三菱化学とパイオニア、長寿命・高効率を達成した有機EL照明を開発 量産化へ

2012年6月5日 11:36

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有機EL照明パネルにおける「シングルユニット」と「マルチユニット」の違い(画像:三菱化学)

有機EL照明パネルにおける「シングルユニット」と「マルチユニット」の違い(画像:三菱化学)[写真拡大]

 三菱化学とパイオニアは4日、発光層を塗布プロセスで成膜した有機EL素子の開発に成功し、併せて量産技術の確立に向けた検証設備の設置を決定したと発表した。

 現在有機EL照明パネルは、「蒸着」成膜プロセスによる製造が一般的であり、発光性能を上げるため発光層を複層化する(マルチユニット)など、複雑な構造となっている。しかし、面積が広く、欠陥の少ない均一発光面のパネルを低コストで量産するためには「塗布」成膜プロセスでの製造が優れていると考えられており、中でも、有機EL照明パネルの性能に大きく影響し、材料費が高額な発光層を塗布プロセスで成膜することが強く求められていたが、これまで開発されたものは発光効率や寿命が照明用としては不十分だった。

 これに対し、三菱化学とその研究開発子会社である三菱化学科学技術研究センター(所在地:神奈川県横浜市)およびパイオニアは、2010年1月より、塗布成膜プロセスによるシンプルなシングルユニット構造の有機EL照明パネルの共同開発を進めてきた。そして、今回開発に成功した有機EL素子(白色型およびフルカラー調色型)では、三菱化学が開発した塗布成膜プロセス用の独自の発光材料の使用と、両社が共同で素子設計および塗布成膜プロセスを最適化することで、照明として実用レベルの長寿命と高効率化を達成した。

 具体的には、白色輝度1,000cd/m2における輝度70%寿命として、白色型で「5.7万時間」という長寿命を達成し、発光効率についても、フルカラー調色型の2,000cd/m2で「56lm/W」という高効率化を実現している。

 これらの成果を踏まえ、三菱化学とパイオニアは、塗布成膜プロセスによるシングルユニット発光層の有機EL照明パネルの量産技術確立に向けて、検証設備の設置を決定。同設備では、G1ガラス基板サイズ(40cm×30cm)での塗布成膜プロセスによる有機EL照明パネルの試作と性能評価が可能であり、量産技術の開発と検証を目的としている。

 同検証設備は、今夏からの稼働に向け、東北パイオニア(パイオニア100%子会社、本社:山形県天童市)の米沢事業所内(所在地:山形県米沢市)に設置する予定。併せてパイオニアは、昨年7月に稼働を開始した有機EL照明パネルの量産設備を増強する。

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