くすりの窓口は最高値更新の展開、26年3月期も2桁増益で増配予想、ストック収益拡大が業績を牽引

2025年6月9日 07:46

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 くすりの窓口<5592>(東証グロース)は、調剤薬局・ドラッグストア・医療機関・介護施設等のヘルスケアテック領域においてソリューションを提供している。26年3月期も2桁増益で増配予想としている。ストック売上高、ストック粗利が順調に拡大する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて最高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■調剤薬局等のヘルスケアテック領域でソリューションを提供

 同社は調剤薬局・ドラッグストア・医療機関・介護施設等のヘルスケアテック領域においてソリューションを提供している。光通信<9435>の子会社で様々な店舗のネット予約サービスを展開するEPARKの調剤薬局部門として事業開始(15年8月)し、その後は「医・薬・介護、個人ユーザー(患者)をつなぐプラットフォーム」として、調剤薬局・ドラッグストア・医療機関・介護施設・患者等の様々なニーズを捉えた独自事業を自社開発して業容を拡大している。

 事業区分は、メディア事業(薬局検索予約ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」運営や電子お薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」などの提供)、みんなのお薬箱事業(独自事業として開始した薬局不動在庫売買プラットフォーム、薬局の医薬品仕入価格交渉を代行する「仕入サポートサービス」、医薬品在庫管理・自動発注システム「eオーダーシステム」などの提供)、基幹システム事業(医療機関・調剤薬局・介護施設に必要な事務処理システムや情報システムなどの提供)としている。

 事業収益は、薬局等から得られる初期導入費用等のショット売上、および月額利用料・手数料収入等のストック売上である。なお同社は各事業の業績に関する重要経営指標を、ストック売上高およびストック売上高に対するストック粗利としている。継続的な収益が見込まれるストックビジネスを戦略的に重視し、ストック収益の最大化を図るとともに、ストック収益の顧客基盤から得られるデータを蓄積・活用し、顧客ニーズを捉えた高付加価値サービスの開発につなげている。その結果、ストック売上の積み上げにより高収益構造となっていることが特長だ。

 25年3月期の事業別売上高はメディア事業が44億07百万円、みんなのお薬箱事業が31億27百万円、基幹システム事業が35億54百万円で、同社が重要指標としているストック売上高はメディア事業が30億54百万円、みんなのお薬箱事業が26億65百万円、基幹システム事業が15億13百万円、ストック売上比率はメディア事業が69%、みんなのお薬箱事業が85%、基幹システム事業が43%、ストック粗利はメディア事業が12億30百万円、みんなのお薬箱事業が13億04百万円、基幹システム事業が6億16百万円だった。

■メディア事業

 メディア事業は「医療と患者をつなぐプラットフォーム」をコンセプトとして、患者の利便性、薬局の効率性・生産性の向上を目的としたサービスを提供している。

 主力サービスは、国内最大級の薬局・ドラッグストア検索予約ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」と、患者のお薬情報等を確認でき、飲み忘れ防止のためのアラーム発信機能等も有する電子お薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」である。いずれのサイト・アプリからも処方箋ネット受付・受取予約サービスを利用できる。

 事業収益は、処方箋ネット予約に係る手数料収入(患者からの初回予約時に当該患者に係る初回登録手数料が発生し、その後は初回よりも金額を抑えた手数料が当該患者に係る登録管理料として毎月継続)である。アプリ「EPARKお薬手帳」では直接的な収益が発生しないが、いつも利用する薬局をかかりつけ登録できる等の機能により、薬局を検索することなく処方薬の受取予約ができるため、ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」の利用促進・リピートにつなげる役割を担っている。

 さらに、検索上位に表示される「EPARKくすりの窓口リッチプラン」、患者のリピート促進に特化した顧客管理システム「Pharmacy Support」、患者がネット予約した薬局店舗に薬の在庫がない場合等にグループ近隣店舗の在庫状況を一元管理できる「AI stock」機能など、様々なニーズに対応して継続的に既存サービスの機能強化や新サービスの開発を推進している。

