JFEシステムズは目先的な売り一巡、23年3月期2Q累計2桁増収増益と順調、通期利益上振れ余地

2022年11月7日 09:53

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 JFEシステムズ<4832>(東証スタンダード)はJFEグループの情報システム会社である。鉄鋼向けを主力として、一般顧客向け複合ソリューション事業も強化している。中期経営計画では、強みとする商品力・技術力・人材力およびDX事業の更なる強化に向けて積極投資を実行する方針としている。23年3月期第2四半期累計連結業績は鉄鋼向けの好調が牽引して2桁増収増益と順調だった。通期は売上高を上方修正したが、利益面は売上構成差などを考慮して小幅増益予想を据え置いた。ただし保守的な印象が強く、利益予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は決算発表に対してややネガティブ反応となった。地合い悪化や通期利益予想据え置きを嫌気した可能性があるが、好業績や指標面の割安感が評価材料であり、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。

■JFEグループの情報システム会社

 JFEグループの情報システム会社である。鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も強化している。なお親会社のJFEスチールが22年3月に発表した本社基幹システムのオープン環境への完全移行にも参画している。

 22年3月期の事業別売上高は鉄鋼が230億円、一般顧客が164億円、基盤が69億円、子会社(JFEコムサービス、IAFC)が41億円だった。収益面では情報システム関連のため、年度末にあたる第4四半期の構成比が高い特性がある。

 ダイバーシティを推進し、女性の活躍推進の取り組みが優れた企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」や、働き易い職場環境整備・意識啓発に取り組む企業を東京都が登録する「心のバリアフリーサポート企業」など、働き方・企業風土に関する各種認証を取得している。20年7月には厚生労働大臣から子育てサポート企業として「プラチナくるみん」認定を受けた。

 21年12月には「ダイバーシティ推進基本方針」「ダイバーシティ推進キャッチフレーズ」および「2030年度女性役員・管理職(部長・課長級)達成目標」を新たに策定した。2030年度までに女性役員・管理職比率12%の達成(21年度実績5.7%から倍増)を目指す。22年3月には健康経営優良法人2022(大規模法人部門)に5年連続で選定された。

■電子帳票パッケージは15年連続国内シェア1位

 電子帳票パッケージなど自社開発ソリューションの拡大に注力している。21年4月には食品業界のDX推進を支援する原料情報管理・原材料表示作製クラウドサービス「MerQurius(メルクリウス)クラウド」の提供を開始した。そして本格販売開始から約1年半で利用社数が倍増するなど好調に推移している。

 21年7月には、DataDeliveryが公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証する電子取引ソフト法的要件認証制度および電子書類ソフト法的要件認証制度の2つのJIIMA認証を同時取得した。

 21年10月にはSAP S/4HANA向けに自社開発したプロジェクト管理業務テンプレート「SIDEROS PS TEMPLATE for S/4HANA」の最新版の販売を開始した。21年11月には電子帳簿保存法に対応した電子証跡システム「DateDeliveryクラウド」の提供を開始した。22年6月にはアマノ<6436>がWeb購買システム「Enterprise Commerce」を導入したと発表している。

 22年9月には、自社開発の電子帳票パッケージFiBridgeシリーズが、富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2022年版」電子帳票パッケージ(運用・保存システム)分野2021年度市場占有率調査(販売パッケージベース)で、15年連続で国内製品シェア1位(数量シェア28.5%、金額シェア27.2%)を獲得したと発表している。利用企業数は4200社を超え、電子帳簿保存法適用実績はシリーズ累計2883社となっている。

■中期経営計画

 22年4月に策定・公表した中期経営計画では、キャッチフレーズに「Accelerate innovation」を掲げ、目標数値は最終年度25年3月期の売上高570億円、経常利益66億円、ROS11.6%、親会社株主帰属当期純利益43.7億円、ROE15%程度の水準維持、配当性向35%程度(現行は30%)としている。なお23年3月期から中間配当を実施する。

 サステナビリティ活動を意識した経営を追求し、強みとする商品力・技術力・人材力およびDX事業の更なる強化に向けて、3カ年で150億円規模の積極投資(商品開発投資20億円、サービス提供型ビジネス向け投資50億円、研究開発投資、既存事業の強化と事業領域の拡大を狙ったM&Aなど)を実行しながら、並行して増収増益を目指すとしている。なお人材投資については、採用・育成費や社員報酬水準向上などの増分として約20億円を見込んでいる。

 事業別戦略としては、鉄鋼では製鉄所システムリフレッシュ本格化への対応やDX案件への積極対応、ソリューション・プロダクトでは商品機能拡充やクラウド対応によるITベンダーとしての商品力・提案力強化、ビジネスシステムでは新技術・ノウハウの蓄積によるSoRビジネスからSoEビジネスへの転換、基盤ではJFEグループ以外の顧客開拓やクラウド・セキュリティ事業の強化・拡大、DX関連ではオフィスソリューションや製造現場ソリューションなどDX新規ビジネスの拡大などを推進する。

■23年3月期2Q累計2桁増収増益と順調、通期利益予想に上振れ余地

 23年3月期連結業績予想(22年10月26日付で売上高を10億円上方修正、各利益を据え置き)は、売上高が22年3月期比9.1%増の550億円、営業利益が1.1%増の56億70百万円、経常利益が1.0%増の57億円、親会社株主帰属当期純利益が0.4%増の37億40百万円としている。配当予想は10円増配の85円(第2四半期末40円、期末45円)としている。連続増配予想である。なお23年3月期から中間配当を実施した。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比12.1%増の271億33百万円、営業利益が13.1%増の27億79百万円、経常利益が13.1%増の28億04百万円、親会社株主帰属四半期純利益が13.5%増の18億40百万円だった。上期として過去最高だった。

 JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトの進展が牽引して2桁増収増益と順調だった。コスト面では従業員の処遇改善等の費用が増加したが、高採算案件の前倒しも寄与して増収効果で吸収した。部門別売上高は鉄鋼が20億円増加の131億円、一般顧客が5億円増加の83億円、基盤がインフラ構築の増加などで1億円増加の34億円、子会社(2社)が3億円増加の23億円だった。なお売上総利益率は売上構成差などで0.7ポイント低下したが、販管費比率は0.8ポイント低下した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が135億26百万円で営業利益が12億23百万円、第2四半期は売上高が136億07百万円で営業利益が15億56百万円だった。

 通期予想は売上高を上方修正、各利益を据え置いた。経常利益(前期比0.6億円増益)の前期比増減分析は売上増で+10.5億円、コスト増(研究開発費、従業員処遇改善等)で▲9.9億円の見込みとしている。

 売上面では、JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトの想定以上の進展が見込まれるとしている。修正後の事業別売上高の計画は、鉄鋼が製鉄所システムリフレッシュの進展で37億円増加の267億円(期初計画比6億円上方修正)、一般顧客が2億円増加の166億円(同6億円上方修正)、基盤がJFEスチール向けの増加で4億円増加の73億円(同1億円上方修正)、子会社がITインフラの増加で3億円増加の44億円(同3億円下方修正)としている。

 利益面は案件構成差や研究開発費等のコスト増加を考慮して据え置いた。高採算案件が上期に前倒しになったことも考慮して、下期は前年比で若干の減益を見込んでいる。ただし保守的な印象が強く、利益予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は目先的な売り一巡

 株価は決算発表に対してややネガティブ反応となった。地合い悪化や通期利益予想据え置きを嫌気した可能性があるが、好業績や指標面の割安感が評価材料であり、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。11月4日の終値は2189円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS238円14銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想85円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1469円63銭で算出)は約1.5倍、そして時価総額は344億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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