「COP22」マラケシュ会議、官民一体の取組を!

2017年1月2日 18:51

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記事提供元:エコノミックニュース

積水ハウスの石田建一氏が、COP22ビルディング・ディ「都市と住居を対象に、気候変動に対する行動の事例紹介と対話」というセッションに民間企業から唯一参加し、同社の施策・実績を発表

積水ハウスの石田建一氏が、COP22ビルディング・ディ「都市と住居を対象に、気候変動に対する行動の事例紹介と対話」というセッションに民間企業から唯一参加し、同社の施策・実績を発表[写真拡大]

 2016年11月4日、地球温暖化防止の新たな国際的な枠組み「パリ協定」が発効した。その直後である。11月7日から11月18日までモロッコ、マラケシュで開催された「国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)」マラケシュ会議と第1回締約国会議(CMA1)で、2018年までに「パリ協定」の詳細なルールを決定するとした工程表を採択。世界は化石燃料消費から離脱すべく「脱・炭素社会」に向けて大きく歩み出した。

 「パリ協定」は、2015年12月に仏・パリで開かれたCOP21で採択された。そのパリ協定が目指す目標は、「地球の気温上昇を産業革命以前に比べて2℃未満に抑える」ことで、さらに「1.5℃未満に気温上昇を抑える」ことを努力目標としている。このために、「早期の温室効果ガス排出量のピークアウトを目指し、今世紀後半には実質排出ゼロを実現する」とした。各国は温室効果ガスの自主的な排出削減計画を策定し、5年ごとに見直して内容を強化する義務をも負う。

 批准国が55カ国以上かつ批准国の温室効果ガスの排出量が世界の総排出量の55%以上に達すると、その30日後に発効するとされていたため、温室効果ガス排出量世界シェアの約40%を占める2大排出国、米国と中国が今年9月に批准したことで、各国が倣って早期批准に動き、日本政府の予想よりも早く11月4日に発効したのだ。

 日本は世界5位の温室効果ガス排出国だが、日本がパリ協定に批准したのは発効後で、しかも「COP22」マラケシュ会議開幕の翌日だった。結果、COP22に合わせて開かれた「CMA1」で日本は、議決権を持たないオブザーバー参加となった。つまり、パリ協定批准に遅れた日本政府は、温室効果ガス抑制に動く世界のトレンドを完全に読み誤ったということだ。

 今回開催された「COP22」マラケシュ会議では、さまざまなセッションが行なわれたが、そのなかで「ビルディング・ディ」と題された「都市と住居を対象に、気候変動に対する行動の事例紹介と対話」というセッションがあった。そこでは、フランスやドイツ、モロッコ、そしてセネガルの住宅関連大臣級政府関係者のほか、メキシコやフィンランドなどの行政担当者が出席。都市生活者の住居における脱・炭素社会実現に向けた会議を行なった。

 このセッション参加者で異色だったのが、日本の民間企業「積水ハウス」だ。積水ハウスは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の先進的な推進企業として同セッションに招聘され、ZEHの技術的特徴、市場の進捗状況、事例紹介などを報告した。会議では気候変動を回避するため住宅および建築物が果たす役割は大きく、さまざまな国と地域に実施されている取り組みを、具体的に政策や行動につなげることが重要だとする発言が繰り返された。

 そのセッションに参加した積水ハウスの常務執行役員環境推進部長兼温暖化防止研究所長の石田建一氏は、「我々はハウスメーカーとして既に脱炭素宣言をしている。昨年、当社で建設した戸建て住宅の7割はいわゆるZEHであり、これまでに販売したZEHによる二酸化炭素排出の削減は約10万トン/年と試算される」と語り、会議で高く評価されたという。また、同社は今後既存住宅の省エネリノベーションやマンションなどの集合住宅への取組を加速するという。

 パリ協定は締約国に5年ごとの削減目標更新を求める。COP22では、2017年5月に見直しの具体的な進め方を協議することも合意された。今回、米国やドイツ、カナダ、メキシコなどは2050年以降の温室効果ガスの排出削減目標「長期戦略」を発表した。

 日本企業の環境分野技術力は高いといわれるが、今回のCOP22をみる限り日本の地球気候変動および温暖化対策、脱・炭素社会実現への進展は遅い。グローバルなトレンドで、先行して東京都が実施する「キャップ・アンド・トレード」制度についても社会全体でどう取り組むかがまとまらない。日本政府は、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)やエコカーなどの日本の温暖化対策の強みを伸ばしつつ、今世紀後半の温室効果ガス排出実質ゼロに向け、より長期的な視点に立った施策作りを急ぐべきだろう。(編集担当:吉田恒)

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