問題解決の極意その1 〜対策を考えない、問題を考える〜

2017年5月4日 17:09

印刷

 問題解決が上手な人、良いアイデアを出す人に共通していることがあります。それは対策を考えず、問題を考えていることです。『何をやったらいいのだろう?』と考えるのではなく、その人たちは『現場でどんな問題が発生しているのだろう?』と考え、現場で確認しています。

●ある鉄道会社が対策を変更できた理由

 対策ばかり考えて取り組みを失敗し、現場確認で一転成功した事例をお話します。ある鉄道会社では夜の酔っ払いによるプラットホームからの転落事故に悩み、「電車がホームに入ります。ご注意下さい。」のアナウンスを繰り返し流していました。しかし、一向に転落事故は削減しなかったそうです。この取り組みはアナウンスするという対策ありきの発想で、『対策を考える』典型です。

 そこで、ある社員が不思議に思い、プラットホームの現場を観察しました。一人の酔っ払いがホームのベンチに座っている様子をじっと見ていると、アナウンスが流れた瞬間、その酔っぱらいは勢い良く立ち上がり、その勢いでふらっと線路方向によろけました。「あっ」とその社員は思いました。危ないと思ったのと同時に、転落事故の原因が分かったのです。

 そもそもホームのベンチは線路向きに設置されています。座っていた酔っぱらいが立ち上がろうとすれば線路方向によろけるのは当り前です。これが転落事故の原因だったのです。【アナウンスを繰り返す】という対策は、前々から実施している思い込みの対策で、原因を消し去る対策ではなかったのです。現場確認して本当の問題を見付け、本当の原因を探れば、真の対策【ホームのベンチの設置方向を変える】にたどり着くことが出来るのです。

 当然この対策で転落事故が削減されたそうです。

●『問題を考える』とは

 問題=解決すべき不具合なこと、対策=問題を解消するためにやることと定義すると、『問題を考える』とは、現場に行って事実把握し、問題を見付け、その原因を探ろうと考え、調査することです。このプロセス踏んでいれば、対策は出てしまいます。もし、このプロセスで対策がでない時は把握した事実が間違っています、現場に戻ってもう一回事実を見直せばいいのです。

 今回の事例では、事実把握=【現場で酔っぱらいを観察する】、問題発見=【ベンチに座っていた酔っぱらいが立ち上がる時、線路方向によろける】、原因追究=【ホームのベンチは設置向きが線路方向】となり、このプロセスを踏んで、正しい対策が出てきました。対策を考えず、問題を考えた結果、真の対策が出てきたのです。

 マネジメントの始祖P.F.ドラッカーが『あなたの問題は何ですか?』と問い続けた理由がよく分かります。(記事:KMAきむらマーケティング&マネジメント研究所 木村博・記事一覧を見る

関連記事