京写は急反発の動き、22年3月期は需要回復基調で再上振れの可能性

2022年1月17日 09:55

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 京写<6837>(JQ)はプリント配線板の大手メーカーである。独自の印刷技術を活用し、電子部品の微細化ニーズに対応した新製品によるシェア拡大戦略などを推進している。22年3月期は大幅増収増益予想としている。需要回復基調で通期予想は再上振れの可能性がありそうだ。さらに23年3月期はベトナム工場の本格稼働も寄与して収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げる場面があったが、調整一巡して急反発の動きとなった。上値を試す展開を期待したい。なお4月4日移行予定の新市場区分について、1月12日にスタンダード市場への移行をリリースしている。また1月28日に22年3月期第3四半期決算発表を予定している。

■プリント配線板の大手メーカー

 プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を柱として、実装治具関連事業も展開している。

 プリント配線板はスクリーン印刷技術をベースとして、防塵対策基板、熱伝導放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持っている。そして高温工程で繰り返し使用可能なノンシリコーンタイプ粘着キャリア、電子部品の急速な小型化に対応した業界初のスクリーン印刷法による0603チップ部品対応片面配線板、伸縮性のある材料にスクリーン印刷で直接回路を形成するストレッチャブル基板(プリンタブル基板)などの受注拡大が期待されている。

 21年3月期のセグメント別売上高は日本が87億01百万円、中国が74億84百万円、インドネシアが10億94百万円、メキシコが55百万円、営業利益(調整前)は日本が▲59百万円、中国が4億73百万円、インドネシアが▲81百万円、メキシコが▲10百万円だった。

 製品別売上高は片面版が80億89百万円、両面板が62億86百万円、実装関連が19億75百万円、その他が9億83百万円だった。用途別売上構成比は自動車関連(ライト、電装品、カーオーディオなど)が30.1%、家電製品(LED照明、エアコンなど)が22.9%、事務機(複写機、プリンターなど)が12.2%、電子部品・電子機器(電源、モーター、制御装置など)が9.0%、映像関連(薄型テレビなど)が6.5%、アミューズメント(家庭用ゲーム機など)が1.0%、その他(音響機器、通信機器など)が18.3%だった。幅広い顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得している。

 プリント配線板の生産は国内、および中国、インドネシア、ベトナムに展開している。片面プリント配線板は世界最大の生産量を誇っている。18年5月には中国で両面配線板および多層配線板の生産を委託しているサンティス香港、およびその子会社のサンティス南沙と資本・業務提携した。なお京写メキシコは実装搬送治具を製造している。

 両面配線板の新たな生産拠点である京写ベトナムは21年1月に販売開始し、自動車向け製品を中心に生産している。なお京写ベトナムには自動車関連電子部品実装のエヌビーシー(岐阜県大垣市、05年から資本業務提携して協力関係)が6.7%出資している。

 また21年5月にはメイコー<6787>と資本業務提携した。ともにプリント配線板事業を主力としているが、得意とする製品が異なるため棲み分けができている。中国やベトナムで事業拡大を進めるなど共通点が多く、グローバルに協業することで相互補完が可能な状況にあるとしている。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。なお両社は株式市場において相互の株式を取得する。出資額は双方の株式購入額が1億円に達するまでとして、21年10月末までに取得完了した。

■独自印刷技術を活用した新製品でシェア拡大目指す

 中期経営計画では目標値として、最終年度26年3月期売上高300億円、営業利益16億円、営業利益率5.3%、ROE10%、配当性向25%を掲げている。

 製品別売上高の計画は片面板が101億円、両面板が127億円、金属基板が26億円、実装関連が32億円、新事業が10億円(超厚銅基板が8億円、プリンタブル基板が2億円)、その他が4億円としている。また地域別の売上構成比の計画は日本が41%、中国が22%、ASEANが26%、北米その他が11%としている。製品別では両面板と金属基板の拡大、地域別ではASEAN(ベトナム)の売上拡大を図る方針だ。

 6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)は変更なく、アライアンスも活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。

 グローバル生産・販売戦略では最適な供給網の再構築(ベトナム工場第1期フル稼働、両面事業・営業拠点の再編)や片面シェア拡大による利益確保など、企業間連携戦略ではEMSメーカー・商社との連携マーケティングによる製品開発・販路拡大や同業他社との相互補完関係構築など、効率化戦略では自働化・IT化による生産効率向上やDX活用による業務効率化推進など、技術戦略ではプリンタブル関連基板の事業化や0603対応微細基板の技術提案など、財務戦略では自己資本強化や持続的・積極的な株主還元など、人財戦略ではマネジメント人材の育成やESG・SDGsへの取り組みなどを推進する方針だ。

■22年3月期大幅増収増益予想、需要回復基調で再上振れの可能性

 22年3月期連結業績予想(収益認識基準適用だが損益への影響なし、10月29日に上方修正)は、売上高が21年3月期比18.3%増の205億円、営業利益が4.6倍の4億50百万円、経常利益が2.8倍の4億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億60百万円の黒字(21年3月期は1億35百万円の赤字)としている。配当予想は据え置いて、復元配で5円(期末一括)としている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比29.6%増の101億86百万円、営業利益が2億50百万円の黒字(前年同期は1億73百万円の赤字)、経常利益が2億78百万円の黒字(同1億72百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が1億27百万円の黒字(同3億35百万円の赤字)だった。

 売上面は、実装関連事業で航空機向けの低迷が続いたが、主力のプリント配線板事業において国内外で自動車関連や家電製品関連を中心に受注が回復基調となり、全体として大幅増収だった。プリント配線板の売上高はコロナ禍以前の20年3月期第2四半期累計の水準を上回った。競合メーカーが片面版の生産から撤退したことも寄与したようだ。なお今期からベトナム新工場の売上を計上している。

 コスト面ではベトナム子会社の生産開始に伴って減価償却費等の固定費が増加したが、増収効果や生産性向上施策などの効果で吸収し、各利益は黒字転換した。なお原材料価格高騰に対しては、製品販売価格改定で対応した。

 経常利益(4億50百万円増益)の増減要因分析は、増益が増収要因3億62百万円、原価率要因2億52百万円、営業外要因26百万円、減益がベトナム生産開始による要因1億74百万円、販管費要因16百万円としている。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が48億71百万円で営業利益が84百万円、第2四半期は売上高が53億15百万円で営業利益が1億66百万円だった。

 第2四半期累計の受注好調を受けて通期予想を上方修正した。従来予想に対して売上高を10億円、営業利益を1億50百万円、経常利益を1億50百万円、親会社株主帰属当期純利益を1億40百万円、それぞれ上方修正した。世界的な半導体不足や原材料価格の高騰、中国の電力不足などの影響で不透明感があるが、増収効果で各利益とも従来予想を上回る見込みとしている。

 修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.7%、営業利益が55.6%、経常利益が61.8%、純利益が48.8%である。需要が回復基調であり、通期予想は再上振れの可能性がありそうだ。さらに23年3月期はベトナム工場の本格稼働も寄与して収益拡大基調だろう。

■株価は急反発の動き

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果としてスタンダード市場適合を確認し、21年11月19日開催の取締役会においてスタンダード市場選択申請を決議した。さらに1月12日にはスタンダード市場への移行をリリースしている。

 株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げる場面があったが、調整一巡して急反発の動きとなった。上値を試す展開を期待したい。1月14日の終値は434円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS18円14銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の5円で算出)は約1.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS434円76銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約63億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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