人が他者の感情を推測する際の脳の活動を一部明らかに=NIPS高橋陽香氏ら

2015年11月11日 21:37

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実験参加者はfMRIによる脳活動の測定中に他者の顔表情を観察し、その他者がどの程度悲しいと思われるかを評定した。実験では実写画像を使用した。(生理学研究所の発表資料より)

実験参加者はfMRIによる脳活動の測定中に他者の顔表情を観察し、その他者がどの程度悲しいと思われるかを評定した。実験では実写画像を使用した。(生理学研究所の発表資料より)[写真拡大]

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  • オレンジ色の部分は、悲しみ表情と涙による相乗効果を示した脳部位を表す。内側前頭前野と楔前部・後部帯状回は、悲しみ表情と涙が統合した時に強く活動した。棒グラフは相乗効果を示した脳部位の活動量を図示している。(生理学研究所の発表資料より)

 生理学研究所(NIPS)の高橋陽香(当時、総合研究大学院大学院生)氏らの研究グループは、他者が「悲しんでいる」とヒトが推測している際に、重要な役割を担っている脳の部位を明らかにした。この成果は、「他者の感情は脳のどこで、どのように推測されているのか」を解明する上で重要な一歩として考えられるという。

 他者の気持ちを可能な限り正しく推測しようとすることは、我々が社会生活を営む上で非常に重要な能力の一つである。これまでの脳研究では、相手の感情の推測には多くの脳部位が関わることが知られていたが、他者から発せられる様々な情報を統合する際に必要な脳部位の詳細については、これまでよく分かっていなかった。

 今回の研究では、61名の健常成人女性を対象に、fMRIの計測中さまざまな他者の顔の画像を呈示し、相手の悲しさの度合いを回答してもらう実験を行った。

 その結果、悲しい表情の顔を呈示した際は、大脳皮質の内側に位置する内側前頭前野と楔前部・後部帯状回が強く活動することや、特に「悲しい表情」と「涙の描写がある場合」の間で相乗効果を示すことが明らかになった。この相乗効果は、悲しみ表情と涙の情報が統合されていることを示唆している。

 一方で、大脳皮質の外側部ではこのような相乗効果はみられず、涙の描写がある画像を呈示した際にのみ活動が確認された。これらの結果から、顔の表情と涙の描写の統合には、脳の内側部が重要な役割を果たしていると考えられる。

 精神疾患に罹患している場合、他者の感情の推測が困難になることがあるため、今回の研究成果は、対人コミュニケーションの障害を抱える様々な精神疾患の病態解明の一助となることが期待される。

 なお、この内容は「Neuroscience Research」に掲載された。論文タイトルは、「Brain networks of affective mentalizing revealed by the tear effect: the integrative role of the medial prefrontal cortex and precuneus」。

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