建設技術研究所は2月の上場来高値に接近、23年12月期1Q増収増益と順調、通期減益予想据え置きだが保守的

2023年5月22日 14:07

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 建設技術研究所<9621>(東証プライム)は総合建設コンサルタントの大手である。23年4月には設立60周年を迎えた。さらなる成長戦略として、グローバルインフラソリューショングループとしての飛躍を目指すとともに、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現にも取り組んでいる。23年12月期第1四半期は増収増益と順調だった。国内は国土強靭化等で堅調に推移した。海外はアジア市場が改善傾向だった。通期予想は据え置いた。市場環境は良好だが先行投資の影響などで減益予想としている。ただし保守的だろう。防災・減災・インフラ老朽化対策など国土強靭化関連で事業環境は良好である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて2月の上場来高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■総合建設コンサルタント大手

 総合建設コンサルタントの大手である。23年4月には設立60周年を迎えた。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持ち、22年12月期には環境総合リサーチを新規連結した。海外は、建設技研インターナショナルが東南アジア、英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)が英国を中心に展開している。

 22年12月期のセグメント別の業績は、国内建設コンサルティング事業の受注高が21年12月期比0.8%減の581億91百万円、売上高が8.3%増の581億60百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が14.1%増の68億85百万円、海外建設コンサルティング事業の受注高が7.4%増の276億96百万円、売上高が22.3%増の253億25百万円、セグメント利益が18.8%増の11億31百万円だった。

 公共事業への依存度が高く、国内の分野別受注高構成比は流域・国土が36%、交通・都市が32%、環境・社会が26%、建設マネジメントが6%だった。新規連結の環境総合リサーチも寄与して環境・社会分野が拡大基調となっている。

 海外では建設技研インターナショナルが大型案件を受注(22年3月にクボタ建設、神鋼環境ソリューション、北九州ウォーターサービス、TECインターナショナルと構成するコンソーシアムでカンボジア王国カンダール州タクマウ市におけるタクウマ上水道拡張計画を受注)し、英国Waterman Group Plcの業績も大幅拡大した。コロナ禍の影響がほぼ解消した。

■グローバルインフラソリューショングループ目指す

 グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標数値として30年度の売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。

 中長期ビジョン目標達成に向けた第1ステップとなる中期経営計画2024(発注単価上昇と生産性向上によって利益率が改善しているため23年2月14日付で営業利益および営業利益率の目標値を上方修正)では、経営目標値として24年12月期の連結ベース受注高850億円、売上高850億円、営業利益77億円(従来は68億円)、営業利益率9.1%(同8.0%)、ROE10%以上、建設技術研究所単体ベースの受注高550億円、売上高550億円、営業利益64億円(同55億円)、営業利益率11.6%(同10%)、社員数2300人を掲げている。

 CTIグループ全体の重点施策として、グループ協業の推進による事業拡大、主要グループ会社の安定経営と収益性の改善、グループガバナンスの強化、グループ全体でのサステナビリティ経営の推進に取り組む。社会の課題に応じた重点事業分野(防災・減災、都市・建築、土壌・地盤・地質、環境マネジメント、エネルギー、PPP事業など)を設定し、その売上高伸長を目指す方針としている。

 21年12月にはサステナビリティ委員会を設置した。さらに、健康経営、ダイバーシティ&インクルージョン、従業員の成長と自律を縫合した「CTIウェルビーイング」に取り組むため、社内宣言ならびにCTIウェルビーイング基本方針を策定した。22年1月には、企業活動を通じて次世代育成に貢献するため一般事業主行動計画を策定した。

 22年6月には「知的財産に関する基本方針」を策定した。また、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現に向けて、さまざまな提案に取り組むための方針として「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」を策定した。22年7月にはAIを適切に活用していくことを社内外に宣言することを目的として「CTIグループAI倫理指針」を策定した。また22年7月には、女性活躍推進法に基づく優良企業として、厚生労働大臣から「えるぼし」認定の二つ星(2段階目)を取得した。

 22年9月には23年12月期の研究開発投資の基本方針を公表した。事業展開の加速や持続可能な社会の構築を目的に総額を12億円(22年12月期は11億円)とした。このうち社会のサステナビリティを実現するための投資(グリーン関連研究揮発)の予算を2億円とした。

 22年12月には、22年6月に策定した「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」の宣言内容の実現に向けて、具体的な推進計画を策定・公表した。23年1月にはサステナブル事業会社CTIアセンドを設立し、福島県相馬市で子実トウモロコシ栽培・ウイスキー製造販売に取り組むと発表した。

■新分野・新事業への展開を加速

 22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。また、京成バス、損害保険ジャパン、アイサンテクノロジー<4667>および埼玉工業大学との5者共同で、千葉市未来技術等社会実装促進事業の自動運転車社会実装サポート事業に採択された。

