中国は“我慢”している? 防空識別圏問題で戦術変化か

2013年11月28日 18:30

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記事提供元:NewSphere

 中国は23日、尖閣諸島上空を含む新たな防空識別圏を設定した、と発表した。同国の防空識別圏を通過する場合には、事前に飛行計画を報告し、飛行にあたっては送受信兼用の無線機を備え、国をはっきりと識別できる印を機体に記すよう求めている。指示に従わない機体に対しては、「緊急の防衛的手段を講じる」としている。

 日本と同盟国アメリカはこれを認めず、国家間の緊張が高まっている。26日には、アメリカのB52爆撃機2機が、中国の定めた防空識別圏内を事前通報なしに飛行した。

【防空識別圏とは?】

 防空識別圏とは、一般的に各国の領空の外に設定される緩衝空域を指す。日本の防空識別圏は、1945年にGHQが制定した空域をそのまま引き継いだものだ。

 専門家によると、防空識別圏は各国が一方的に設定するもので、法的根拠はないという(CNN)。敵機の可能性がある機体が領空に侵入する前に、警戒することが目的だという。

 ただ、中国の新しい防空識別圏では、領空への侵入が故意であろうとなかろうと、区別なく対処するとしている。これは、他国の認識と異なるようだ。ジョン・ケリー米国務長官は、「アメリカは、自国領空に他国の機体が不作為に入ってしまった場合、防衛的手段を講じない。アメリカは中国に、中国領空を通過する判別できない、あるいは中国政府の指示に従わない機体に対して、威嚇行動を実行しないよう求める」と冷静な対応を求めた。

【中国は日米の挑発へ我慢している、と示唆か】

 中国国防省は、新しい防空識別圏は特定の国に対して向けられたものではない、と説明した。また中国国営新華社通信の記者は、他国の防空識別圏は、「中国が主張できない間に、先に決めてしまったものだ」と発言した。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、防空識別圏の設定は、中国にとって、現在の領有権を素早く拡大する画期的な方策だ、と報じている。

 さらに同紙は、言論統制された国内メディアから情報を得る、中国国民の目線を推測している。26日のアメリカ爆撃機による中国設定の圏内飛行は、本質的問題の印象を弱め、意味のない挑発に発展するかもしれない、と指摘した。現に中国政府は、日本とアメリカの「侵入行為」への自国の対応が、非常な扇動に対する最大限の我慢をしているとの立場を示す様子だという。

【日米は中国に強く反発】

 日本は24日、中国の発表を「全く有効なものではない」と認めない姿勢を明らかにした。岸田文雄外務大臣は、中国の行動は、「東シナ海の現状を一方的に変えようとする非常に危険なもので、近隣諸国との関係を悪化させ、予期せぬ事態を招くことになるかもしれない」と述べた。

 アメリカは、中国の決定を、尖閣諸島領有権問題というよりも、国際的な領空権の問題として注視しているようだ、とCNNは報じている。ケリー長官は、「飛行の自由や、海上と航空などの国際的法の適用は、太平洋地域の繁栄と安定、安全を維持するために重要だ」と述べた。

 また、チャック・ヘーゲル米国防長官は27日、アメリカ爆撃機の飛行は、中国を挑発するものではなく、地域の安定と現状を確実にしようという同盟国としての協力関係を確認した、と説明したという(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

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