【水素・燃料電池関連銘柄特集(4)】課題の水素インフラ・サプライチェーン整備に向けた動きも加速

2014年1月22日 13:58

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■「水素社会」では日本の力が爆発、関連有望銘柄多数

  水素は高価格のうえに着火しやすく爆発の危険性もあるため、燃料電池自動車(FCV)や家庭用燃料電池の普及に向けては、水素製造の低コスト化、FCV車両や燃料電池の低コスト化、車載用タンクや水素吸蔵合金などの小型・軽量・高性能化、安全で低コストの貯蔵・輸送方法の開発・実用化、現在のガソリンスタンドに相当する水素ステーションや水素貯蔵設備など水素インフラの低コストでの建設・整備、さらに規制の見直しなどが課題とされている。水素は同じ走行距離に換算した価格がガソリンの2倍以上で、水素ステーションの建設費は1カ所当たり3~5億円とされている。

  水素を貯蔵・輸送する方法としては、水素製造工場から水素専用パイプラインで供給する、気体の水素を高圧で圧縮して金属や炭素繊維製の専用タンクに貯蔵する、セ氏マイナス253度まで冷やした液化水素の状態にして専用トレーラーで輸送する、水素を蓄える性質を持つ合金(水素吸蔵合金)を利用するなどの方法があるが、いずれもコストなどの面で普及が難しいとされている。

  しかし上記のような課題に対して最近は、有機ケミカルハイドライド法という技術を使って、水素を安全・大量に貯蔵・輸送できる水素インフラ・サプライチェーン(大規模水素貯蔵・輸送システム)を整備しようという動きが加速している。有機ケミカルハイドライド法というのは、水素をトルエンに化学的に固定(水素化反応)し、常温・常圧の液体化学品であるメチルシクロヘキサン(MCH)に変換して貯蔵・輸送する技術だ。FCVへの充填など実際に使用する場所で再び水素を取り出して(脱水素反応)使用する。

  有機ケミカルハイドライド法では、液化水素のような極低温技術を必要とせず、MCHとして常温・常圧の安全な条件での長期間・大量貯蔵が可能となるため、貯蔵や輸送に関して通常のタンカー、タンクローリー、ガソリンスタンドなど既存の石油系インフラを活用できる。液体にして体積を小さくするため貯蔵・輸送コストも下げることができる。他の方法に比べて総合的な水素供給コストが安くなり、水素を安全・大量に貯蔵・輸送する技術として最も実用化に近い方法とされている。

  これまでは脱水素反応を安定的に行うプロセスが課題とされてきたが、千代田化工建設 <6366> は工業的に利用できる新規の脱水素触媒を開発し、パイロットプラントによる脱水素プロセスの実証運転を行っていたが、13年5月に所期の性能を確認することができたと発表している。さらに13年6月には川崎市と、新たな水素大量貯蔵・輸送技術を活用した「水素社会の実現に向けた連携・協力に関する包括協定」を締結している。

  JX <5020> もFCV向け低コストの水素供給体制の構築を目指している。現在は自社生産の気体水素を高圧圧縮して専用トレーラーで貯蔵・輸送しているが、MCHに転換して常温・常圧の液体の状態で既存のトレーラーを使って水素ステーションに輸送する。液化することで高強度の炭素繊維製ボンベや爆発を防ぐ設備が不要になり、既存のトレーラーやタンクを転用できるため水素ステーション建設費用を削減できる。FCVが普及期に入る20年をメドに液体輸送を使った供給網の整備を始めるようだ。

【水素エネルギー関連銘柄一覧】

 国際石油開発帝石 <1605> 、関電工 <1942> 、東洋紡 <3101> 、東レ <3402> 、旭化成 <3407> 、昭和電工 <4004> 、大陽日酸 <4091> 、カネカ <4118> 、三菱ガス化学 <4182> 、三菱ケミカルホールディングス <4188> 、積水化学工業 <4204> 、東洋インキSCホールディングス <4634> 、昭和シェル石油 <5002> 、コスモ石油 <5007> 、出光興産 <5019> 、JX <5020> 、旭硝子 <5201> 、東海カーボン <5301> 、TOTO <5332> 、日本ガイシ <5333> 、日本特殊陶業 <5334> 、新日鐵住金 <5401> 、神戸製鋼所 <5406> 、JFEホールディングス <5411> 、愛知製鋼 <5482> 、日本製鋼所 <5631> 、三菱マテリアル <5711> 、JFEコンテイナー <5907> 、ノーリツ <5943> 、長府製作所 <5946> 、中国工業 <5974> 、豊田自動織機 <6201> 、三菱化工機 <6331> 、千代田化工建設 <6366> 、栗田工業 <6370> 、日立製作所 <6501> 、東芝 <6502> 、富士電機 <6504> 、NEC <6701> 、パナソニック <6752> 、デンソー <6902> 、ローム <6963> 、京セラ <6971> 、村田製作所 <6981> 、日立造船 <7004> 、三菱重工業 <7011> 、川崎重工業 <7012> 、IHI <7013> 、日産自動車 <7201> 、トヨタ自動車 <7203> 、日野自動車 <7205> 、NOK <7240> 、アイシン精機 <7259> 、マツダ <7261> 、ダイハツ工業 <7262> 、ホンダ <7267> 、スズキ <7269> 、ヤマハ発動機 <7272> 、豊田通商 <8015> 、岩谷産業 <8088> 、ミツウロコグループ <8131> 、伊藤忠エネクス <8133> 、オリックス <8591> 、東京電力 <9501> 、中部電力 <9502> 、関西電力 <9503> 、東京ガス <9531> 、大阪ガス <9532> 、東邦ガス <9533> 、西部ガス <9536> 、京葉瓦斯 <9539> 、静岡ガス <9543> 、ソフトバンク <9984> など (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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