日立造船と住友化学、津波被害農地の修復技術を確立

2012年12月13日 10:51

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 日立造船と住友化学は、津波により塩害や微細がれき(ビニール、金属片、木片など)混入の被害を受けた農地の修復に向け、2011年11月から宮城県亘理郡亘理町の水田において実証実験を行ってきたが、今回、農地修復技術を確立したと、12日に発表した。

 東日本大震災による津波で被災した農地は、海水による塩害の影響だけでなく、津波によって運ばれた堆積物(土砂)や微細がれきの効率的な除去が困難なことから修復が遅れている。

 今回の取り組みでは、洗浄分級技術により水田から回収した土砂中の塩分と微細がれきを除去する実験と、地表の高さや作土層の違いをGPSを利用して高精度に計測しながら土砂の回収や戻し入れを行う実験を行った。なお、洗浄分級技術とは、洗浄と分級(対象物を粒子径の大きさに応じて分離すること)を一度に行うことが可能な技術。

 また、塩分と微細がれきを除去して戻した土砂を施肥などにより作付けに適する状態に修復させ、今年5月から稲の生育試験を行ったところ、10月に収穫した米は品質・食味ともに問題のないことを確認しているという。

 実証実験は、日立造船が土砂の回収や除塩、微細がれきの除去を行い、住友化学が土壌診断、施肥設計および生育試験を担当した。日立造船は、高精度に地表や潮位等を測定することができるGPS事業を展開しているほか、洗浄分級技術を用いた土壌浄化に優れたノウハウを有しており、住友化学は、農薬や肥料の事業を通じて培ってきた土壌診断や施肥方法に豊富な知見がある。今回の実証実験はこうした両社の強みを生かして取り組んだもの。

 今後は、両社協力のもと、亘理町も含めた被災地において今回確立した農地修復技術を生かした活動を展開し、被災地の農業の一日も早い復興に積極的に貢献していく。

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