イカットの魅力とその背景にある島の人々の生活文化をたばこと塩の博物館で1月21日(土)~4月9日(日)開催

プレスリリース発表元企業:たばこと塩の博物館

配信日時: 2023-01-18 10:00:00

Photo.01 腰衣(婚資)レンバタ島ラマレラ村 1,330×740mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃 *マンタの文様が入っている

Photo.02 腰衣(婚資) レンバタ島ラマレラ村 1,975×690mm 木綿/絣/藍・茜 1970年頃 *船、マンタの文様が入っている

Photo.03 腰衣(婚資) レンバタ島アタデイ郡 2,250×664mm 木綿/絣/藍・茜 1970年頃 *人物の文様が入っている。

たばこと塩の博物館では、2023年1月21日(土)から4月9日(日)まで、「江上幹幸コレクション インドネシアの絣・イカット ~クジラと塩の織りなす布の物語~」を開催します。
インドネシアでは、地域ごとに色彩も意匠もさまざまな絣織り(イカット)が織られています。民族考古学を専門とする江上幹幸氏(元 沖縄国際大学教授)は、製塩や交易をテーマに長年に渡り東部インドネシアで調査してきました。本展では、江上氏の研究成果とコレクションを3部構成でご紹介します。
第1部では、江上氏の主な調査フィールドであるレンバタ島で蒐集したイカット約20点をご紹介します。レンバタ島のイカットは、伝統捕鯨で得たクジラ肉や塩、染料に必要な石灰など“海の恵み”を持つ「海の民」と、農産物や染料になる藍や茜など“山の恵み”を持つ「山の民」との交易なくしては生まれません。
第2部では、「海の民」がすむラマレラ村を中心に、レンバタ島のイカットの背景にある暮らしと交易にスポットをあてます。イカットの制作工程や、塩・石灰など交易品の生産、伝統捕鯨、それらに基づいて機能する交易システムについて、江上氏と共同研究者である小島曠太郎氏(文筆家・捕鯨文化研究家)による写真などで解説します。さらに、イカット制作に不可欠なだけでなく、生活の様々な場面で重用されるヤシ利用の文化についても写真と実物資料で紹介します。
第3部では、多くの島からなる広大なインドネシアのうち、フローレス島とその東の島々やティモール島西部で江上氏が蒐集してきたイカット約30点を展示し、その多彩なデザインをお楽しみいただきます。
布としての魅力を備えたイカット約50点のほか、多くの民族資料や写真を通して、インドネシア・レンバタ島ラマレラ村の素朴で力強い生活文化についてお伝えします。


■開催概要
名称 : 「江上幹幸コレクション インドネシアの絣・イカット ~クジラと塩の織りなす布の物語~」
ヨミ : エガミトモココレクション インドネシアノカスリ・
イカット クジラトシオノオリナスヌノノモノガタリ
会期 : 2023年1月21日(土)~4月9日(日)
会場 : たばこと塩の博物館 2階特別展示室
主催 : たばこと塩の博物館
所在地 : 東京都墨田区横川1-16-3(とうきょうスカイツリー駅から徒歩約10分)
電話 : 03-3622-8801
FAX : 03-3622-8807
URL : https://www.tabashio.jp
入館料 : 大人・大学生:100円
満65歳以上の方(要証明書):50円
小・中・高校生:50円
開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 : 月曜日


■展示の詳細と作品紹介
第1部:レンバタ島のイカット
レンバタ島のイカットは、「海の民」と「山の民」とが物々交換によって制作に必要な材料を補い合うことで成り立っています。全工程が手作業でつくられるイカットは、日常着・祭礼着として暮らしの中に息づき、結納品(婚資)としても重要なものになっています。レンバタ島のイカットは、一見すると地味ですが、深い色合いの茜と藍で染められ、伝統的な意匠であるマンタのほか、人物の意匠などもみられます。

