コラム:底堅さ増すドル円

2023年2月26日 09:00

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記事提供元:フィスコ

*09:00JST コラム:底堅さ増すドル円
ドル・円相場の底堅さが目立ちます。米インフレ鎮静化の観測が短期的に後退し、米金利が上昇しているためです。年度末に向けた国内企業の動向や次期日本銀行の人事体制も絡み目先は円買い圧力がくすぶるものの、ドル選好地合いが続くか注目されます。


年明け以降のドル・円は1月6日に付けた134円78銭をピークに下落基調に転じ、同16日には127円21銭まで10日間で7円半も下げました。想定よりも速いペースでドル安・円高が進んでいましたが、その後は下げ渋っています。2月に入ると値を戻し始め、2月2日の128円02銭を大底に持ち直しています。同17日に1月の高値を上抜けると底堅さを増し、足元は135円付近でもみ合っています。


流れを変えたのは米経済指標でした。1月雇用統計で非農業部門雇用者数が大幅に予想を上振れたほか、失業率も低下しました。また、シガン大学消費者信頼感指数の期待インフレ率が上昇。消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)は7カ月連続で伸びが鈍化したものの、想定外に強い内容でした。雇用情勢の強さが鮮明になり、賃金アップを背景とした物価の高止まりにより、連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め長期化が意識されました。


実際、クリーブランド連銀総裁は「引き続きインフレが焦点」としたほか、セントルイス連銀総裁は「0.50ptの利上げ支持の可能性を排除しない」と物価安定に向け利上げ継続の可能性に言及しています。FEDウォッチによると、次回3月21-22日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25pt利上げ予想は当初の9割から7割程度に減少し、代わって0.50pt利上げ予想が3割近くに増えています。


一方、次期日銀総裁人事は円買い要因にはなりませんでした。当初は黒田東彦総裁の路線を受け継ぐとみられた雨宮正佳副総裁の就任が有力視されていましたが、その後は経済学者で元日銀審議委員の植田和男に政府が打診との報道を受け一時円高が進みました。ところが、植田氏が囲み取材で緩和政策の維持は重要と発言すると円は大幅安に振れました。日銀の新体制は修正の余地を残しながらも、当面は緩和継続とみられ円安を支えています。


そのほか、欧州中央銀行(ECB)当局者から3月の理事会に向けタカ派的な見解が相次いでいるものの、今後、利上げ幅縮小の観測が高まりユーロ売りが強まればドルを押し上げるでしょう。また、ウクライナ戦争で西側諸国の武器供与がかえって事態の悪化を招きかねず、これもドル高に寄与する要因と考えられます。米10年債利回りが4%台に達したらドル・円は136-137円台、と短期筋は見当をつけているようです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。《YN》

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