自宅で手軽に透析できる「腹膜透析」 テルモが問題点を改良した新製品を発売

2014年12月19日 12:50

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記事提供元:エコノミックニュース

 日本透析医学会の統計によると、日本の透析患者は、2011年末に初めて30万人を超え、2013年末には前年より4,173人の増加し、31万4,180人となった。透析法にもいろいろな形態があるが、その中で注目されているのが腹膜透析である。これは、体内の腹膜を使って、血液を浄化するため、従来の血液透析と違い、病院で何時間もかけて透析しなくても、自宅や職場などでできる透析法である。

 しかし、腹膜透析の重要な課題として、腹膜機能の低下がある。その原因は多岐に渡り、腹膜透析液のpHもその原因の一つと考えられているという。pHを中性化することが腹膜機能への影響及び注液時の腹痛を軽減することが報告されている。このため、現在でも透析患者の4%しか行っていない。

 このような中、テルモ<4543>は12日、「ニコペリック腹膜透析液」を発売したと発表した。「ニコペリック腹膜透析液」は、イコデキストリンを浸透圧物質として含有した腹膜透析液であり、ポリプロピレン製2室容器を採用している。このため、使用時には隔壁を開通し混合して使用し、混合後のpHは6.2~6.8と中性化することができる。

 テルモは1987年から腹膜透析液および、その周辺システムを発売し、在宅医療である腹膜透析を「患者さんにやさしい」を目指して製品開発を進めてきた。その中で2000年に国内で初めて中性化腹膜透析液「ミッドペリックL」を発売した。「ニコペリック腹膜透析液」もその技術を応用し、2室容器を用いることで中性化もの。同剤含め、テルモの腹膜透析液はすべて中性化された品揃えとなるという。

 前述の日本透析医学会の集計によると、透析患者は毎年増加し続けており、2011年末には初めて30万人を超えた。これまでは、日本の他にも米国、欧州などの先進国に集中していたが、今後中国をはじめとした新興国でも増加が予想されているという。今回のような改良が進めば、人工透析はそれほど苦痛なものではなくなり、多くの人の負担が軽減される。今後の展開に期待したい。(編集担当:慶尾六郎)

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