【レンバタ島・「海の民」のイカット】
「海の民」は他島から移住してきた人々です。男性は伝統捕鯨を担い、女性は製塩や石灰づくりなどの海辺の仕事のほか「山の民」との交易を担っています。繊維素材や染料となる植物を持たない「海の民」は、「山の民」との交易で得た綿から糸を紡ぎ、藍・茜などで染め、イカットを織ります。広いインドネシアの中でも、捕鯨や漁業を営む人々がイカットを織る例は他にみられません。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_1.jpg
Photo.01 腰衣(婚資)レンバタ島ラマレラ村 1,330×740mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃 *マンタの文様が入っている
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_2.jpg
Photo.02 腰衣(婚資) レンバタ島ラマレラ村 1,975×690mm 木綿/絣/藍・茜 1970年頃 *船、マンタの文様が入っている

【レンバタ島・「山の民」のイカット】
「山の民」は主に焼畑農業を営むレンバタ島の先住民です。もともとイカットの技術を持っていたと考えられます。綿、藍、茜などイカットに必要な素材は自ら産出しますが、藍染に不可欠な石灰は「海の民」との交易でまかなっています。「山の民」の中にはイカットづくりが禁止された地域があり、そこには「海の民」がつくったイカットが交易品として供給されています。イカットを身にまとって暮らすのは「海の民」と同様で、婚資用の特別なイカットを制作している地域もあります。

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_3.jpg
Photo.03 腰衣(婚資) レンバタ島アタデイ郡 2,250×664mm 木綿/絣/藍・茜 1970年頃 *人物の文様が入っている。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_4.jpg
Photo.04 腰衣(婚資) レンバタ島アタデイ郡 2,660×588mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃

第2部:レンバタ島のイカットを生み出す生活文化
ラマレラ村のイカットは、伝統捕鯨で得たクジラ肉、自らつくった塩、石灰など“海の恵み”を持つラマレラ村の「海の民」と、主食の農産物に加え染料となる藍や茜など“山の恵み”を持つ「山の民」の交易で生まれます。
この章では、イカットをはじめ、塩、石灰など交易品の制作工程、さらに最も重要な交易品であるクジラ肉を得るための伝統捕鯨、それらの交易品を物々交換する「山の民」との交易について、江上氏と小島氏による写真を用いて解説します。

画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_5.jpg
Photo.05 イカット作りのようす(撮影:江上幹幸)
綿繰り機で綿の繊維を取り出す。

画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_6.jpg
Photo.06 イカット作りのようす(撮影:江上幹幸)

紡錘で、糸に紡ぐ。歩きながら紡ぐ姿もよくみられる。

画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_7.jpg
Photo.07 イカット作りのようす(撮影:江上幹幸)

染めずに文様にするところをヤシの葉で括り、防染する。

画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_8.jpg
Photo.09 イカット作りのようす(撮影:江上幹幸)

括りをほどいた「絣糸」と、他の色糸を経糸にして後帯機で織る。

【製塩】
周辺地域での需要のほとんどを「海の民」の女性が作る塩でまかなうほか、クジラの獲れない時期の大切な交易品となります。

画像9: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_9.jpg
Photo.10 ラマレラ村の製塩のようす(撮影:江上幹幸)

海岸の岩の上にある、灰や石灰で区切られた浅い蒸発池で海水を濃縮する。濃縮海水を持ち帰り、鉄鍋で煮つめて、塩の結晶を得る。

画像10: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_10.jpg
Photo.12 ラマレラ村の製塩のようす(撮影:江上幹幸)

とれた塩をカゴに移して苦汁を切る。

【伝統捕鯨】
ラマレラ村では全長10メートルの木造帆船「プレダン」に10~13人ほどの「海の民」の漁師が乗り、手漕ぎで漁を行います。捕獲には手投げの銛を使います。マッコウクジラの漁には様々なタブーがあり、分配法も厳密に決められています。

