横綱・日馬富士、見せつけた最高位の誇り

2017年9月25日 20:59

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 大相撲9月場所は、千秋楽で横綱・日馬富士が大関・豪栄道に本割、優勝決定戦と連勝し、11勝4敗で7場所ぶり9度目の優勝を飾った。3横綱・2大関の休場、自身もサポーターで両肘を包みながらの満身創痍の中、序盤での連敗と苦しみながらも逆転で賜杯を手にし、横綱としての責任を果たした。

■苦しみ続けながらも力を発揮
 初めての1人横綱での賜杯は対戦相手だけでなく、計り知れない多くの重圧の中で掴んだ。

 途中、優勝争いのトップを走る豪栄道に星の差を最大3差つけられながらも踏みとどまり、13日目に豪栄道が破れ自力優勝の可能性が出てからは明らかに土俵上での迫力が増した。周囲から寄せられる期待、そして優勝へのプレッシャーもある中での残りの3日間の相撲は、最終日の豪栄道との2番も含め、何れも対戦相手を圧倒、堂々とした自分の形で勝利を射止めた。「格の違い」とはまさにこのことだと強烈に考えさせられた。

■これまでの経験と誇りが背中を後押し
 14日目の結び、御嶽海戦では立ち合いで先手を取り両上手・前みつを掴み、一呼吸置いた後、まっすぐ一気の寄り。敗れるとその瞬間、豪栄道の優勝が決まる状況の中、横綱としての自力と蓄積された経験が集中力を研ぎ澄ましているように感じられた。

 3日目からの3連敗 10日目にも貴景勝に敗れ平幕に4敗という、本人ならずとも不本意な内容だったかもしれない。それでも、三役勢には全勝、今場所土俵を踏んだ唯一の横綱として最後まで最高位に君臨する者の誇りを見せつけた。

 日馬富士は常々、「相撲はスピードと技の掛け算」と語るように力だけではない、技術と技巧にこだわりを貫いてきた。その言葉通り、今場所終盤でのまわしを掴み前に出る一瞬の速さは未だ衰えを見せておらず、およそ1年ぶりとなる優勝は日馬富士の力士としての能力の高さが十分に伝わってくるものだった。

 11月の九州場所では再び場所を引っ張る存在として、他の力士の壁になる力強さを、そして「綱の重み」を感じさせてくれることを強く、期待したい。(記事:佐藤文孝・記事一覧を見る

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