FOMC前に気掛かりはある/後場の投資戦略

2021年11月2日 12:22

印刷

記事提供元:フィスコ


[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;29580.49;-66.59TOPIX;2035.68;-9.04


[後場の投資戦略]

 日経平均は衆院選結果を受けて前日急伸していただけに、本日はやや利益確定売り優勢となっている。それでも寄り付き直後を除けばおおむね29500円台をキープしており、底堅い推移と言える。個別では決算を受けて値幅が大きく出ている銘柄が多いものの、ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと前日までより少なく、全体としては明日の祝日やFOMCの結果公表を前に様子見ムードが強いと考えられる。業種別では空運業が上昇率トップで、新型コロナウイルスの水際対策緩和を好感した動きだろう。

 新興市場ではマザーズ指数が+1.09%と続伸。売買代金トップのアスタリスク<6522>が上値追いの勢いを強めているほか、新サービス開始を発表したエネチェンジ<4169>なども大幅高となっている。強い成長期待が新興株を押し上げているが、本日は主力大型株の様子見ムードから物色の矛先が向いている面もあるだろう。人気銘柄に投資資金が集中し、株価指標面ではやや過熱感のある銘柄が多いのも気になるところ。一方、物色圏外で割安放置ぎみの有力テック株が散見され、中長期的にはこうした銘柄にも投資妙味がありそうだ。実際、株価調整が続いていた弁護士コム<6027>は決算発表後に強いリバウンドを見せている。

 さて、米株は主要3指数が連日で最高値更新と強い値動きが続いているが、前週も述べたとおり、楽観ムードのなか「いいとこ取り」をしている印象が拭えない。10月のISM製造業景況感指数についても、株式市場では市場予想上振れが好感される一方、債券・為替市場では前月比での鈍化やスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)の兆候を警戒視する声が聞かれた。

 なお、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.50%(-0.01pt)、米10年物国債利回りは1.55%(0.00pt)とおおむね横ばい。ただ、既に指摘したようにBEIが先週後半大きく低下したことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が上昇しているのは気掛かり。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は16.41(+0.15)とやや上昇したが、まだ楽観修正の余地の方が大きい水準だろう。こうした難しい局面でFOMCを迎えることから、市場トレンドに大きな変化が出てくるか注視したい。

 また、日経平均は前日こそ一時29666.83円まで上昇したが、これはリフレトレード後退後の戻り高値とさほど変わらない水準だ。このことから、衆院選結果が全員参加の買いにつながるかも慎重に見極める必要があるだろう。自民党の議席減は大方の懸念より少なかったが、自民党総裁選で日本の変化に期待していた海外投資家や、コロナ禍中の政権運営に不安を持つ個人投資家の買いを誘うものではないかもしれない。

 アジア市場では上海総合指数が続落する一方、香港ハンセン指数は6日ぶりに大幅反発しており、日本株にとっても下支え要因となりそうだ。とはいえ、FOMC前に積極的に買い持ちに傾くとも考えづらく、後場の日経平均は引き続きマイナス圏でもみ合う展開になるとみておきたい。なお、本日は花王<4452>、日本製鉄<5401>、三井物産<8031>などが決算発表を予定(前場には丸紅<8002>が決算発表)。また、3日の米国ではFOMC結果に加え、10月のADP雇用統計やISM非製造業景況感指数が発表される。(小林大純)《AK》

関連記事