 25年3月期末時点の主要KPIとして、ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」の施設保有(導入店舗)数は2万2368店舗、全国の薬局店舗数約6万店舗に占める同社シェア(同社調べ)は約37.3%、アプリ「EPARKお薬手帳」のダウンロード数は616.5万件、25年3月期の予約数は603.6万件となった。

 なお25年1月には、救急往診やオンライン診療の利用者の窓口となる医療プラットフォームを運営するファストドクターと業務提携した。ファストドクターのプラットフォームを利用してオンライン診療を受けた患者が、医師からオンラインで受け取った処方箋をポータルサイト「EPARKくすりの窓口」対応店舗へ送信することにより、診療から処方という一連のプロセスをオンラインで完結できるサービスを提供(事業開始25年4月予定)する。

 25年2月にはウィーズ(E―BONDホールディングスの子会社、みんなのお薬箱事業で24年11月に業務提携)の全国400店舗超の調剤薬局がポータルサイト「EPARKくすりの窓口」導入店舗となった。25年4月にはサンキュードラッグが北九州エリアを中心に展開している61店舗の調剤薬局・ドラッグストアがポータルサイト「EPARKくすりの窓口」導入店舗になった。25年5月にはファーマライズホールディングスのグループ会社であるファーマライズの調剤薬局・ドラッグストア227店舗およびヘルシーワークの調剤薬局33店舗が「EPARKくすりの窓口」導入店舗となった。また、利便性向上に向けてマンション・商業施設等への処方箋受付機の導入拡大も推進しており、25年4月につなぐネットコミュニケーションズ、25年5月に日本調剤、イオン東北とそれぞれ連携した。

■みんなのお薬箱事業

 みんなのお薬箱事業は「医薬品卸と薬局をつなぐプラットフォーム」をコンセプトとして、医薬品卸売事業者と薬局における医薬品流通の改善を支援するサービスを提供している。

 主力サービスは、薬局・医療機関に代わって医薬品卸売事業者に対する医薬品仕入価格交渉を代行する「仕入サポートサービス」、薬局・医療機関における医薬品在庫管理・AIを活用した自動発注システム「eオーダーシステム」、および医薬品売買ニーズマッチングサイト・アプリ「みんなのお薬箱」である。

 価格交渉代行「仕入サポートサービス」は、スケールメリットを享受することを目的としたスキームで、事業収益は薬局等と医薬品卸売事業者との間の医薬品売買における取引薬価・売買価格に応じて算定される手数料収入(ストック売上)となる。なお調剤薬局大手のE―BONDホールディングスの子会社ウィーズと業務提携(24年11月)し、これまで医薬品卸事業者と価格交渉を行ってきたグローバル・エイチの株式を譲渡(25年4月)して持分法適用関連会社から除外した。ウィーズが医薬品二次卸として培ってきたノウハウを活かした「仕入サポートサービス」に一本化する。

 在庫管理・自動発注「eオーダーシステム」は、薬局等における過剰在庫抑制・欠品防止や薬剤師の事務負担軽減などの効果を目指し、薬局等のレセプトコンピュータと連携させ、AIを活用して必要な医薬品の種類と量を判断して自動発注する。事業収益は初期導入費用(ショット売上)およびシステム利用料収入(ストック売上)となる。

 医薬品売買ニーズマッチングサイト・アプリ「みんなのお薬箱」は、全国の薬局の不動在庫(デッドストック)の有効利用を目的として、処方されずに不動在庫となった医薬品を売りたい薬局と、不足している医薬品を買いたい薬局の売買を仲介するサービスである。事業収益は売買が成立した医薬品の薬価に応じた手数料収入(ストック売上)となる。

 25年3月期末時点の主要KPIとして、価格交渉代行「仕入サポートサービス」とマッチングサイト・アプリ「みんなのお薬箱」の合計施設保有(導入店舗)数は1万7901店舗、全国の薬局と医療機関の合計約17万施設に占める同社シェア(同社調べ)は約10.4%となった。また25年3月期の流通総額は2245億36百万円だった。

