社長が「株価を意識した経営」を公言する会社

2017年8月25日 08:00

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 トップが「株価を意識した経営を執る」と外部に向かい、堂々と公言する企業とは滅多にお目にかかれない。「御社のいまの株価をどう受け止められておられるか」と問いかけても大方の場合は「株価は市場が決めるもの。我々がとやかく言うものではありません」と、ヤンワリかわされてしまうるのが落ち。

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 対して「株価を意識した経営」を真っ向から口にしているのは、フジッコの藤井正一社長。同社は周知の通り「豆製品・昆布製品」を中心とした食品メーカー。藤井社長の言い分はこんな具合。「当社では役員に対しては株式報酬型ストックオプションを、幹部社員には株式給付信託制(業績連動型株式給付制)を執っている。役員・幹部を株主とすることで、企業の通信簿ともいえる株価を意識した企業活動を実践するため」。

 具体的にどう噛み砕けばよいのか。フジッコをウオッチするアナリストは「株価に悪影響を与える施策は執るな。好影響を及ぼす様なことを、社員株主が率先し意識して業務に当たれというメッセージだと自分は捉えている」と解説した。言い換えればその根底には「豆製品の48%、昆布製品の43%」という国内シェアに安住などするなであり、「新規分野に積極的に挑んで勝て」というミッションを感じる。

 例えば同社は、15年前の2012年にゼリー分野に参入している。後発である。先発組には「ブルボン」など名だたるメンバーが名を揃えていた。かつて「夏のスイーツ」といえばゼリーに代表された。だがゼリーはいま、ある種の曲がり角を迎えている。リサーチ会社のマクロミルの調査では「昨年までの5年間で市場は販売額ベースで8%減少している」という。その要因は、多種多様な夏場のスイーツの登場とされる。

 しかしそんな中でフジッコのゼリーを中心としたデザート事業は、前3月期末で5・9%増と「孤軍奮闘」を見せている。先のアナリストは「進出に際し先行他社同様に常温保存型の道を選択していては、今日はなかっただろう」とした。「フルーツセラピー」シリーズで乗り込んだ市場で同社は、ビハインドを覆す施策とし10℃以下で保存する「チルド型」で打って出た。そして矢継ぎ早に「フルーツセラピー/レシピ」を発信していった。これが功を奏した。12年から16年までにフジッコのゼリーは128%の増収となっている。

 そしてゼリーの成功の貢献度は分からないが、同社の株価は12年1月初値に対し直近まで、2.8倍弱値上がりしている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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