ツクルバは上値試す、23年7月期赤字縮小予想で中期成長期待

2022年10月31日 19:49

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 ツクルバ<2978>(東証グロース)は住宅・不動産領域のデザイン×テクノロジー企業として、中古・リノベーション住宅流通プラットフォームcowcamo(カウカモ)運営を主力としている。23年7月期は取引件数およびGMV(流通取引総額)拡大やテイクレート(流通における付加価値獲得率)改善により、大幅増収で赤字縮小予想としている。さらに積極的な先行投資の成果で中期成長を期待したい。株価は9月の戻り高値圏から反落したが、調整一巡して反発の動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。

■中古住宅流通プラットフォームcowcamo運営が主力

 住宅・不動産領域のデザイン×テクノロジー企業として、中古・リノベーション住宅流通プラットフォームcowcamo(カウカモ)運営のcowcamo事業、およびシェアードワークプレイス運営や空間プロデュース(企画・デザイン・設計)などの不動産企画デザイン事業を展開している。

 22年7月期のセグメント別売上高はcowcamo事業が21年7月期比90%増の23億63百万円、不動産企画デザイン事業が5%増の4億03百万円、売上総利益はcowcamo事業が48%増の17億10百万円、不動産企画デザイン事業が20%増の1億34百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)はcowcamo事業が2億41百万円の赤字(21年7月期は32百万円の黒字)、不動産企画デザイン事業が2.7倍の54百万円だった。cowcamo事業のGMV(流通取引総額、決済ベース)は32%増の368億87百万円、テイクレート(付加価値獲得率=売上総利益÷GMV)は0.5ポイント上昇の4.6%だった。

 15年6月にサービス開始したcowcamoは、中古・リノベーション住宅の売主と買主を介在するマーケットプレイス型のプラットフォームである。蓄積された買主ユーザーの嗜好データや空間データなどを活用して売主から供給される物件の流通に介在することで、不動産ポータルサイトと仲介を統合した独自のプラットフォームにより、不動産業界において独自のポジションを構築している。買主が増えれば取引が増え、売主が参加するインセンティブが上がり、買主の欲しい物件が増えるという好循環の成長サイクルとなる。

 登録会員数は22年4月時点で35万人超、年間利用者数は21年5月~22年4月実績で240万人超となっている。現在は首都圏中心に展開しており、主要な情報掲載エリアである東京都区部~横浜の一部エリアにおいては、中古住宅購入検討者の5人に1人が登録しているサービスに成長し、ユーザー・データ基盤の蓄積が加速している。

 収益面では、現在は広告宣伝や人材獲得など積極的な先行投資を継続しているため営業赤字となっているが、中期成長に向けて、継続的な顧客基盤の拡大と差別化された体験・商品によるGMVの拡大、およびバリューチェーン拡張やサービス拡充による付加価値獲得領域の拡大とテイクレートの向上を推進し、高い売上総利益成長率の継続を目指している。付加価値獲得領域の拡大については、個人売主仲介の強化、自社または再販事業者提携による企画商品の拡充、附帯サービスの強化などを推進している。

 なお22年2月に個人売主向け新サービスとしてウルカモを開始した。売却検討者が住まい情報を手軽に投稿し、購入検討者からのリアクションを得る売買意向のマッチングプラットフォームである。サービス開始から半年の22年8月時点で登録会員数は2200名以上、累計物件投稿数は180件以上と順調に推移している。

■23年7月期赤字縮小予想で中期成長期待

 23年7月期の業績(非連結)予想は売上高が22年7月期比45.3%増の40億円、営業利益が2億20百万円の赤字(22年7月期は7億73百万円の赤字)、経常利益が2億41百万円の赤字(同7億95百万円の赤字)、当期純利益が2億42百万円の赤字(同8億22百万円の赤字)としている。

 なお売上総利益は35.6%増の25億円、販管費は3.9%増の27億20百万円の計画としている。主要KPIであるテイクレートをより正確に開示するため、テイクレートの算出に用いるGMVの算定基準を成約ベースから決済ベースに変更するが、売上総利益への影響はないとしている。

 取引件数およびGMV拡大やテイクレート改善により、大幅増収で赤字縮小予想としている。重点施策として、売主サイドに対するマーケティング強化や新サービス開発など、買主サイドに対するサービス・プロダクトの改善や営業体制の拡充(自社エージェント人数増員)などを推進し、取引件数およびGMVの最大化を図る。利益面では、大幅増収効果と付加価値獲得領域拡張による構造的なテイクレート改善に加えて、コストマネジメント強化による販管費の伸び抑制も寄与する見込みだ。なお売主・買主両サイドの連携による相乗効果については業績予想に織り込まず、アップサイド要因としている。

 セグメント別には、cowcamo事業では中古住宅需要の緩やかな継続拡大を想定し、GMVは30%増程度、テイクレートは10%程度の向上を見込んでいる。不動産企画デザイン事業は、22年7月期に自社運営拠点の定期賃貸借契約を終了した影響で減収を見込んでいる。当面はcowcamo事業の継続成長を優先するため減収だが、全社営業損益への影響は軽微としている。

 23年7月期は赤字が大幅に縮小する見込みだ。さらに積極的な先行投資の成果で中期成長を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は9月の戻り高値圏から反落したが、調整一巡して反発の動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。10月28日の終値は890円、前期実績PBR(前期実績のBPS73円67銭で算出)は約12倍、そして時価総額は約102億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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