FPA降下による環境負荷低減とその高い実用性を定期航空便において世界で初めて実証

プレスリリース発表元企業:株式会社NABLA Mobility

配信日時: 2023-01-30 19:15:28

株式会社 NABLA Mobility(東京都新宿区 代表取締役社長:田中辰治 以下、NABLA Mobility)、国立大学法人東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻 土屋・伊藤研究室(東京都文京区 以下、東大航空 土屋・伊藤研究室)、Peach Aviation株式会社(大阪府泉南郡、代表取締役 CEO:森健明 以下、Peach)は、産学連携の取り組みにおいてFPA(Fixed-flight Path Angle)降下による航空機運航の環境負荷低減とその高い実用性を実機による定期運航路線において世界で初めて実証したことをお知らせいたします。



世界的にカーボンニュートラルが推進される中、我が国においても航空分野のCO2削減(※1)が注目されています。今回の取り組みでは、東大航空、NABLA MobilityがPeachの運航データをもとにそれぞれの強みを活かして環境負荷低減を実現するためのFPA降下による継続降下の実証研究を行って参りました。

降下時の燃費改善手法として、航空機が巡航の降下開始点から継続的に降下するCDO (Continuous Descent Operation、以下、CDO)が既に運用されていますが、CDOは到着便が降下時に機体重量・風・気温、機種特性などを基に計算した最も燃料効率の良い垂直経路で降下することから、一便毎に降下軌道が異なります。このことからCDOは管制官の指示による従来の降下方式と比べ燃料削減効果は高いものの、安全確保のため関西国際空港など、3空港の夜間・早朝の輻湊機の少ない時間帯に限り導入されており、実施数は限定的に留まっています。

今回実証されたFPA降下は、一定の降下角により管制上指定される高度制約を満たし、かつ垂直降下経路を明確化および統一化するものです。これらの特徴から環境負荷低減と管制運用の両立が可能になることが期待されており、本連携でもフライトシミュレータを用いた試験において、一定高度以上のエンルート空域におけるFPA降下により従来の降下方式に比べ約190lb/便という高い環境負荷低減効果とパイロットの操作性・ワークロードに問題ないことを確認しています。


[画像1: https://prtimes.jp/i/95656/6/resize/d95656-6-f3d8c7ae2e3fdf5052d5-0.jpg ]


FPA降下の概念図 (TOD:水平巡航飛行からの降下開始の点)


また2022年12月7日から17日間、APJ220便(那覇発、関西国際空港行)において、現行のCDO実施時間外の継続降下実証飛行としてエンルート空域におけるFPA降下実証飛行を実施し、15便でFPA降下を完遂し、期待されていた環境負荷低減の効果が確認できました。尚、当該FPA降下の定期航空便における実証は世界初の取組みとなります。


[画像2: https://prtimes.jp/i/95656/6/resize/d95656-6-25be52528f958f227e3b-1.jpg ]


当該実証飛行がFPA降下を実施した飛行経路


今後、試験結果の分析を進めるとともに、より広範な適用が可能になる様に、運航方法やそれを支えるツールに関しても改善検討を進めて参ります。NABLA Mobility・東大航空 土屋・伊藤研究室およびPeachは連携取組開始を通じ、航空業界に期待される抜本的な脱炭素にかかるプロダクト開発および施策の本実装を産学の連携で加速させます。


【NABLA Mobilityについて(www.nabla-mobility.com)】
NABLA Mobilityは、航空機業界の効率改善、地球全体の脱炭素に貢献するソリューションをAIや航空機運航に関わるあらゆるデータを活用して提供する2021年4月に設立されたスタートアップ企業です。
FPA降下 の実運用化に向け、Peach Aviation 株式会社および東大航空 土屋・伊藤研究室との共同プロジェクトを企画して実現し、産学連携と運航支援アプリの開発を主導しています。

【東大航空 土屋・伊藤研究室について(www.flight.t.u-tokyo.ac.jp)】
東大航空 土屋・伊藤研究室は、航空機・宇宙機の飛行力学制御を含めて人と航空機が協調して環境を守る航空交通管理の仕組みを創る研究を行っています。FPA降下は東京大学 伊藤教授がNASA Ames研究所でのスティーブ・グリーン博士らとの議論から着想を得たもので(※2)、混雑空域を飛行する民間旅客機を対象に、機材を改修せずにFPA降下を実現するために、パイロットおよび管制官のワークロードと燃料消費量を削減する運用について研究しています。(※3, ※4, ※5)

【Peach について(www.flypeach.com)】
Peach は、2012 年 3 月に関西国際空港を拠点として運航を開始しました。新千歳、仙台、成田、中部、関西、福岡、那覇の 7 ヵ所を拠点空港として、国内線 31路線、国際線 18 路線を運航しています。
今回の実証においては、航空機運航の専門知識と技術提供を行い、関西国際空港に到着する定期運航路線においてFPA降下の実証実験を実現しています。


※1 令和3年度 国土交通省 航空分野におけるCO2削減の取組状況
https://www.mlit.go.jp/common/001403136.pdf
※2 伊藤恵理, 「空の旅を科学する」, 河出書房新社, 2016年9月.
※3 伊藤恵理 他, “フルフライトシミュレータによる降下角を固定した継続降下運行の評価”, 日本航空宇宙学会論文集 64(1), pp.50-57, 2016.
※4 Eri Itoh, etc., “Evaluating energy-saving arrivals of wide-body passenger aircraft via flight-simulator experiments”, Journal of Aircraft, 55(6), pp.2427-2443, 2018
※5 Eri Itoh, etc., “Feasibility study on fixed flight-path angle descent for wide-body passenger aircraft”, CEAS Aeronautical Journal, 10, pp.589-612, 2019.

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