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Photo.13 伝統捕鯨のようす (撮影:江上幹幸)
画像12: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_12.jpg
Photo.14 捕鯨船プレダン 1/10模型 (船大工手製) レンバタ島ラマレラ村 高さ1,030×長さ830 ×奥行き330mm 木・ゲバンヤシ・木綿・軟鉄 1980年頃


【交易】
レンバタ島ラマレラ村「海の民」の女性は、クジラ肉、塩、石灰などを持って、行商や定期市に出かけ、「山の民」との物々交換で、主食となる農産物のほか、綿や染料などイカットの材料を手に入れます。

画像13: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_13.jpg
Photo.16 クジラ肉と農産物の物々交換(撮影:小島曠太郎)

【ヤシ利用】
インドネシアには何種類ものヤシがみられ、人々は用途ごとに使い分けて重用しています。イカット防染用の括り紐をはじめ、ヤシ酒、たばこの巻紙、たばこ容器やキンマ容器、塩づくりや石灰用のカゴ、捕鯨の際の船の帆など、ヤシは暮らしのあらゆる場面で利用されています。

画像14: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_14.jpg
Photo.17 たばこ容器 ティモール島 左から 90×50/93×50/78×45mm ロンタールヤシの葉・紡績糸・布・ビーズ/編み 1980年頃
画像15: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_15.jpg
Photo.18 キンマ容器 ティモール島 108×136mm ロンタールヤシの葉・紡績糸・ビーズ・コイン/編み 1970年頃

第3部:インドネシア東部のさまざまなイカット
江上氏は、研究テーマのひとつである「巨石記念物」調査の一環として、1980年代後半から30年以上歩き続けたインドネシア東部の村々で、少しずつイカットを蒐集してきました。「巨石記念物」を残す調査地には、必ず島ごと、地域ごとに異なる染織物の文化がありました。ここでは江上氏が民族考古学調査を通じて、レンバタ島以外で出会い、蒐集してきた魅力的なイカットの中から一部をご紹介します。

【フローレス島やその東側諸島のイカット】
村や地域によって文様や色合いに特徴があります。

画像16: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_16.jpg
Photo.19 腰衣(婚資) フローレス島イレマンディリ郡 1,700×620mm 木綿・貝/絣/藍・茜 1970年頃 *幾何学模様と点描で構成されている。
画像17: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_17.jpg
Photo.20 腰衣(晴着) アロール島北西アロール郡 1,400×708mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃 *ウミガメの文様が入っている

【ティモール島西部のイカット】
布の図柄と織り技法の豊富さに特徴があります。

画像18: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_18.jpg
Photo.21 腰衣 ティモール島ベル県 1,611×584mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃 *人やウマ、ワニの文様が入っている
画像19: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_19.jpg
Photo.22 腰衣 ティモール島南ビボキ郡 2,116×514mm 木綿・紡績糸・ビーズ/絣・緯紋織/藍・茜 1970年頃 *鉤の文様が入っている
画像20: https://www.atpress.ne.jp/releases/341925/LL_img_341925_20.jpg
Photo.23 腰巻 ティモール島西アマヌバン郡1,804×1,024mm 木綿・紡績糸/絣/藍・茜・ウコン 1980年頃 *ワニの文様が入っている。

■江上幹幸コレクションについて
江上幹幸氏(元 沖縄国際大学教授)は民族考古学者として、沖縄~インドネシアをフィールドに製塩技術や巨石記念物などを研究してきました。インドネシアではフローレス島やその東側諸島、ティモール島を中心に古くから残る基層文化を調査し、その過程で出会ったイカットを蒐集するうち、1,000点に及ぶコレクションになりました。
江上氏の所蔵するイカットは、作品そのものだけでなく、その背景にある伝統捕鯨や製塩、交易といった生活文化まで一体で蒐集された稀有なコレクションといえます。このコレクションは「アトリエ・バレオ」と名付けた沖縄の自宅で保管・展示しています。


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