現代を生き抜くためのノウハウ満載!中小企業IT活用実践手法:第5回 IT導入時の投資対効果算定の考え方

2011年3月24日 18:21

印刷

■IT導入時の投資対効果について
 IT導入時の投資対効果について、中小企業経営者の方々は非常に難しい判断と感じていられると思います。

 そもそも、ITが企業の経営力を向上すると考える経営者が少ないもの原因の一つですが、ITベンダーは自社のITツールの宣伝ばかりでIT投資による経営的効果についての説明が少なく、且つ経営者の方々でもわかる平易な言葉で説明できる人材が不足していることも事実です。そこで、今回、中小企業向けのITコンサルタントとして活動している筆者が非常にシンプルなにIT導入時の投資対効果の考え方について紹介します。

 まず、こんな例は如何でしょうか?読者の皆さまもご一緒にお考えください。

例題1:経営課題として売上減少に悩まれている中小企業が100万円のIT投資(たとえばホームページ作成料)で1年間に200万円の利益を向上すれば、このIT投資は成功といえるでしょうか?

例題2:経営課題としてコスト削減で悩まれている中小企業が在庫コスト増加でキャッシュフローが悪化しているので200万円のIT投資(たとえば在庫管理パッケージソフト)で1年間に300万円分の在庫コストを削減すれば、このIT投資は成功といえるでしょうか?

 この2つの例題は実際の中小企業で非常に多いパターンです。読者の皆さまにも当てはまるのではないでしょうか?

■短期的な視点と中長期的な視点のダブル効果を目指す!
 さて答えです・・・・・!?
 当然、直近の経営課題に対しIT投資を行った結果、利益やコスト削減で100万づつ多く回収しているわけですので短期的な視点としては半分正しい判断ですが、中長期的な視点では半分は間違った判断です。

 なぜ半分間違った判断なのか?ですが、本来のIT投資の目的は目の前の短期の経営課題を解決することよりも、中長期の経営力向上を行うことが最も重要です。

 筆者の私は実際に多くの中小企業経営者の方々の経営課題についての考え方を聞かせて頂くたびに、非常に厳しい経営環境の中で必死に良い製品や顧客重視の経営をされている企業にお逢いできる機会があります。しかし、反面、ITを有効活用して短期の経営課題を解決することは無論、同時に中長期で経営力を向上しようとする企業が少ないと常々感じています。

 その際、IT導入時の投資対効果の考え方を、短期視点の「投資=効果」も重要ですが、中長期の視点の「投資×効果」の考え方が重要ですとお伝えしています。その際に長期的な視点に関して前回に紹介した「投資対効果を明確化するためのIT化サイクルの4象限」の中で自社が最も緊急に対応しなければならない象限を検討し、その後、長期的にIT投資計画を作り実行することが重要となります。

■中小企業のIT活用の手本「IT経営力大賞」を参考に
 昨今、全国の中小企業で経営戦略を中核にしたIT戦略に合わせて短期と中長期の視点でITを有効に利用・活用し経営力向上を実現している企業も増加しています。

 経済産業省ではこのような企業を「中小企業IT経営力大賞」と称して、関係機関の共催・協力のもとに平成19年度に創設された表彰制度を設けています。中小企業IT経営力大賞認定企業とは優れたIT経営を実現し、かつ他の中小企業がIT経営に取り組む際の参考となるような中小企業や組織に贈られます。
http://www.it-partnership.jp/award/index.html

 筆者はこの過去3年間、多くのIT経営力大賞認定企業のご支援をさせて頂きました。今後は、IT投資対効果を最大化するためにIT経営力大賞受賞企業の事例なども参考にされてIT導入時の投資対効果の考え方を自社なりの整理をされることをお勧めいたします。

 では、次回は『IT導入の失敗しない社内体制とその対応方法』にについてお話していきましょう。是非、お楽しみに!!

著者プロフィール

阿部 満

阿部 満(あべ・みつる) ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社 代表社員

ITの利用・活用を軸として経営コンサルティング、研修講師活動を行う。専門はビジョン策定、経営戦略策定、マーケティング戦略策定、IT戦略及びIT導入プロジェクトマネージメントなど。
IT経営可視化戦略(産業能率大学出版部)、IT経営実践の知識(同友館)など著書多数。
会社URL:http://www.bridge-rac.com/

記事の先頭に戻る

関連記事