【インタビュー】アイビーシーの加藤裕之社長に強みや今後の成長戦略を聞く

2016年12月14日 13:38

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

アイビーシー<3920>(東1部)は、ネットワーク機器・システムの稼働状況や障害発生の予兆などを監視して、情報通信ネットワークシステム全体の性能状態を容易に可視化できるネットワークシステム性能監視ツール・・・。

アイビーシー<3920>(東1部)は、ネットワーク機器・システムの稼働状況や障害発生の予兆などを監視して、情報通信ネットワークシステム全体の性能状態を容易に可視化できるネットワークシステム性能監視ツール・・・。[写真拡大]

■ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニー

 アイビーシー<3920>(東1部)は、ネットワーク機器・システムの稼働状況や障害発生の予兆などを監視して、情報通信ネットワークシステム全体の性能状態を容易に可視化できるネットワークシステム性能監視ツール(ソフトウェア)のリーディングカンパニーである。2016年10月16日に、創立15周年を迎え、11月28日には東証マザーズ上場から1年2カ月の速さで東証1部に市場変更した。同社の強みや今後の成長戦略を加藤裕之社長に聞いた。

――先ず、会社を設立された時の思いをお聞かせください

 【加藤社長】 私が当社を設立した2002年頃はソフトバンクがブロードバンドルーターを無料で配っていた。ちょうどブロードバンドという言葉が出てきたタイミングだった。私はLAN機器メーカーに8年7カ月いたので、そこでLAN機器の変遷を見てきた。その頃はメインフレームのダウンサイジングというのが大前提にあり、パソコンとメインフレームをつなぐとか、UNIXとパソコンを繋ぐみたいな世界だった。ウインドウズ95が出て以来、インターネットプロトコルがバンドルされて、バンドルされたものがパソコンの価格の下落とともに、インターネットのブラウザーの普及に伴ってどんどん普及してくる。そのようなLAN機器の普及を長年見てきた。

 そのような中で、じゃあ何をやろうかと言ったときに、マルチベンダー構成の機器を可視化するというか、性能情報とか、ルーターの入口や出口はどうなっているのかとか、ちゃんと帯域が確保されているのかどうか。それが早い遅いとかという話もあるので、ブロードバンドみたいなものが出てくると、インフラ基盤が変わるだろう、性能状態を可視化できないとサイジングもできないし、構築・設計・運用もできないのではないかと感じた。

 そのような時代背景があったので、ネットワークインフラ全体を俯瞰できる仕組を持ち、情報を把握することができる会社が生き残れるのではないかと感じていた。そこで最初はマルチベンダーの分析・解析・コンサルティングのサービスから始めた。アイビーシーという社名はインターネットワーキング・アンド・ブロードバンド・コンサルティングの頭文字をとって「IBC」としている。インターネット周りの仕事とブロードバンドのコンサルティングができると面白いねという感じであり、そこのデータを把握するのが当社の最初の動きだった。

――そういう所からスタートして今年で15年目。その間に会社は大きく変化したと思いますが、そのあたりはどう見ていますか?

 【加藤社長】 最初は商売がうまくいかなかったが、ネットワークインフラのメジャーな製品を誰でも簡単に可視化できる仕組みにするためにテンプレート化していった。自社開発でツールを作り現在では108メーカーに対応している。サーバーやネットワークセキュリティー、配電盤など、さまざまなIP化されたものを可視化する。そういった機器だとか、ソフトウェアなどを私たちは徹底的に検証して、ネットワーク系を全部押さえる、マルチベンダー対応で機種特性がわかるという点で、当初の目的通りの会社になった。最初と異なる所はプロダクトメーカーの顔が大きくなったという点だ。

 それで良かったと思っている。顧客に当社のツールを置いてきて、その中で蓄積したデータを分析・解析していくと、マルチベンダーの性能情報が把握できて、実際の機器で検証させてもらったものを製品に反映していくことができる。そして顧客データや業種別データというのを、インフラの視点で見る仕組みが出来上がった。

 考えていたネットワークインフラ系の情報を全部把握するという意味で言うと、それなりのノウハウは蓄積できている。自社開発の製品に現在108メーカーのものは全て踏襲されていて、当社にはマルチベンダー環境をいじり倒したエンジニアがいる。そのようなノウハウを持っている会社は多分当社以外に世界中探しても見つからないかも知れない。

 そうしたデータを可視化するツールをリリースして足掛け15年になる。そうすると次は情報コンテンツをどう使うかによって、パートナーやエンドユーザーとの付き合い方も変わってくる。それで変えたいと思って昨年東証マザーズに上場した。

――そうすると株式公開されて、ここまでは会社としての創業からようやく形になったという思いでしょうか、あるいはもうそこそこできあがったという思いでしょうか?

