中国経済の実態・進出事例から考えるこれからの中国ビジネス戦略 :第1回 中国経済の概況と規模感

2011年2月2日 14:23

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 政府では13億人の人口を抱え、8%成長を続けるといわれる中国。
 しかし、一方では貧富の格差拡大し、民族紛争、ストライキも噴出もテレビや雑誌のニュースでご覧になった方も多いでしょう。

 既に進出されている方も、これから進出を検討されている方にもお役に立てるように、中国経済の実態・進出事例などを見ながら対中国ビジネスチャンスを探りましょう。


■日本の人口減少と13億人の中国

 日本は、少子化の影響で2005年から既に人口減少に入り、不景気の様相も含めて需要が低下しています。東証一部上場企業では、リーマンショックによる落ち込みから既に回復基調にあるといわれるものの、その殆どが貿易による収益で、日本国内では需要の落ち込みとデフレ傾向が漂い、2010年7月までに連続17ヶ月消費者物価も下落しています。

 しかし、東京・秋葉原の電気街で炊飯器を一人で5個も6個も両脇に抱えて買う姿、北海道や富士山などを訪れる中国人観光客の姿をテレビで見たこともあるのではないでしょうか。

 中国人が日本に来るには、観光の場合では団体旅行しか認められていなかったものの、2009年7月からは年収25万人民元(約312万円)以上や中国でマンションを所有している場合は、個人でも観光ビザが認められるようになり、更に、2010年7月からは年収6万人民元(約75万円)以上、大企業で課長職以上、クレジットカードのゴールドカードを持っていること等に条件が緩和されたことなどから、中国人観光客で日本に来る人たちが増えているのです。

 日本の人口は2010年8月1日の総務省推計で1億2739万人、対する中国は2009年末では13億3474万人で、中間層だけでも約4億人といわれ、日本政府も観光庁が旗振り役を勤めながら、観光客の増大による消費も期待しているところ。

 日系の炊飯器メーカーも中国進出しているものの、日本で買った方が品質が良いと、日本(120V)と中国(240V)では電圧も異なるので、電圧機を用意してまで家族や親戚の分まで炊飯器を持って帰ったり、銀座のデパートで僅か20分ぐらいの滞在時間のうちに30~50万円ほども高級ブランド品を買い込んでいく中国人の消費意欲を見る限り、狙いが当たったといえるでしょう。

 尖閣諸島問題以降、中国人の個人旅行は減ったという旅行会社などや、レアアースなどでの輸出制限もあるものの、中国富裕層でもM&A投資や会社経営者の反応としては、「政治とビジネスは異なる」と気にしていないともいわれてもいます。

 いずれにしても、中国の影響を無視できなくなったとはいえるでしょう。


■中国の所得と購買意欲

 年収6万人民元(約75万円)という数字を見て、「これでも中間層なのか?」と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。

 中国では政治の中心は首都がある北京ながら、経済の中心は上海。2010年に改定となった最低賃金をみると北京は960人民元(約1.2万円)でも、上海は1120人民元(約1.4万円)と上海の方が賃金水準も物価も高い状態です(表1)。

 日本では最低賃金を適用する企業は少ないですが、中国の製造業で新任の工場労働者では最低賃金通りとされることも多いもの。地方都市からの出稼ぎ労働者は、最低賃金であっても残業手当で貯金を蓄えて、2~5年ほどで故郷に戻っていきますが、次から次に上海や北京、広州などの大都市に出稼ぎ労働者が押し寄せて工場の労働力を担っています。

 上海での平均賃金を見てみると2009年で約3566人民元(約44575円)ですが(表2)、上海の中心部に近いヤオハン(中国名:第一八百伴)から徒歩10分程度の2DKマンションの家賃は3000人民元(約36500円)程度。しかし、中国では男女共働きが多く、地方からの結婚前の出稼ぎ労働者は2DKの部屋に3~4人でルームシェアをして高い家賃を賄っていることもよく見られます。

 中国は不動産バブルということもよく経済ニュースに出ますが、中国では土地所有権は無いものの、マンションの投機・転売で価格が上昇しすぎている為、政府も2件目を購入する場合は頭金が5割必要などとする政策を打ち出して不動産高騰を抑え込んでいます。ですが、結婚前にマンションを購入するのが男性の条件と見られているなど、実需としてもマンション購入人気は高止まりしています。


(表1.中国地域別賃金 1人民元=12.5円で計算。2009年はリーマンショックの影響で最低賃金を凍結)


(表2.上海市平均賃金 1人民元=12.5円で計算)

 身近で人気があるものとしては携帯電話。先に記した通り、上海の最低賃金は1120人民元ながら、携帯電話端末の値段は安いものでも850人民元程で、普通のものでも1500~2500人民元、高いものでは4000人民元を越えるものもあるものの、最低賃金の工場労働者でも2000人民元程の携帯電話を購入するのがよく見られます。

 また、中国では縁起稼ぎをする人も多いものですが、漢数字の八(はち)が末広がりという事で縁起が良い数字とされている為、携帯電話の番号末尾8桁が全て8の番号を98万人民元(約1225万円)で売られていたり、宝くじでも1等の賞金が、なんと3億人民元(約37.5億円)と桁が違うのも中国でしょうか。

 リーマンショック後の経済対策でも4兆元(約54兆円)を即座に打ち出せるのは、共産党による1党体制だから出来るともいえるでしょう。


 次回は、中国経済の実態を更に掘り下げて、中国ビジネスや株式投資などチャンスを探ってみましょう。

著者プロフィール

今村 健太郎

今村 健太郎(いまむら・けんたろう) 株式会社ビジネス忠臣蔵 代表取締役、日本および中国ビジネスコンサルタント

経営戦略と人材活性、法務を柱に日本及び中国での事業運営を支援。創業・異分野進出・事業再生・海外進出まで、日・中の弁護士事務所とも連携をとりながら幅広くサポート。
執筆暦:雑誌『近代中小企業』コラム、『SMBC China Monthly』など
株式会社ビジネス忠臣蔵 Webサイト http://tyuushingura.jp

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