そこには多くのストーリーの見せ方があると考えています。

■「 火垂るの墓 」が他の戦争アニメとは違うところ


「 火垂るの墓 」は、なぜ泣けてしまうのだろうか?
 「 火垂るの墓 」を誰が見ても、何回見ても泣きたくなる見せ方があります。

まずは「お兄ちゃん」が死んでしまうところからすべてが始まる。
徹底的に非情な叔母

 要点を絞ってしまえば、最終的にこの2点に絞ることができました。「 火垂るの墓 」は、駅構内で兄の清太が死んでしまいます。戦争も終わり、不当に命を奪われる危険が去ったのにも関わらず、死んでしまうのです。

 「昭和20年9月21日夜。ぼくは死んだ」

 ここからスタートします。突然の始まりであり終わりに、度肝を抜かれてしまいます。意味もわからないまま、兄を取り巻くあらゆる状況が不幸の真っ只中であることが一発で認識できてしまうアプローチです。

 そして叔母。彼女は清太や節子に辛くあたり、その嫌味っぷりは、兄弟の不幸レベルをマックスにしてくれます。戦争という想像できないような不幸に、現在の私達にでも想像できる「リアルなスケール」で、不幸を見せてくれているのではないでしょうか。

 ちなみにこの祖母、ネットではひどい叔母の代名詞となっていますが、「戦争」という悲惨な状況の中での叔母の行動は、仕方の無い面もあります。しかし、いくら過酷な条件下でも、あれほどナチュラルに意地悪をやってのけるのは、意地悪の天賦の才能があると言わざるおえない。いわば、意地悪のエキスパートですね。

 しかし、戦争によって叔母の意地悪が加速度的に先鋭化しているのもまた事実です。普通の生活が「戦争」のせいで崩れ落ちていく・・。こんな事は二度と繰り返していけない人災です。

 「しかし、シリアなどでは今だに多くの子供達が空爆の脅威に晒され、ロヒンギャの難民達は政府軍に追い立てられています。私達が住むこの日本でも、「戦争」というキーワードが徐々に身近になりつつある今だからこそ、「 火垂るの墓 」が祟り続けているメッセージに耳を傾ける意味があるのではないでしょうか。

 文章:kyouei-あにこ

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(あにぶ編集部/あにぶ編集部)

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