【話題】消費者金融大手「武富士」を破綻させた真の原因とは何か?!

2010年10月20日 17:51

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【「武富士」は社員雇用前提に100%減資覚悟の判断へ】

■真の破綻原因は何か!

  9月28日、消費者金融大手武富士が東京地裁に会社更生法の適用を申請した。武富士は何が原因で破綻にまで追い込まれたのか!

  近年、消費者金融業界を崩壊の危機に陥れてきたのは「過払い金」返還という厳しい現実がたった。そのきっかけこそ2006年1月の最高裁判決だ。

  というのも、この判決が出る以前は、借り手が任意で支払う利息には利息制限法の上限を超える年15~20%の金利が認められていたのだが、最高裁は判決で、契約書の内容に「返済が滞れば、期限の利益を損失する」、つまり返済が遅れれば、一括返済を求めることがあるとの文言を逆手にとって、出資法内金利(29.2%)を無効にする判断を下したのだ。

  その結果、この判例を根拠にした過払い金返還請求が膨大に膨れ上がり、消費者金融各社の大きな負担になっていたのである。

  武富士に限らず、同一条件におかれている立場で考える時、問題となるのは、正式な契約に基づいて判決以前に支払った金利について、過去に遡って返還請求できるという判決がでるというのは前代未聞のことであって異常な状態だ。

  判決以降の事例を対象とするならともかく、判例を盾に過去に訴求するのは、借り手の責任(消費者の責任)を無視した偏った判断だ。

  特に、問題ある判例を「一律に当てはめ」例外なく過払い返還請求に対応するよう強行していることで、際限なく過払い金を増大させ、一つの産業を消滅に追い込んでしまうスキームは納得いくものではあるまい。

  一定のルール下で企業活動を行ってきた実績を無視した「企業活動の自由を奪う」重大な悪質判例とでもいわなければ誰しも釈然としないのではなかろうか。

■何もせず、責任逃れ優先行政

  今年4月に盛岡の元貸金業者のユニワードが国に対し国家賠償の請求をしている。これは、法律や金融当局の行政指導に従っていたにもかかわらず返還請求で多額の損失を被ったのは不当として、すでに返還した過払い金など少なくとも約3億円の賠償を求めた。

  過払い金返還で業者による国家賠償請求は初めてのケースであり、大手の消費者金融も追随する可能性がある。

  元貸金業者のユニワード゛は、これまで実際に返還した過払い金と、元本の削減で相殺した分の賠償を求めている。これは2006年1月の最高裁の判決以降、金融行政がこの判決に右へ習えの行政指導をしたことに対する訴訟だ。

  つまり、消費者金融は昭和40年代から国民の需要に支えられるかたちで産業として成長してきた。消費者金融各社も銀行などの金融機関と同様、行政当局の金融検査を受けてきた。

  しかし、その間に過払い金返還について行政指導した例は一度もないという。言い換えれば、行政当局も出資法金利を認めてきたといえる。

  重要なことは、判決後の行政指導で「過去に訴求する部分を無効」としていたとすれば今日のような事態は生じなかったとは考えられないだろうか?

■財務状況の推移が示す「過払い負担の急増」

  武富士の財務状況の推移を見るとき、過払い金の増加とともに資金繰りが悪化していった様子が容易にわかる。月間の過払い金の支払いが100億円を超えていたのだ。

  もし、最高裁判決がなければ、武富士は現在も通常の企業経営を行っていただろう。これでは、経営責任は問えない事情さえ浮き上がる。

  こう見ると、行政の無策が生んだ悲劇となるが、あまりにも大きな悲劇だ。

  武富士関係者によると創業家出身の武井健晃元副社長は最後の願いとして「社員の雇用のために」と、大株主として100%減資覚悟の判断を下したという。責任を果たす者、果たさぬ者、今後の貸金業界の動向から当分目が離せない。(金融ウォッチャー)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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