失われた緑を取り戻せ。日本企業、植樹活動の今

2015年4月18日 20:20

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記事提供元:エコノミックニュース

植樹活動を積極的に行う日本企業が増えている。レアアースや硫鉄鉱などの採石跡地の森林破壊が深刻な中国広州市では、山田養蜂場が日系企業としては初めて植樹活動に乗り出した

植樹活動を積極的に行う日本企業が増えている。レアアースや硫鉄鉱などの採石跡地の森林破壊が深刻な中国広州市では、山田養蜂場が日系企業としては初めて植樹活動に乗り出した[写真拡大]

 地球温暖化防止のための活動の一環として、植樹や植林の活動が盛んになっているが、木を植える目的は、何もCO2を削減するためだけではない。そもそも植樹の目的は本来、森林の保全や木材生産にある。森林を保全することは、その地域の生態系維持のほか、地盤の安定化や水資源の確保、防風、防砂など、自然災害などから人の暮らしを守ることにもつながるのだ。

 しかし、森林伐採が地球環境や生態系を破壊すると知ってもなお、なぜ人は木を伐り続け、森林はどんどん失われ続けているのか。その理由は、取りも直さず「人間が生きるため」に他ならない。木材を売って収入を得るため、森を畑に作り替えるため、森林を開拓して町を創るため、あるいはレアアースなどの鉱物を採掘するために。目的は様々だが、人は生きるために木を切りつづける。

 そこで、失われた森林を再生するために、行政だけでなく多くの民間企業も植樹活動に乗り出している。

 例えば、今や日本のみならず世界規模でショッピングモールを展開するイオン?8267?もそんな企業の一つだ。イオンの植樹活動は1991年から行われており、2013年には累計1000万本の植樹を達成している。同社では、新しい店舗がオープンする際、「イオン ふるさとの森づくり」と称し、地域住民とともに店舗の敷地内に植樹を実施しているほか、(公財)イオン環境財団による植樹活動をマレーシアはじめさまざまな国で行っている。

 また、NTTドコモ?9437?も1999年から林野庁の「法人の森林」制度と社団法人国土緑化推進機構の「緑の募金」制度や、各都道府県が実施している「企業の森づくり」サポート制度などを活用した森林整備活動「ドコモの森」づくりを、ドコモ社員、ドコモグループ社員を中心に進めており、2014年3月末現在で、全国47都道府県、50か所、野球場約152個分相当の森づくりを達成している。

 さらに、世界75カ国以上で植樹活動を行っているパナソニックは、とくに中国での植樹に力を入れており、創立100周年となる2018年までに、中国全土に100万本の植樹を行うことを目標に掲げている。2013年には、とくに砂漠化が深刻な内モンゴル自治区のオルドス市で大規模な植樹活動を行うなどの活動が話題となった。

 もちろん、これらの活動を行っているのは大企業だけではない。ローヤルゼリーなどミツバチ産品を扱う株式会社山田養蜂場も、早くから植樹による環境保護活動を積極的に行っている企業として知られており、直近でも中国広東省広州市において2015年3月19日から22日までの4日間で約1,000本の植樹を実施し、2020年までに約20万本の植樹を行う5ヵ年植樹プロジェクトをスタートさせたばかりだ。同社では、1999年より同社社員やボランティアの活動家とともに、日本国内やネパールでの植樹活動を進めており、2014年9月には内モンゴルにて累計136万328本の植樹を行う一大プロジェクトを11年越しで見事に完了させている。今回の広州市の植樹は、それに続くもので、レアアースや硫鉄鉱などの採石跡地の森林破壊が深刻な土地の植生回復を図る。これまで、現地でも何度か植樹が試みられてきたが全て失敗に終わっているという。今回、山田養蜂場は、横浜国立大学名誉教授であり、(財)地球環境戦略研究機関 国際生態学センター長でもある宮脇昭氏の指導のもと、日系企業として初めて広州での植樹に挑む。

 植樹活動といえば、一般的にはボランティアや社会貢献というイメージが強い。しかし、人や企業が生き残っていくためには、森林の存在は欠かせないものだ。どんなにハイテクな企業であっても、全ては自然環境の上に成り立っている。森を大切にする企業は、会社や商品、ひいては社員や顧客を大事に考えている企業といえるだろう。(編集担当:藤原伊織)

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