日経平均は大幅続伸、FOMC通過が「短期的なあく抜け」にとどまりそうな理由/ランチタイムコメント

2021年12月16日 12:19

印刷

記事提供元:フィスコ


*12:19JST 日経平均は大幅続伸、FOMC通過が「短期的なあく抜け」にとどまりそうな理由
 日経平均は大幅続伸。444.53円高の28904.25円(出来高概算5億2000万株)で前場の取引を終えている。

 15日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反発し、383ドル高となった。注目された連邦公開市場委員会(FOMC)では量的緩和の縮小(テーパリング)を加速することが決まり、来年の利上げ見通しについては従来の1回から3回に増えた。ただ、おおむね市場の想定内と受け止められ、金利上場も限定的だったことから買いが優勢となった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+2.15%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+3.69%だった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで408円高からスタートすると、朝方には一時29044.51円(584.79円高)まで上昇。ただ、29000円近辺では売りが出て伸び悩み、前場中ごろを過ぎると急速に上げ幅を縮める場面があった。

 個別では、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株が揃って3~4%超の上昇。一部証券会社の目標株価引き上げが観測されている。その他売買代金上位もトヨタ自<7203>、東エレク<8035>、任天堂<7974>など全般堅調で、レーザーテック<6920>やOLC<4661>の上げが目立つ。増配を発表したキヤノン<7751>は5%超の上昇。また、決算発表のブラス<2424>やギフト<9279>が東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、売買代金上位ではソフトバンクG<9984>が逆行安。米中関係の悪化懸念から中国アリババ集団などが下落し、売り材料視されているようだ。今期黒字転換見通しを示したパーク24<4666>は朝高後にマイナス転換。また、やはり前日に通期決算発表したプロレド<7034>などが東証1部下落率上位に顔を出している。

 セクターでは、全33業種がプラスとなり、海運業、精密機器、鉱業、電気機器、輸送用機器などが上昇率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の77%、対して値下がり銘柄は18%となっている。

 FOMC通過後の東京市場では、米株高の流れを引き継いで買いが先行した。朝方には早々に29000円台を回復する場面があったが、その後伸び悩む展開となっている。日足チャートでは、寄り付きで28800円台に位置する25日移動平均線水準を回復する一方、29000円台に位置する75日移動平均線に上値を抑えられる格好。売買代金上位や業種別騰落率は全般堅調な印象を受けるが、日経平均が400円を超える上昇となっている割に、東証1部全体としては2割近い銘柄が下落している。前引け時点で日経平均が+1.56%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.22%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、FOMC前の手控えムードの反動が出ているにしてはさほど膨らんでいる感がない。株価指数先物主導の上昇という可能性もあるだろう。

 新興市場ではマザーズ指数が+0.50%と続伸。こちらは日経平均以上に伸び悩みが鮮明となっている。また、前日は後払い決済サービスの国内最大手として注目されたネットプロHD<7383>(東証1部上場)が公開価格割れスタートを強いられたが、本日マザーズ市場に新規上場したブロードエンター<4415>やTrueData<4416>も公募・売出規模20~30億円クラスながら伸び悩む展開となっている。

 これまで当欄で度々指摘しているが、従前人気だったマザーズ銘柄の相次ぐ急落で個人投資家の損益は大きく悪化しているもよう。さらに、12月後半のIPO(新規株式公開)のブックビルディング(需要申告)こそおおむね一巡したが、購入申込みに伴う資金拘束が発生しているとみられ、個人投資家の資金回転が改善したとは考えにくい。

 さて、米国では14日発表の11月卸売物価指数(PPI)がかなり強い内容だったこともあり、FOMC前に連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めに対する警戒感はかなり強まっていたのだろう。来年3回の利上げ見通しという内容にも関わらず、ハイテク関連を中心に米株は大きく上昇した。米金利は10年物国債で1.46%(+0.02pt)と長期の年限を中心にやや上昇したが、比較的落ち着いている印象。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)もこれまで低下が続いていただけに、2.39%(+0.02pt)とやや上昇した。

 ここまでの市場反応を踏まえ、FOMC通過による一段の株高に期待する向きもあるが、果たしてそうか。米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した12月のファンドマネジャー調査によれば、投資配分のうち現金の占める比率が2020年5月以来の高い水準になっているという。一方、株式への配分は20年10月以来の水準に縮小。国別に見ると、米国とともに日本への配分比率も大きく低下している印象を受ける。「タカ派的な中央銀行」が最大のテールリスクとみられているもよう。

 もっとも景気の先行きについて悲観する向きは限られ、現金比率の上昇は「押し目買い機会につながる」との見方もあるようだ。ただ、今回のFOMCではファンドマネジャーらのリスクシナリオに沿って金融引き締めの方向が示され、持ち高修正の動きが本格化するだろうか。前述したとおり、本日の東京市場での売買動向を見ても、単にFOMC通過によるあく抜けを期待した短期筋中心の取引にとどまっている印象は拭えない。

 また、日本でも本日から日銀金融政策決定会合が開かれているが、来年は日銀の動向がより注目されてくる可能性がありそうだ。ここまで長くなったので、このあたりの話はまた次回以降述べたい。(小林大純)《AK》

関連記事