■基幹システム事業

 基幹システム事業は「医科、薬局、介護のデータ連携プラットフォーム」をコンセプトとして、医療機関・薬局・介護施設に必要な事務処理システムや情報システムなどを提供している。

 主な商品は、調剤薬局向けとして子会社モイネットシステムのオールインワンレセコン「Pharmy」、ハイブリッジの電子薬歴システム「Hi―story」、同社(24年8月に同社がキューブイメージングを吸収合併)の調剤監査システム「Cube.i」など、医療機関向けとしてエーシーエスの医事会計・オーダリング・電子カルテシステム「HOSPITAC」、メディカルJSPのクリニック向け電子カルテシステム「Ex―Karte」、同社(24年11月に同社がホスピタルヘルスケアを吸収合併)の外来受診支援アプリ「スマートガイドシステム」など、介護施設向けとして同社の電子介護記録システム「コメットケア」などである。

 事業収益は初期導入費用等のショット売上と保守料収入のストック売上である。なお当事業は他の事業に比べて、システムの新規導入に伴う初期導入費用等のショット売上の構成比が高くなるため、新規導入数の変動が業績変動の要因となる。

 25年3月期末時点の主要KPIとして、施設保有(導入施設)数は合計8048施設(内訳は薬局が5312施設、介護が2234施設、医科が502施設)となった。

■中期経営計画

 同社は中期経営計画として、30年3月期のストック売上高200億円、営業利益50億円以上を目標値に掲げている。ショット売上は状況によって変動があるため、3事業(メディア事業、みんなのお薬箱事業、基幹システム事業)において、高付加価値サービス提供などにより各々の市場シェアを拡大してストック売上を積み上げるほか、各サービス間および各事業間のシナジーも創出して増収・増益を確実にする仕組を構築する。

 重点戦略としては、顧客基盤拡大として30年3月期までに10万施設導入(24年3月期末時点で調剤薬局・介護施設・医療機関合計3万8795施設)を目指すほか、3事業で蓄積されたデータを活用し、新規事業(未病予防関連としての健康保険組合加盟数・特定保健指導実施数の拡大、治験関連企業との連携による治験者募集など)の育成にも注力する方針だ。なお治験関連領域は25年2月末時点で5社(24年7月トライアドジャパン、24年8月インクロム、24年11月メディメイト、EPLink、25年2月シミックヘルスケア・インスティテュート)と提携済みである。

■26年3月期2桁増益で増配予想

 26年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比9.8%増の123億円、営業利益が12.6%増の22億円、経常利益が10.0%増の21億35百万円、親会社株主帰属当期純利益が10.1%増の22億40百万円としている。配当予想は前期比3円増配の30円(期末一括)としている。予想配当性向は15.0%となる。

 2桁増益で増配予想としている。前期の特需(基幹システム事業において補助金対象となった子会社モイネットの電子処方箋管理サービスの新機能が業績に大きく貢献)の反動を考慮しているが、この影響を除くベースでは15%増収、33%営業増益の見込みとしている。ストック売上高、ストック粗利が順調に拡大する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は最高値更新の展開

 なお25年3月末時点でグロース市場における上場維持基準のうち流通株式比率が不適合となったため、25年5月14日付で上場維持基準適合に向けた計画を策定・公表した。同社株式の71.98%を保有する大株主上位3名に対して、売却等の対応について協議を開始しているほか、積極的なIR活動等によって流通株式比率を改善し、上場維持基準への適合を実現する計画を進める。

 また6月24日開催予定の第21期定時株主総会における承認を条件に、25年9月1日を効力発生日(予定)として資本金の額を減少し、減少する資本金の額の全部をその他資本剰余金に振り替える。純資産の部における勘定科目間の振替処理のため純資産額および発行済株式総数の変動はない。

 株価は水準を切り上げて最高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。6月6日終値は2789円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS199円59銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約1.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS753円05銭で算出)は約3.7倍、そして時価総額は約313億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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