コプロHD Research Memo(5):既存事業の成長や新分野の開拓で高成長を目指す

2021年5月7日 15:15

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記事提供元:フィスコ


*15:15JST コプロHD Research Memo(5):既存事業の成長や新分野の開拓で高成長を目指す
■コプロ・ホールディングス<7059>の成長戦略

1. 長期目標は2030年3月期売上高1,000億円、営業利益100億円
長期ビジョンには「業界NO.1ブランド」を掲げ、経営目標値を2030年3月期売上高1,000億円、営業利益100億円としている。重点施策としては、既存の建設業界向け技術者派遣の成長をベースとして、受注単価の高いプラント業界向け技術者派遣を第2の収益柱に育成して事業分野を拡大する。さらに海外展開や、M&Aを活用した新分野開拓も視野に入れる。

2. 建設マーケットの更なる深耕
(1) 採用と営業の強化
採用の強化に関しては、自社運営の建設・プラント業界求人サイト「現キャリ」のリニューアルを2021年4月1日に実施しており、2022年3月期は応募数の増加を目指す。営業の強化に関しては、属人的な営業スタイルから組織的な営業スタイルへの転換を図る。2020年4月に千葉支店、静岡支店、北九州プラント支店、2020年11月に新潟支店を新規開設し、支店ネットワーク拡充による営業エリア拡大や、プラント技術者派遣のシェア拡大を推進している。さらに営業効率を勘案し、優良な大手顧客をターゲットとして深掘りを図り、売上高上位企業との取引拡大を推進する方針だ。

(2) キャリアアップ支援に向けた教育体制拡充
キャリアアップ支援に向けた教育体制拡充に関しては、自社運営の研修施設「監督のタネ」において、専門講師が受講希望者の習熟度に合わせて研修カリキュラムを提供し、少人数での実習研修を行っている。技術社員の増加に対応するため、東京、名古屋、大阪に加え、2020年4月には4拠点目となる千葉拠点を開設した。さらに今後は、withコロナ/ afterコロナに対応したデジタル研修も強化する方針だ。

(3) マッチング率向上
技術社員と顧客の双方の満足度を向上させるため、マッチングシステムの刷新によるマッチング率向上の取り組みを推進している。各支店で管理していた顧客情報・求人案件情報をデータベース化して全社で一元管理・共有し、自社運営の建設・プラント業界求人サイト「現キャリ」の人材情報と突き合わせてマッチング率の向上を図り、顧客との契約延長や技術社員の定着率向上につなげる。新マッチングシステムは2020年12月から本稼働し、情報蓄積・更新を開始した。

(4) 技術社員の定着率の更なる向上
技術社員の定着率の更なる向上に関しては、派遣後のアフターフォローを重視しており、キャリアアップ等の相談に加え、技術社員が抱える不安や不満の解消に向けたヒアリングを実施している。また技術社員のエンゲージメント向上に向けた施策として、すべての技術社員にスマートフォンを貸与した。正確な勤怠管理やコミュニケーションへの活用などでデジタル化を推進する。さらに福利厚生プログラムとして「コプロマイレージ倶楽部」を運営し、商品券等と交換できるマイルを毎月付与しているほか、健康経営の一環として、歩数計アプリを使用した技術社員を含む全社員参加型イベントの実施を予定している。

(5) バックオフィス業務の生産性向上
各支店のバックオフィス業務の生産性向上については基幹システムを刷新し、システム化によって顧客との見積・契約・勤怠・請求等の作業工数を約40%削減することを目指している。新基幹システムは2021年4月に本稼働を開始した。営業事務に係わる人件費の増加を抑制するだけでなく、作業工数削減により生まれた余剰人員は営業社員サポート業務の強化に充てる方針だ。

3. プラント技術者派遣のシェア拡大
プラント業界向け技術者派遣を、建設技術者派遣に次ぐ第2の収益柱に育成して事業分野を拡大する。プラント業界は建設業界における工場建設などの経験・ノウハウを活かせる分野であり、建設技術社員の水平展開(建設の経験を活かしてプラントへ派遣)が比較的容易である。競合が少なく、受注単価が高い点でも有望市場である。

4. 海外展開
海外進出に向けた取り組みでは、2020年4月にASEAN進出のハブ拠点(中間持株会社)という位置付けで、シンガポールに現地法人COPRO GLOBALS PTE. LTD.を設立した。また、2021年4月1日にはCOPRO GLOBALS PTE. LTD.が、ベトナムでの事業会社として子会社COPRO VIETNAM CO., LTD.を設立。現地で採用した海外高度人材の国内受入に向けた取り組みを始動した。将来的にはASEAN地域に進出している日系ゼネコン・プラント企業に対して、日本で技術を学んだ人材の現地・海外Uターンなどの事業化を検討する。今後はフィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア、インドなど、その他のASEAN諸国への展開も検討する。

5. M&A戦略・新規事業
人材派遣サービス業界においては建設技術者派遣にとどまらず、2020年4月開始の「派遣労働者の同一労働・同一賃金」や、2024年4月施行予定の「働き方改革関連法案」が大きな負担となる中小派遣会社も多いため、今後は業界淘汰・再編が加速すると予想されている。こうした事業環境も背景として、成長を加速させるため、既存事業とのシナジー効果が期待できる企業に対するM&Aを積極的におこなっていく。2021年4月には、アトモスの発行済全株式を取得し、子会社化した。アトモスは、主に機械設計エンジニアの派遣事業を手掛けている。大手製造業の開発・設計部門を中心に、約100名の派遣社員が在籍している。独自の人材育成プログラムを構築し、多くの海外人材の採用実績を有していることも特徴だ。今回の株式取得により、エンジニア派遣領域における事業ポートフォリオの拡大を通して、グループ全体の更なる事業成長と収益の安定性向上が期待できる。M&Aについては今度も検討を進め、将来的には、エンジニア派遣会社のほか、IT分野や自動車・航空機関連分野なども視野に入れる方針だ。

6. 成長シナリオに変化はなく中長期的に収益拡大基調
国内の建設投資額が2011年の東日本大震災後に回復基調となっているのに対して、建設業界の就業者数は1997年をピークとして減少に転じ、2011年以降も横ばいで推移している。また大手ゼネコンなどが固定費削減のために採用抑制の傾向を強めていることや、就業者の高齢化進展なども背景として、若年層を中心とする建設技術者派遣への需要は一段と高まっている。事業環境は良好であり、成長シナリオに変化はなく、中期的に収益拡大基調が続くだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)《YM》

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