『熱帯夜の夢』シナリオで猛暑関連株が浮上も、材料株をリード=浅妻昭治

2013年8月12日 09:55

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  40.7度・・・・・・8月10日、高知県四万十市、山梨県甲府市で記録した最高気温である。これに加えて、両観測地点を含めて4地点が、2007年8月以来、6年ぶりに40度を超えたとテレビ、新聞が伝えた。人間の体温を上回る猛暑であり、ジッとしているだけでも汗の流れが止まらないどころか、服を着たまま熱い風呂につかっているようなものだ。全国で1700人を上回る人が、熱中症の疑いで緊急搬送されたというのも当然だろう。暦の上ではとっくに立秋を過ぎて秋のはずが、季節を逆撫でするような猛暑のブリ返しは、何とも皮肉だ。

■猛暑関連人気一巡も40度越す気温で再登場へ

  この記録的な猛暑は、夏枯れ中の株式相場にとっての買い材料提供となる可能性がありそうだ。というのも、気象情報のエキスパート(専門家)から、気になる話を聞き込んだからである。猛暑が、東北地方を同時に襲った集中豪雨などの異常気象とともに、コメの今後の作況に大きく影響してくるというのである。民間調査会社の予測では、13年産のコメの作況指数は、「平年並み」の100となっており、現実に前週末9日には、コメ卸の木徳神糧 <2700> (JQS)も、需給緩和を要因に今12月期業績を下方修正したばかりだが、事によると、これからの作況の悪化であのタイ米の緊急輸入が、世情を騒がせた1993年のコメ不足の再来も懸念されるというのである。

  しかもこの猛暑は、世界的な異常気象を背景にしているだけに、日本のみにとどまらない深刻さがあるという。なかでも先行き不安視されるのが、中国との指摘であった。中国では、8月9日に発表した消費者物価指数が、猛暑の影響による野菜価格の上昇を主要因に17カ月連続の前年同月比プラスとなったが、これがさらに穀物収穫量、食料自給率にまで波及する可能性があり、それでなくても格差解消、腐敗撲滅が政治課題となっている発足早々の習近平体制下、新たな社会不安、政治問題にまで発展する恐れさえあるというのである。

  ここから先は、この異常気象の専門家情報をさらに想像を逞しくして拡大解釈したシナリオである。さしずめシェイクスピアの『真夏の夜の夢』ならぬ、寝付けないままの妄想した「熱帯夜の夢」ということだ。今年6月に米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席の米中首脳会議が行われたが、このウラの主要議題が何であったかという話である。折が折だっただけに、中国のシャドーバンクなどのバブル退治に伴う金融問題への協力要請があったのではないかと推測しているが、もしかして、中国の農産物凶作による食料安全保障問題にも言及があったのでないかと類推してみるのである。もちろん、中国に食料安全保障問題が発生した場合の米国への農産物緊急輸出の協力要請である。ここまで世界的な異常気象が、グローバルな政治問題に発展するとすれば、関連株が、材料株相場の一角に浮上するのではないかと、拡大解釈シナリオを捻り出したくなるわけである。

  お盆休み中、お盆明け後の9月相場は、市場参加者の多くがバカナンス入りして閑散相場を余儀なくされる展開が目に見えている。外部環境も、9月17日~18日のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)で量的金融緩和の早期縮小が打ち出されたのか、国内では、消費税増税論議が高まり、さら唯一の頼りの安倍晋三首相が「成長戦略国会」と位置付けた臨時国会の開会も10月まで待たなくはならないなど、トレンド決定要因の空白期が続く。内部環境も、3月期決算の第1四半期(4~6月期、1Q)決算の発表が一巡して、勢い材料株のヒット・アンド・ウエーが強まりそうなムードにある。

  材料株のテーマ株としては、市場統合による需給好転思惑で旧大証第1部単独上場株銘柄が、なお買い物を集め、9月に開催都市が決定する2020年のオリンピック関連株にも矛先が向きそうだが、これだけでは役者不足である。やや勢いを失った3Dプンター関連株やiPS細胞関連のバイオ株、ゲーム関連の新興市場株などのリバイバルも含め、その一角の有力候補として、交渉が本格化するTPP(環太平洋経済連携協定)の関税撤廃問題も絡んで、猛暑関連株が浮上することを期待してみたいのである。

  ちょうど8月11日付けの日本経済新聞の1面トップには、ローソン <2651> 、セブン&アイ・ホールディングス <3382> 、エイチ・ツー・オー リテイリング <8242> 、イオン <8267> 、平和堂 <8276> の流通大手が、全国で大型農場を展開すると報道もされている。この流通大手株や業績を下方修正した木徳神糧や、同社と同業のヤマタネ <9305> などのコメ卸株が、どう動くか見極めたうえで、「熱帯夜の夢」シナリオにアプローチしてみるところだろう。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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