大相撲名古屋場所 不完全燃焼に終わった三役力士たちへの期待

2017年7月25日 17:16

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 横綱白鵬の勝利記録や最多優勝、そして稀勢の里の休場といった、横綱の話題が中心となった大相撲名古屋場所。期待された三役力士たちも力を発揮しきれなかった場所となった。優勝した白鵬の「一強時代」を感じさせるかのような強さを見せつけられた今場所だったが、秋場所以降、三役力士の奮起はあるだろうか。

■新大関高安
 場所前、新大関として話題の中心に位置し、4横綱の対抗馬となるべく初優勝を期待された高安。2日目から7連勝と、期待通りの結果を残すかと思われたものの、終盤に痛恨の4連敗、先場所までの力強さも陰りを見せていたようにも感じる。また初日に北勝富士、13日目には栃煌山と平幕に星を落とすなど、場所を通して安定感が見られなかった。

 3大関の中で唯一の勝ち越しを決めたものの、2横綱には共に力の差をみせられての負けを喫すなど、公言していた優勝争いに残ることは出来ず、物足りない結果に終わった感は否めない。東の正大関として迎える来場所では今度こそ横綱を圧倒する姿を発揮できるか。

■およそ一年ぶりの負け越し、玉鷲
 初場所より関脇で3場所勝ち越しを続けてきた玉鷲。名古屋でも台風の目として注目を集めていたものの、千秋楽に栃煌山に敗れ負け越しとなった。それでも今場所も2大関に土をつけるなど、終始しぶとい相撲がみられた。特に11日目の大関高安戦では立ち合いから押し込まれるも、土俵際から盛り返し、得意とする強さのある突き押しで逆襲、高安を土俵下まで追いやった。昨年の夏場所以来の負け越しとなり来場所は小結に下がるが、高安戦でみせた相手を圧倒する一直線の突き押しが出せれば、再び大関挑戦への足掛かりを築いてゆけるだろう。

■平幕から再起を図る元大関・琴奨菊
 14日目、栃の心戦での黒星により負け越しが決まり、7年ぶりとなる平幕への陥落が濃厚となった琴奨菊。33歳となる今年、大関の地位を手放し、ここまで3度の負け越しを経験、番付も下がり続けている。ただ、先場所は最終3日間を連勝、今場所も勝ち越しまであと一歩と、決して大崩れとは言えない内容だ。

 千秋楽には自身の大関時代を彷彿とさせる、強烈に当たる立ち合いから圧力のある一気の寄りで若手の北勝富士を一蹴した琴奨菊。負け越し後、進退について語ることもなく「前を向いてやるだけ」と、現役続行へと意欲を見せるコメントを残している。元大関の誇りを胸に秘め、来場所以降もベテランとしての取り口を披露してくれるはずだ。

 思い通りの結果を残すことのできなかった力士から伝わる物語は決して栄光に彩られることはないかもしれない。その中でもファンは後押しをやめることはない。なぜならば頂点に君臨する者だけが主役ではないのだから。

 月末から夏巡業も始まる。それぞれが名古屋場所の経験を胸に、秋以降へ向けてすでに歩を進めている。(記事:佐藤文孝・記事一覧を見る

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