「猫年」ベトナム市場のもみ合い【フィスコ・コラム】

2023年3月12日 09:00

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記事提供元:フィスコ

*09:00JST 「猫年」ベトナム市場のもみ合い【フィスコ・コラム】
2023年のベトナム市場は好調な滑り出しをみせたにもかかわらず、旧正月以降は失速しています。経済成長が軌道に乗ったわりに、株価は昨年の大幅安の呪縛から逃れられないようです。今年は順風満帆と期待される「猫年」ですが、今後巻き返せるでしょうか。


代表的な株価指数「VN」は年明けに1040ポイント台からスタートした後、1月18日には1108ポイントまで6%超も上昇しました。旧正月「テト」明け直後も堅調地合いを維持し、1110ポイントからさらに上値を伸ばすとみられていました。しかし、1月27日の1117ポイントをピークに下落へ転じると1100ポイントを割り込み、年初来安値を更新。足元は1050ポイント付近を中心にもみ合いが続いています。


こうした値動きは昨年の軟調地合いを想起させます。2022年はコロナ禍からの回復を背景に、年初1500ポイント付近の過去高値圏で推移していました。ところが春先から徐々に値を切り下げ、途中でもみ合ったものの、10月には売りが膨らみ、とうとう1000ポイントを割り込んでしまいます。11月にピーク比で6割も安い911ポイントまで落ち込んだ際には「メルトダウン」と報じられました。


そんな「悪夢」を振り払うかのように、今年の出だしは好調でした。経済指標をみると、鉱工業生産の回復や小売売上高の好調など国内経済は堅調さを示しています。国際通貨基金(IMF)はベトナムの成長見通しについて2023年を+5.8%と予測。政府目標の+6.5%成長には及ばないものの、中間層や富裕層の増加を背景に旺盛な消費が経済をけん引するとみています。そうであれば株価はもっと高くても違和感はないはずです。


ただ、指数が顕著に上昇しない背景には、不祥事に対する市場への根強い不信感などがあるようです。昨年の株価急落をもたらした原因は、不動産大手の幹部による自社株取引に絡む株価操縦でした。他にも閣僚や官僚の汚職がまん延し、株式市場の成長を阻害しています。VN指数の小幅な上昇が続くと、その後急激に値を下げる「プチ」パニックのような値動きは、投資家の信用低下を反映しているのかもしれません。


2023年の干支(えと)は日本や中国では「兎」ですが、ベトナムでは「猫」。ベトナム人はネズミを捕まえる猫に好意的なのだそうです。あるいは、中国語の兎の発音がベトナム語で猫を意味する単語に似ている、といった説もあります。猫年はベトナムで幸運と順風満帆をもたらすとされています。であれば、株式市場も「災い転じて福となす」展開になるのですが・・・。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。《YN》

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