外国語習得には分散学習が最適! 想起の力で効率よく復習する方法

2022年3月3日 16:57

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 「外国語習得は繰り返し復習することが重要!」。多言語習得に成功したポリグロットたちが口をそろえて教えてくれている。英国人のリチャード・シムコット(Richard Simcott)さんは、50以上の言語を話す語学の達人だ。彼はアップロードしたYouTube動画で下記のように話している。

【こちらも】外国語習得のためにやるべき5つのこと 50言語習得したポリグロットの提言

 「語学学習に成功する人と失敗する人の最大の違いは、反復練習を弛まず継続できるか否かにある。学んだ内容を繰り返し頭の中で再現することで、長期記憶につなげ、記憶を定着させる。記憶のメカニズムに基づいて正しく復習することが重要だ。」

 カナダ人のスティーブ・カウフマンさんは、すでに20言語以上習得し、70歳を過ぎた今でもアラビア語など難易度の高い言語の習得に励んでいる。スティーブさんは下記のように語る。

 「忘れるのは、単語を記憶して定着させるために必要なプロセス。単語を覚えて忘れて、また繰り返し覚えて忘れるというプロセスを経て、記憶に定着していく。忘れるのは決して無駄ではない。」

【参考】世界で最も有名なポリグロットが語る「外国語学習のコツ!」

 では、リチャードさんが言う記憶のメカニズムに基づいた正しい復習とはどのようなものなのだろう?

 効果的な復習のタイミングや方法について研究したポーランドの研究者ピョートル・ウォズニアック氏によると、最大の効果が得られる復習のタイミングは下記の通りだ。

 ・1回目:2日後、2回目:7日後、3回目:16日後、4回目35日後、5回目62日目。

 要は、復習は一定の間隔をあけて行うことが大事で、その間隔は回を重ねるごとに長くすることがポイントのようだ。このような復習法を分散学習と呼ぶ。

 外国語学習に復習が欠かせないのは、学習者が共通して実感していることだ。しかし、書くだけ読むだけのような負荷の小さな復習では、大きな効果は得られない。日本女子大学の竹内龍人教授は、復習で効果的な「想起」(思い出す作業)の具体的な方法について雑誌の記事で詳しく説明している。(プレジデント2022年2月18日号)

 外国語は一定の間隔をあけて学習する分散学習が効果的で、復習方法はテスト形式で想起(思い出す)がポイントになるようだ。ほとんど忘れかけたところで復習を行うと、想起(思い出す)のために大きな負荷がかかり、これによって、脳の神経回路がより強く太く形成されるイメージだ。重いバーベルで筋トレを行うのが効率的に筋力をつけることと同じ道理だ。

 日本国内でも多くの研究者が、分散学習や想起の具体的な方法やタイミングについて研究論文を発表している。中部大学の水野りか教授は、授業形式で分散学習の実験を行い、学習者の能力と復習内容の難易度によって、ベストな復習間隔は異なることを説明している。

 復習間隔は、簡単な単語などではより長く、難しい文法などでは短い間隔で行うことが高い効果が得られるようだ。また、その分野における能力の高い人は復習間隔を長く、能力の低い人は短い間隔で行うと、効率よく長期記憶につながるようだ。(参考: 再活性化説に基づく効果的な分散学習スケジュールの実現)

 福岡大学で中国語を教える董玉婷講師は、日本人が苦手とする中国語発音学習のベストな復習間隔について実験した。その結果、2日後、4日後、6日後と短い間隔で復習を行うほうが、より大きな効果が得られることが分かったと言う。

 日本語は音素が比較的少ないため、中国語のように音素が豊富な言語を学ぶとき、日本語には無い発音や、しない区別の発音の習得が難しい。こうした学習に関しては、比較的短いスパンで復習を行うとより高い効果が得られるのだ。

 外国語学習の研究者や成功者の意見をまとめると、外国語習得に欠かせない復習のポイントは下記の3つだ。

 ・語学の復習は「想起」をメインにテスト形式で行う

 ・ベストな間隔は1回目:2日後、2回目:7日後、3回目:16日後、4回目35日後、5回目62日目だが、「2日後、2週後、2カ月後と2、2、2、の間隔」がより実践しやすい。

 ・発音練習、高度な文法など想起が難しい学習の復習は短めの間隔、単語学習など簡単な内容の復習は長めの間隔で行うのが効果的。

 数学や物理のように、応用力や創造力をメインに鍛える必要のある教科では、分散学習や想起より相応しい復習方法があるだろう。しかし、語学は文字・発音・文法など記憶することが学習のカナメとなり、効率よく復習することはとても重要だ。

 皮肉なことに、やる気のある学習者は、先へ先へと進むことを優先し、復習をおざなりにする傾向がある。昨日勉強したことを、今日、明日、明後日と連日復習したくなるのも、気のはやるせっかちな学習者が犯す過ちだ。

 同じ時間をかけるなら、復習間隔を十分にあけると、想起の負荷が何倍にもなり、本当に意味のある高効率な復習になる。次回は、効果的な復習の具体的な学習方法について、詳しく紹介したい。(記事:薄井由・記事一覧を見る

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