下水汚泥という“都市型バイオマス”から水素をつくる、夢の循環型エネルギー

2015年4月4日 17:54

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記事提供元:エコノミックニュース

全国のこのような大規模下水処理プラントに水素ステーションができれば燃料電池車の普及にも弾みがつく。また、下水処理プラントが発電所になる可能性を秘めている

全国のこのような大規模下水処理プラントに水素ステーションができれば燃料電池車の普及にも弾みがつく。また、下水処理プラントが発電所になる可能性を秘めている[写真拡大]

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 地球温暖化などの問題を背景に、燃料油などの化石エネルギーに代わる新たなクリーンエネルギーの開発への関心が高まっている。その代表が水素だ。その水素製造における素材として下水汚泥に注目が集まっている。果たして下水汚泥は代替エネルギーの役割を担う可能性があるのか、国内でいくつかの事例あるようだ。

 下水処理施設の汚泥から水素を製造し、燃料電池車(FCV)に供給したり、燃料電池で発電する具体的な動きがスタートしている。三菱化工機は全国で初めて汚泥を原料とした水素スタンドを福岡市で3月に開設した。国内の下水処理場の余剰エネルギーを使えば、FCV260万台分の水素が製造可能だという。都市に隠れている汚泥という「資源」が有効活用できそうなのだ。

 プラントメーカーの三菱化工機は福岡市の中部水処理センターで水素スタンドが完成し、3月31日に関係者に公開された。1日あたりの水素製造量は約3300立方メートルで燃料電池自動車(FCV)約65台分に相当する。当面は県や市が保有する公用車などが利用する見通し。下三菱化工機によると下水処理場で発生する下水汚泥は、安定的な都市型バイオマス(再生可能な有機性資源)であり、下水汚泥を消化することによって得られる下水バイオガスは、現在その約3割が未利用のままであり、その有効利用が期待されている。

 これは福岡市と九州大、三菱化工機、豊田通商による、下水バイオガスを原料とする水素を燃料自動車へ供給する世界初の取り組みの一環で、2014年度に国費約13億円をかけて建設した。今後は下水汚泥から得られる下水バイオガスを原料として水素を創出し、燃料電池自動車に水素を供給するシステムの実証事業を国土交通省・国土技術政策総合研究所の委託研究として行なう。この実績をもとに、同社の小型水素製造設備をスタンド運営会社に拡販していくという。

 この実証実験事業では、下水汚泥処理設備の消化槽より得られた下水バイオガスから、膜分離装置によりメタン濃度を上げ、精製したメタンを原料に、同社の水素発生装置「HyGeia-A」で水素を製造。この一連の設備を設計・建設し、下水バイオガスからFCVに水素を充填するまでの技術実証を行なうという。

 水処理企業大手のメタウォーターは下水処理場への燃料電池導入を進める。現在は国内5所の処理場に燃料電池を置き、バイオガスを改質した水素を使って1500キロワットの電力をつくっている。2015度末までに8カ所に増やし、発電出力を2700キロワットに高める。燃料電池による発電能力を8割増やす。

 汚泥からつくった水素を燃料に発電するシステムを導入すれば、自治体など処理場の運営事業者は電力の自給や売電が可能になる。バイオガスを燃やしタービンを回す火力発電より、燃料電池の方が効率は高い。

 東京ガスと三菱日立パワーシステムズは横浜市と組み、汚泥から水素や電気などのエネルギーをつくる研究組織を設置した。東ガスと横浜市は高濃度ガスの精製に向けた共同開発に着手しており、2020年までに水素を活用したエネルギーの供給体制を構築する。同市の施設からは年3000万立方メートルのバイオガスが生成されているが、これまで焼却炉の補助燃料に使う程度だった。

 国土交通省によると、汚泥発酵でバイオガスをつくる下水処理場は全国に約300カ所ある。1年間に生じるバイオガスのうち、約3割にあたる8500万立方メートルが活用されず空気中に放出されている。未利用ガスを水素に改質すると、約260万台のFCVをフル充填できるという。バイオガスの放出による地球温暖化も抑制でき、環境にインパクトを与えないという点でも効果がある。

 東北大学大学院の田路和幸教授らのチームも、この「下水汚泥から水素」を製造しようという研究を2003年から仙台市と提携して進めている。画期的なのは、下水汚泥に含まれる硫化水素を太陽光という無限に存在する自然エネルギーを活用して水素にするとう製造法だということ。これまでの製造法では、一度汚泥からバイオガスをつくって、それを改質して水素を得たが、田路教授らの手法は硫化水素から直接水素を得る。加えて、有害物質である硫化水素を水素の製造過程で分解し無害化してしまうという。つまり、環境の修復や資源の獲得など、大きな付加価値を持った水素製造システムなのである。ただ、この計画は、先の東日本大震災の影響で止まっている。現在、地域のエネルギー開発に忙殺、奔走しているという。

 硫化水素を分解して水素を得るシステムには、太陽エネルギーを利用できる半導体が必要だ。半導体に太陽光が照射すると、生成した電子が半導体表面に移動し、溶液中の水素イオンと還元反応して水素を発生させるという。この硫化水素からの水素製造の場合、硫黄循環システムを構築が必要だ。循環システムが無いと、発生水素と同量の硫黄が廃棄物として残る。この硫黄を循環させるために、副生成物の硫黄を下水汚泥に戻して水素の原料である硫化水素を製造するという。

 このように、下水汚泥から水素が得られるようになれば、完全な循環型エネルギーとして大きな存在となる。(編集担当:吉田恒)

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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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