 22年2月には陸地コンサルタント(広島県東広島市)と業務提携した。また、東京都豊島区が実施するPPP事業(公民連携事業)である旧第十中学校跡地への野外スポーツ施設整備・管理運営事業において、地域企業を含むコンソーシアムの代表企業として事業を実施すると発表した。

 22年3月には、22年1月に公表した「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」について、よりスピード感をもって達成するために、計画期間を従来の「22年1月1日~24年12月31日の3カ年」から「22年1月1日~23年12月31日の2カ年」に短縮した。また、大分県由布市と「地域自治を大切にした住み良さ日本一のまち・由布市」の実現に向けて、交通・都市・地域活性・防災をテーマに地域の課題解決を推進することを目的に包括連携協定を締結した。

 22年8月には、下水管内の以上を早期に検知するためのリアルタイム水位監視および微生物調査・分析に関する技術を開発したとリリースしている。また、AIによる高潮・越波予測システムを開発し、情報提供サービスを開始したとリリースしている。

 22年9月には、AIを用いた再現性の高い大気汚染予測モデルを作成し、これに基づく局地的、短期的な大気汚染物質濃度の情報提供サービスを開始した。また、大阪府四条畷市田原地域において自動運転車やデマンド交通の移動支援サービスの実証実験(10月1日~10月30日)を実施すると発表した。22年10月には長野技研コンサルタント(長野県長野市)と業務提携した。

 22年10月には、関東バスおよび東日本電信電話と、東京都杉並区荻窪地域(荻窪駅南側エリア)において、グリーンスローモビリティの実証運行およびスマートフォンアプリを活用したMaaSの実証実験を実施(11月3日~13日の間)すると発表した。また、流域の渇水リスクをリアルタイムで評価する水循環予測情報システムの開発と技術サービス開始を発表した。

 22年11月には、奈良公園周辺における公園利用者の周遊性向上を目指し、パーソナルモビリティやMaaSによる移動支援サービスの実証実験を実施した。22年12月には、京都大学のインフラ先端技術コンソーシアムにおいて、構研エンジニアリング、鷺宮製作所、京都大学、北海道大学と共同で、電源を不要としたトンネル照明灯具の取付異常を検知するデバイス「フリークエンター」を開発し、国土交通省の「点検支援技術性能カタログ」に登録された。

 23年1月には同社が参画している「不動産分野におけるレジリエンス検討委員会(D-ismプロジェクト)」において、不動産に関わる新たな認証制度「ResReal(呼称:レジリアル)」が創設された。不動産の自然災害に対するレジリエンスを可視化して認証を行う本邦初の制度である。

 23年3月には、フォトンラボとの業務提携、および国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)との共同研究により、道路トンネル内のロボット点検技術として社会実装を進めてきた「レーザー打音検査装置」を国内で初めてトンネル内装曲面タイルパネルの診断支援に活用したとリリースしている。

■23年12月期1Q増収増益と順調、通期減益予想据え置きだが保守的

 23年12月期の連結業績予想は、受注高が22年12月期比2.2%減の840億円、売上高が0.6%増の840億円、営業利益が10.2%減の72億円、経常利益が11.4%減の73億円、そして親会社株主帰属当期純利益が16.6%減の49億円としている。配当予想は22年12月期と同額の100円(期末一括)としている。

 市場環境は良好だが、不透明感の考慮に加えて、品質向上や労働負荷軽減を図るため受注を抑制し、さらに人材育成、技術競争力強化、事業拡大・生産性向上に向けた研究開発など、先行投資の影響で減益予想としている。セグメント別の計画は、国内建設コンサルティング事業の受注高が22年12月期比1.4%増の590億円、売上高が1.4%増の590億円、セグメント利益(調整前営業利益)が5.6%減の65億円、海外建設コンサルティング事業の受注高が9.7%減の250億円、売上高が1.3%減の250億、セグメント利益が38.1%減の7億円としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比5.2%増の247億60百万円、営業利益が7.2%増の37億42百万円、経常利益が7.0%増の37億79百万円、親会社株主帰属四半期純利益が13.3%増の27億70百万円だった。増収増益と順調だった。国内は国土強靭化等で堅調に推移した。海外はアジア市場が改善傾向だった。グループ合計受注高は4.1%増の256億68百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期の進捗率は高水準の形だが、公共投資関連で業務の進捗が年度末に集中するため、第1四半期の構成比が高い季節特性があるとしている。ただし保守的だろう。第1四半期が増収増益と順調だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。防災・減災・インフラ老朽化対策など国土強靭化関連で事業環境は良好である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は2月の上場来高値に接近

 株価は水準を切り上げて2月の上場来高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。5月19日の終値は3505円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS352円97銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の100円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3360円83銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約496億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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