日経平均は5日続伸、米金利高受けて再び景気敏感株優位もグロース株も底堅さみせる/ランチタイムコメント

2021年3月15日 12:12

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記事提供元:フィスコ


*12:12JST 日経平均は5日続伸、米金利高受けて再び景気敏感株優位もグロース株も底堅さみせる
 日経平均は5日続伸。97.79円高の29815.62円(出来高概算8億1728万株)で前場の取引を終えている。

 前週末の米国株式市場では、1.9兆ドル規模の追加経済対策法案の成立後、バイデン大統領は11日夜の演説で5月1日までにワクチン接種の対象を全成人に拡大、独立記念日7月4日までには正常化を目指す方針を示したため景気循環株中心に買われ寄り付き後、上昇した。NYダウは終日堅調に推移。一方、回復期待に長期金利が再び上昇したためハイテク株に売りが広がりナスダックは下落した。NYダウが史上最高値を更新した流れを好感して、日経平均も上昇してスタートすると、上げ幅は一時150円を超え、29884.73円まで上値を伸ばした。その後は上げ幅を縮小する場面もあったが、再度29800円台に乗せるなど堅調な動きが続いた。

 個別では、日本郵政<6178>との資本提携により物流事業を強化すると発表した楽天<4755>や、上半期が営業減益ながらも自己株式の取得発表が好感されたエイチーム<3662>などが急伸した。また、業績予想を大幅に上方修正した日本アビオニクス<6946>はストップ高買い気配のまま終えている。そのほか、売買代金上位では、米長期金利の上昇が好感された三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの大手金融株、首都圏に発令中の緊急事態宣言が21日までで解除される方向と報じられたことを背景にJAL<9201>やANA<9202>などの空運株、暗号資産のビットコインが大台の6百万円台に乗せたことでマネックスG<8698>などがそれぞれ大きく上昇した。対ドルの円安を手掛かりにホンダ<7267>などの自動車関連も買われた。

 一方、好決算ながらも出尽くし感が優勢となったヤーマン<6630>やgumi<3903>が大幅に下落した。また、決算が想定線に留まったほか持ち分法適用会社の堺ディスプレイプロダクトの株式売却の中止を発表したシャープ<6753>も売りに押された。そのほか、売買代金上位では、米長期金利の上昇を背景にソフトバンクG<9984>、東京エレクトロン<8035>、キーエンス<6861>、日本電産<6594>、エムスリー<2413>などのグロース(成長)銘柄が軟調推移となった。

 セクターでは、海運業、空運業、鉄鋼、銀行業、輸送用機器などが上昇率上位に並んだ。一方、情報・通信、電気機器の2業種のみが下落となった。東証1部の値上がり銘柄は全体の73%、対して値下がり銘柄は23%となっている。

 本日の日経平均は前週末の米株高の流れを好感して堅調スタートとなった。前週末に500円超の大幅な上昇を見せた後だけに、反動安があってもおかしくないなか相場の強さを印象付けた。再び米長期金利(10年物国債)が1.62%を超えてくる高値を付けてきていることも考慮すれば、こうした意味合いが一層強調されよう。

 米長期金利が改めて上昇してきたことで、前週末の米国市場では、NYダウやS&P500種株価指数が上昇する一方、ナスダック総合指数とフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は売りに押された。しかし、下落率はナスダックが0.59%、SOX指数は1.07%と、これまでの金利上昇時に比べてかなり軽微に留まったといえる。市場の先行き警戒感や変動率(ボラティリティー)を表す米VIX指数も5.57%の下落率で20.69までむしろ低下しており、市場の金利に対する耐性は大分ついてきたようだ。

 本日の東京市場でも、TOPIXバリュー(割安)指数の上昇率がTOPIXグロース(成長)指数のそれを大きく上回るなど、割安感のある景気敏感株が主体の相場ではあるが、これまで調整色の濃かったハイテク・グロース銘柄については、下落率が軽微である。前週末にかけての上昇分を踏まえれば、むしろ底堅さが窺える。

 5日移動平均線が25日線を上抜く短期ゴールデンクロス(GC)を一足先に示現した東証株価指数(TOPIX)は早くも、2月16日に付けた高値(1974.99pt)を視野にいれており、こうしたところからも、引き続き景気敏感株が主体の相場展開であることが読み取れる。ただ、ハイテク・グロース株から純粋な景気敏感株へと投資対象を移し替える資金シフトの大きな流れにも一巡感がみられてきている。そうした兆しが、上述した前週後半から日米双方において見られるハイテク・グロースへの押し目買いや金利上昇に対する耐性だと言えよう。

 日経平均も前週末に終値で25日線上に復帰し、5日線が同線を上抜く短期GCが目前だ。前週に行われた米国債入札や米消費者物価指数(CPI)の結果が無難に終わり、警戒されていた米長期金利の上昇が一服。週末の先物・オプション特別清算指数算出(メジャーSQ)も波乱なく通過したことで安心感が高まっていたところに、再びの米金利上昇に対する耐性が示されたことで一層の市場センチメントの改善に繋がったのだろう。

 今週は16-17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、週末にかけては日銀金融政策決定会合が控えている。金利動向に対する大きなイベントとしては今週が最終局面といえる。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長をはじめ、FRB高官からは度々政策スタンスに関する発言が出ており、市場コンセンサスは形成されつつある。日銀金融政策決定会合については、政策内容の総点検ということで、これまでの会合よりも注目度は高い。

 しかし、前週末の場中には、今週の会合で年6兆円ペースとしている上場投資信託(ETF)購入原則を削除する方針との報道もあったが、その際の市場の反応は限定的だった。そのため、こちらも大きな波乱要因にはなりにくいと想定される。相場は、週末までは様子見ムードからこう着感の強い動きとなりそうだが、イベント通過後はあく抜け感から一段の上昇が期待できるのではないだろうか。

 さて、後場も週末にかけて控えるイベントを前に、全体的にもみ合い展開が続きそうだ。そうした中、米金利動向によるマイナス影響が低いと思われる、鉄鋼や海運などの純粋景気敏感株が引き続き旺盛な買いに支えられそうだ。《AK》

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