静岡ガス Research Memo(3):都市ガス販売量は業界4位、電力・不動産など多様な事業を手掛ける
*11:03JST 静岡ガス Research Memo(3):都市ガス販売量は業界4位、電力・不動産など多様な事業を手掛ける
■事業概要
静岡ガス<9543>グループは主力のガス事業のほか幅広い事業を手掛けており、報告セグメントとして、ガス事業、LPG・その他エネルギー事業がある。このほか、報告セグメントに含まれない事業を「その他」に区分しており、くらしサービス、エンジニアリングサービスなどが含まれる。セグメントのうち、主力のガス事業が連結売上高の8割弱を占めており、ガス販売量では都市ガス事業者として業界4位(2025年度のガス販売量。出所:各社決算短信)の規模を持つ。
1. ガス事業
都市ガス事業は同社グループの中核事業であり、同社はガスの供給、販売及びLNGの販売を行っている。連結子会社の清水エル・エヌ・ジーがガスの製造を担い、同社から原料となるLNG及びLPGを仕入れてガスを製造し、全量を同社に販売している。都市ガス事業を担う連結子会社には、静岡県東部の御殿場ガス(株)、下田ガス(株)、同西部の中遠ガス(株)、袋井ガス(株)、島田ガス(株)のほか、山梨県の吉田ガス(株)、長野県の信州ガス(株)、新潟県の佐渡ガス(株)がある。このうち中遠ガス、袋井ガス、島田ガス、御殿場ガスは同社パイプラインを通じてガスの卸供給を受けている。
また、静岡県西部や関東甲信越までつながる他社パイプラインと接続して広域的なガス供給網を形成しており、関連会社では持分法適用関連会社(サーラエナジーとの折半出資会社)の静浜パイプライン(株)が同社から委託を受けてガスの輸送を行うほか、持分法非適用関連会社(出資比率は中部電力<9502>40%、サーラグループ40%、同社20%)の南遠州パイプライン(株)が、同社からガスの卸供給を受けてガスを供給、販売している。パイプラインを接続している東京ガス、INPEXとは緊急時にガスを相互融通する協定を結んでおり、安定的にエネルギーを確保する体制も整えている。海外では、米国、インド、シンガポールに現地法人子会社を設立して事業を展開している。
連結のガス販売量を時系列で見ると、国内外の景気動向や冬場の気温等による変動は見られるが、全体としておおむね安定的に推移している。用途別では、静岡県東部を中心にエネルギー多消費型産業の大口需要家が多いことや、他社パイプラインと接続して広域的なガス供給網を形成して卸供給していることから、同業他社と比較して家庭用の割合が相対的に低い点に特徴がある。工業用では、顧客が一定程度分散されており、国内外の景気動向等に起因する需要変動はあるものの、総じて安定的な推移が期待できる。一方、家庭用は中長期的に見ると人口減少等を背景に販売数量も緩やかな減少が想定されるが、全体に占める割合が相対的に低いこともあり、影響はおおむね限定的と見られる。また、卸供給では供給先との契約見直し等による影響も含めて、当面大きな変動要因は見当たらない。
LNG基地である袖師基地の運営は清水エル・エヌ・ジーが担っており、広域的なガス供給網を形成するうえでの中核会社である。同基地は1996年7月から営業を開始しており、3基のLNGタンク(1号タンク82,900kL、2号タンク94,300kL、3号タンク160,000kL)を敷設して、約34万kLのLNG貯蔵能力を持つ。LNGの調達は長期契約が主体であり、スポットへの依存度は低い。長期契約は主にマレーシアやオーストラリア、パプアニューギニア等から調達しており、中東情勢の直接的な影響は想定されず、現状では相応の競争力を持つ調達ができていると推察される。
なお、電力・ガスシステム改革の一環として、2017年4月からガスの小売全面自由化が実施され、都市ガス市場には電力やLPガス等の事業者が新規参入するなど、競争環境が変化している。こうした環境下においても、同社は強みである「実需を起点としたバリューチェーン」を生かした事業運営を進め、都市ガス事業を中心に安定的な収益を確保している。
2. LPG・その他エネルギー事業
LPGでは、連結子会社の静岡ガスエネルギー(株)がLPGの販売及びこれに付随する機器販売並びに配管工事を行うほか、親会社及び一部の都市ガス子会社にLPGを卸売している。親会社及び一部の都市ガス子会社は付随事業としてLPGの販売も行っている。
電力では、連結子会社の静岡ガス&パワー(株)が、主に小売電気事業、発電事業に取り組んでいる。富士発電所がガスエンジン発電設備を有しており、親会社から発電の燃料となるガスを仕入れ、親会社に電力を販売している。2024年度の電源構成は、ガス火力26%、日本卸電力取引所38%、水力9%、FIT電気4%などとなっている。
3. その他
その他には、主にくらしサービス事業やエンジニアリングサービス事業が含まれている。
同社及び都市ガスの連結子会社が、ガス配管工事の施工及びガス機器の販売を行うほか、連結子会社の静岡ガス・エンジニアリング(株)が、清水エル・エヌ・ジーのガス設備などを含めて、ガス設備の保全、ガス工事及び空調工事等を行っている。
また、連結子会社の静岡ガスリビング(株)が、住宅設備の販売・施工販売及びリフォーム事業等を行い、連結子会社のグッドリビングが注文住宅及び建売住宅の設計・施工・販売等を行っている。加えて、連結子会社のエネリア静岡(株)及びエネリア東部(株)が、ガス機器の販売及びリフォーム事業、同社のガス配管工事及び保安業務を同社から受託している。
このほか、連結子会社を通じてリース業、保険代理業、介護関連事業など多様な事業を手掛けている。
4. 同社の特長
同社の大きな特徴として、まず高い財務健全性を維持していることが挙げられる。実需を起点とした都市ガス・LPG・電力のバリューチェーンを保有していることによって、財務健全性の維持が高い信用力につながり、社債を含む資金調達面で競争力を有する。また、現預金残高が有利子負債残高を上回る実質無借金を継続しており、今後の負債調達拡大を含めて、投資余力が大きいことも強みと言える。このほか、他社パイプラインと接続して広域的なガス供給網を形成して卸供給していることもあり、ガス販売量で業界4位(2025年度のガス販売量)の規模を持ち、一定の規模のメリットを享受できていると推察される。LNG調達の競争力は規模の影響を受けやすく、同社単独では一定の限界があるため、良好な関係にある東京ガスやPETRONAS LNGなどからの調達等を活用して競争力を確保している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 古川 聖治)《HN》
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