日立、電力を水素に変換して備蓄できる風力発電機利用水素発電システムを受注

2011年11月8日 09:50

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MCHを利用したエネルギー備蓄・回収システムの概念図(画像提供:日立製作所)

MCHを利用したエネルギー備蓄・回収システムの概念図(画像提供:日立製作所) [写真拡大]

 日立製作所は7日、大学共同利用機関 情報・システム研究機構 国立極地研究所より、風力発電機利用水素発電システム一式を受注したと発表した。

 今回受注した風力発電機利用水素発電システムは、風力発電で得られた電力を水素に変換して備蓄し、必要なときに電力として取り出すシステムで、発電電力の変動が大きい再生可能エネルギーを安定的に供給することができる。同システムは、2011年11月から2012年3月まで、秋田県にかほ市において風力発電機と接続して稼動し、南極昭和基地におけるエネルギー自給率向上のための基礎データ取得に活用される予定。

 現在、南極昭和基地では、ディーゼル発電機で発電した電力を、各種観測機器の運用および生活用の電力源として使用している。南極観測に必要な物資は、南極観測船「しらせ」により輸送されるが、これらの物資のうち、ディーゼル発電や車両用の燃料が総輸送量の約半分を占めている。今後、さらなる発電燃料消費量の増大に対しては、必要な燃料輸送に限界があるため、将来の燃料不足対策の一案として風力発電や太陽光発電など再生可能な自然エネルギーを利用することが必要となっている。しかし、自然エネルギーは時間や季節による発電量の変動が大きいため、効率的に備蓄し、安定的に再利用(回収)するシステムが求められていた。

 日立はこれまで、風力発電など発電電力の変動が大きい再生可能エネルギーを平準化し、安定的に供給する手段として、電力を水素に変換して備蓄し、必要なときに水素あるいは電力として取り出すことができるシステムの開発に取り組んできた。

 今回受注した風力発電機利用水素発電システムは、(1)発電電力の変動が大きい風力発電でも効率よく水素生成が可能な「水素製造システム」、(2)生成した水素を有機化合物であるトルエンに固着させ常温・常圧の液体であるメチルシクロヘキサン(Methyl Cyclo Hexane/以下、MCH)の形態で貯蔵する「備蓄システム」、(3)貯蔵したMCHから必要なときに水素を取り出し、水素混合ディーゼル発電機で発電する「回収システム」から構成されている。

 MCHは、取扱分類がガソリンと同等の第4類第1石油類のため、タンクローリーやガソリンスタンドなど既存のインフラを活用し、水素を輸送・貯蔵することができる。さらに、備蓄エネルギー量はタンク容量に比例するため、大容量のエネルギー備蓄が低コストで実現可能。

 日立は今回の受注を契機に、燃料移送が困難・割高となる離島や極地、マイクログリッドなどにおいて、再生可能エネルギーから安定したエネルギーを供給し、CO2の削減に貢献するシステムとして、MCH利用の普及拡大を目指していくという。

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