 【加藤社長】 15年経過して株式公開してもまだまだ創業と変わらない。これからだと思っている。今後SaaSやクラウドみたいな世界になると、オンプレミスの世界とクラウドの世界を両方で見て行かなければならない。併せて俯瞰できる仕組みが必要になると思う。そういう世界で私たちの活躍の場はもっと広がると思う。

 第4期目から新卒採用を行っているが、その人達も育ってきて亀の歩みでやってきた。これからは大手メーカーがやらない領域とか、まだまだこれからいける領域もあると思う。製品のブラッシュアップをもっとしていければ、次の領域が見えてくる可能性はあると思う。

――将来の成長に向けてまだまだ初期の段階だということですね。

 【加藤社長】 IoTという言葉が流行っているが、実際インターネットに繋がるものって当たり前に全てがIPである。そういう意味で言うとIP化されたもので何か見る仕組みがあれば当社は可視化できる。最近だと2016年4月、アットマークテクノ社とIoTを活用した製造ラインの統合管理ソリューションで協業した。アットマークテクノ社のIoTゲートウェイと連携し、より統合的な状態・性能監視を提供する。インターネットに繋がるプロトコルを持っているもので、可視化可能な仕組みがあれば当社は何でもできてしまう。ツールにも反映できる。あとは統計分析とか自動分析みたいな話になると、AIと協業し、そういうファンクションを入れてしまえば当社が蓄積したデータの分析も可能になる。マルチベンダーを可視化してネットにつながるものを全て俯瞰できるようになると広がる領域はたくさんある。

 広げ方はエンドユーザーの母数が増えたり、見る仕組みの精度が上がったり、分析・解析能力が上がったり、さまざまな業種に特化して可視化したりとか。そういうチャンスがあると、そこに性能情報なりデータ活用なり、データ分析ノウハウだったりの使い道はある。今は漠然とネットワークインフラとかサーバーのことを話しているが、いろいろと組み合わせがあると思う。

――そうすると貴社にはまだまだビジネス拡大余地があるということですね。それなりの先行投資も必要になりますね。

 【加藤社長】 当社は「マルチベンダー」がキーワードだ。社員に求めるのもマルチベンダー対応である。サーバーだけでも、ネットワークだけでも、シスコだけ知っている人でもだめで、エンジニアも営業も顧客の全体セキュリティを含めた課題を抽出しなければならない。領域を広く・深く知らなければならない。ツールを有効活用するための情報を、顧客からどの様に収集して、どう顧客のために提供できるかという視点で語らなければならない。プロダクトがいいから購入してくださいでは当社の営業はできない。そのための人材教育には時間を要する。

 またステージが変わると、インフラが変わり、サービス基盤が変わってくる。営業の課題も変わってくる。そういう領域で人の採用を強化しなければならない。新しい領域へのチャレンジに向けた人材の採用も必要だ。派生ビジネスやパートナー戦略でも、ソリューションを展開できなくては自社の強みを活かす仕組みもぼやけてしまう。そういうものを行う体制だったり、サービス機能だったり、サポート体制だったり、既存顧客のアップセルも含めて体制を築かないと、顧客企業との長いお付合いができない。そして後は、付加価値だ。そういう意味で今年は人材採用・教育の面で積極的に先行投資したいと思っている。

――それで今期(2017年9月期)の業績見通しは先行投資負担で減益予想となったのですね。

 【加藤社長】 そうだ。ただし増収基調に変化はない。トップライン(売上高)の成長を維持しつつ、中期成長に向けて人材採用、本社オフィス増床、新製品開発に係る動作検証環境整備のためのシステム導入など、積極的な先行投資を実施するため、今期は一時的な減益を見込んでいる。また売上、利益ともコンサバに見た数字を公表している。現状のソリューション、当社の持っている実物のプロダクトとサービスの基盤だけで今期業績予想を出しているが、何かストレッチできる面白いネタが出た瞬間に変わる可能性もある。

――中期的な成長戦略としてサービス領域拡大を掲げていらっしゃいますが、今後のビジネス展開の中で、監視ツールのライセンス販売からシステム全体の構築・運用まで広がっていくのかどうか、その戦略をお聞きかせください。

 【加藤社長】 当社はシステム全体の構築・運用を丸受けする形になるとは思っていない。ただしマルチベンダーを可視化し、そのような基盤を情報化して握っているならば、いろんな可能性がある。したがってサービス領域を広げていきたいと考えている。

 最近ではハイブリッド型クラウド系の案件が大手企業で増えている。自治体もハイブリッドクラウドみたいな感じでサービス機能を立ち上げたりしている。そういう所にツールのチャンスや、ノウハウのチャンスがある。データセンターとかサービスプロバイダー系でも、当社がやっている領域の付加価値をつけなければならない時代になってきている。当社のツールを活用して月額課金サービスを増やしていくようなことも考えられる。

 また新領域としてクラウド系インテグレーションを立ち上げる。11月に特化型クラウドインテグレーションサービス「SCI」の提供開始を発表した。ハイブリッド型クラウド全体を可視化したり、仮想系の所を可視化したりするノウハウがあるので、エビデンスを持って提案できる状況になる。そうするとクラウドインテグレーションのニーズも当然増えてくると思う。さらに将来的にはAI領域でもビジネスチャンスがあるのではと思っている。

――最後に、株主還元を含めて投資家に一言お願いいたします 。

 【加藤社長】 当社の事業ドメインであるIP全体を可視化できる会社は他に例がなく、簡単に他社には真似ができない。参入障壁は高いと思う。大企業相手のBtoBビジネスで地味な会社だが、長い目で見て堅実に成長する会社として評価いただければと思っている。また東証1部に市場変更したこともあり、株主還元策を考えていかなければならないと思っているが、今期は始まったばかりなので、半期の状況を見たうえで考えたいと思っている。

――ありがとうございました 。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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